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モバライダー mobarider

見落としから発見したもの。それは地球とよく似たサイズと温度の系外惑星でした。

2020年05月13日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
運用を終了した探査衛星“ケプラー”の観測データを見直していると、これまで“ケプラー”が発見したどの系外惑星よりもサイズと温度が地球に近い天体が見つかりました。
しかも、この系外惑星が位置しているのは“ハビタブルゾーン”… そう、液体の水が存在できる領域なんですねー


太陽系の外にある惑星を探す衛星“ケプラー”

“ケプラー”は2009年に打ち上げられたNASAの系外惑星探査衛星です。

2013年5月までのメインミッションで発見した系外惑星の数は2300億近く。
姿勢制御装置の故障による主要ミッション終了後にも、2014年からは太陽光圧を姿勢制御に利用する“K2ミッション”を開始し、さらに数百個の系外惑星を発見しています。

残念ながら“ケプラー”の運用は2018年の10月30日に終了… 原因は燃料切れでした。

“ケプラー”は、これまでの観測で膨大なデータを取得しているので、このデータの解析を進めていけば、まだまだ新しい発見が出てくると期待されています。
系外惑星探査衛星“ケプラー”


赤色矮星の“ハビタブルゾーン”に軌道を持つ岩石惑星

アメリカ・テキサス大学オースティン校の研究チームでは、“ケプラー”が取得したデータの見直しを進めています。
すると、はくちょう座の方向約300光年彼方の恒星の周りに、地球サイズの系外惑星“Kepler-1649 c”を見つけるんですねー

“Kepler-1649c”の直径は地球の1.06倍で、地球に非常に近い大きさ。
公転周期は19.5日で中心にある恒星“Kepler-1649”のすぐ近くを回っています。

ただ、この“Kepler-1649”は太陽よりもはるかに暗い“赤色矮星”というタイプの恒星なので、“Kepler-1649 c”が恒星から受ける光量は地球に届く日光の75%と穏やか。
なので、表面温度も地球と似ている可能性があり、“ハビタブルゾーン”に位置する惑星と見られています。
“ハビタブルゾーン”とは、主星(恒星)からの距離が程良く惑星の表面に液体の水が存在できる領域。この領域にある惑星では生命が居住可能だと考えられている。
系外惑星“Kepler-1649 c”のイメージ図。(Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter)
系外惑星“Kepler-1649 c”のイメージ図。(Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter)
ただ、一般的に赤色矮星では表面の激しい爆発現象“フレア”が起こります。
なので、この惑星の環境は生命に適したものだとはいいがたいようです。

また、惑星の気温を大きく左右する大気については何も分かっていないので、サイズの推定に関しても大きな誤差が残っています。

それでも、“Kepler-1649 c”が興味深いのは、大きさと温度の両方がここまで地球に近いと推定される系外惑星が、これまで見つからなかったということ。

また、この惑星が回る赤色矮星は、天の川銀河の中で一番多いタイプの恒星です。
今回のように、赤色矮星の周りで“ハビタブルゾーン”内に軌道を持つ岩石惑星の発見が重なれば、その中に第二の地球が存在する可能性も増えてくるはずです。
地球(左)と比較した“Kepler-1649 c”(右:イメージ図)。(Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter)
地球(左)と比較した“Kepler-1649 c”(右:イメージ図)。(Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter)


軌道共鳴から示唆される未知の惑星

なぜ、これほど興味深い系外惑星が見逃されていたのでしょうか?

“ケプラー”は、地球から見て系外惑星が主星の手前を通過(トランジット)するときに見られる、わずかな減光から惑星の存在を探る“トランジット法”という手法により惑星を発見し、その性質を明らかにします。

ただ、恒星の減光は様々な理由で起こるんですねー
なので、“ケプラー”がとらえた膨大な数の減光記録から、本物の惑星が引き起こしたものを自動的により分けるアルゴリズムが用いられています。

ここで惑星以外が原因と推定された減光に下されていたのは“偽陽性”の判定。
でも、恒星の光度変化には紛らわしいものも多く、アルゴリズムには限界があることも分かっていました。

そこで、研究チームは見落とされた可能性のある系外惑星を探すため、“偽陽性”のデータを徹底的に調べてきました。
その結果、“Kepler-1649 c”による減光がアルゴリズムに弾かれてしまっていたことが判明したというわけです。

ところで、“Kepler-1649 c”の存在が確認される前から、中心の赤色矮星にはもう1つ惑星が存在することが知られていました。

その惑星“Kepler-1649 b”も、また地球のような岩石惑星だと推測されています。
でも、恒星からの距離は約750万キロと、“Kepler-1649 c”のさらに半分しかありません。

興味深いことに、2つの惑星の公転周期には9:4という関係があります。
これは、外側の“Kepler-1649 c”が恒星を4周する間に内側の“Kepler-1649 b”がほぼピッタリ9周することを示してます。

このように、公転周期が整数比になる現象は“軌道共鳴”と呼ばれます。
太陽系だと冥王星と海王星の公転周期が3:2になっています。

ただ、気になるのは、公転周期が2:1や3:2のような簡単な比ではなく9:4になっていることです。

ひょっとすると、間に別の惑星が隠れていて、“Kepler-1649 b”と“Kepler-1649 c”の両方と3:2の軌道共鳴を起こしているのかもしれません。
“Kepler-1649 c”: 未知の惑星 :“Kepler-1649 b”の公転周期が9:6:4の関係にある。

“Kepler-1649”に未知の惑星は存在しているのでしょうか。
残念ながら“ケプラー”の観測データからは、それらしい信号は見つかっていないようです。
“Kepler-1649”系のイメージ図。(Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter)
“Kepler-1649”系のイメージ図。(Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter)



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