木星から海王星にあるガス惑星の上層大気は、なぜ高温に保たれているのでしょうか?
地球だと、上層大気は太陽光による加熱で高温に保たれています。
でも、木星より外側の惑星は太陽から遠く離れているので、太陽光による過熱はあまり強く働かないはず…
今回、2017年に運用を終了した土星探査機“カッシーニ”のデータから、土星の上層大気が高温に保たれている謎を解く手がかりが得られたようです。
オーロラが上層大気を加熱している
地球の大気の最上層部は“熱圏”と呼ばれ、密度は極めて薄いのですが、太陽からのX線や紫外線で加熱されるので温度が約2000度にもなっています。
これは木星から海王星までのガス惑星でも同じで、いずれも上層大気は高温に保たれています。
ただ、木星より外側の惑星は太陽から遠く離れているので、地球の“熱圏”とは違って太陽光による加熱はあまり強く働かないはず。
にもかかわらず、例えば土星の上層大気は、太陽光だけが熱源だと考えた場合よりも数百度も温度が高いんですねー
この食い違いは、ガス惑星の大気における“エネルギー危機(energy crisis)”とも呼ばれ、惑星科学の大きな謎の一つになっています。
この謎を解くためアリゾナ大学の研究チームは、NASAの土星探査機“カッシーニ”の観測データを新たに解析。
土星の上層大気を高温に保つ熱源の有力候補を見つけるためでした。
そして、分かってきたのは、土星の北極と南極に生じるオーロラがその熱源の候補だということ。
太陽風と土星の衛星から放出される荷電粒子とが相互作用すると電流が生じます。
研究チームが考えたのは、この電流によってオーロラが発光して上層大気を加熱するというメカニズムでした。
大気の中を循環する熱の流れを完全に描き出すことができれば、オーロラの電流が土星の上層大気を、どのように加熱して風が生じるかを深く理解できるようになるはずです。
そこで、研究チームが考えたのは、オーロラによって土星の極域に溜まった熱エネルギーが、全球的な風の流れによって赤道地域へと運ばれるということでした。
これによって、上層大気は太陽光だけで加熱される場合よりも2倍も高い温度にまで熱くなるようです。
上層大気の密度と温度
今回の結果は、惑星の上層大気を広く理解する上で欠かせないもの。
“カッシーニ”の探査データの中でも重要な位置を占める成果になるんですねー
1977年に打ち上げられた“カッシーニ”は、2004年に土星を周回する軌道に投入され、13年以上にわたって土星や衛星の観測を行いました。
“カッシーニ”は2017年9月に土星大気に突入してミッションを終えるのですが、その直前に“グランドフィナーレ”と呼ばれる最後のミッションを実施しています。
このミッションは、22回にわたって土星のすぐ近くを通り土星本体と環の間を通り抜けるというものでした。
今回の研究で分析された重要なデータは、この“グランドフィナーレ”で得られたものでした。
“カッシーニ”はオリオン座とおおいぬ座の明るい恒星が、土星の後ろに隠される掩蔽現象を6週間にわたって観測。
研究チームは、恒星が様々な緯度で土星の縁に潜入し、再び出現する様子をとらえたデータから、星の光が土星の大気を通過する際の変化を調べ、上層大気の密度を求めています。
大気の密度は高度が高くなるほど薄くなりますが、大気密度の減少度合いは温度によっても変わってきます。
この観測データからは、土星の上層大気の温度を緯度ごとに導くことに成功しています。
そして、分析の結果明らかになったのは、土星の上層大気の温度はオーロラが発生する緯度付近で最も高いということ。
これは、オーロラ電流が上層大気を加熱していることを示唆するものでした。
さらに、研究チームは大気の密度と温度から土星大気内の風速も求めています。
惑星の上層大気は宇宙空間と接する領域であり、土星の上層大気を理解することは、太陽系内での太陽風や磁場の変動といった“宇宙天気(space weather)”を理解するカギにもなります。
こうした宇宙天気が太陽系の他の惑星に与える影響を理解したり、他の恒星系での系外惑星と宇宙天気の関係を知る上でも重要になるようです。
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土星の自転周期は? 環はいつ作られたの? 探査機“カッシーニ”の最終ミッションから分かってきたこと
地球だと、上層大気は太陽光による加熱で高温に保たれています。
でも、木星より外側の惑星は太陽から遠く離れているので、太陽光による過熱はあまり強く働かないはず…
今回、2017年に運用を終了した土星探査機“カッシーニ”のデータから、土星の上層大気が高温に保たれている謎を解く手がかりが得られたようです。
オーロラが上層大気を加熱している
地球の大気の最上層部は“熱圏”と呼ばれ、密度は極めて薄いのですが、太陽からのX線や紫外線で加熱されるので温度が約2000度にもなっています。
これは木星から海王星までのガス惑星でも同じで、いずれも上層大気は高温に保たれています。
2008年11月1日に探査機“カッシーニ”によって撮影された土星の南半球の近赤外線画像。青い領域は太陽からの赤外線を反射している部分で、赤い領域は土星本体の熱放射の赤外線を示している。緑色のリングが土星のオーロラで、水素イオンが赤外線を放射している。(Credit: NASA/JPL/ASI/University of Arizona/University of Leicester) |
にもかかわらず、例えば土星の上層大気は、太陽光だけが熱源だと考えた場合よりも数百度も温度が高いんですねー
この食い違いは、ガス惑星の大気における“エネルギー危機(energy crisis)”とも呼ばれ、惑星科学の大きな謎の一つになっています。
この謎を解くためアリゾナ大学の研究チームは、NASAの土星探査機“カッシーニ”の観測データを新たに解析。
土星の上層大気を高温に保つ熱源の有力候補を見つけるためでした。
そして、分かってきたのは、土星の北極と南極に生じるオーロラがその熱源の候補だということ。
太陽風と土星の衛星から放出される荷電粒子とが相互作用すると電流が生じます。
研究チームが考えたのは、この電流によってオーロラが発光して上層大気を加熱するというメカニズムでした。
2005年6月21日に“カッシーニ”の紫外線撮像分光計(UVIS)で撮影された土星のオーロラ。南北両極に見える青白いリングがオーロラ。2枚の画像は約1時間差で撮影されたもので、土星のオーロラが1時間以上持続すること、短時間で変化することを示している。(Credit: NASA/JPL/University of Colorado) |
そこで、研究チームが考えたのは、オーロラによって土星の極域に溜まった熱エネルギーが、全球的な風の流れによって赤道地域へと運ばれるということでした。
これによって、上層大気は太陽光だけで加熱される場合よりも2倍も高い温度にまで熱くなるようです。
上層大気の密度と温度
今回の結果は、惑星の上層大気を広く理解する上で欠かせないもの。
“カッシーニ”の探査データの中でも重要な位置を占める成果になるんですねー
1977年に打ち上げられた“カッシーニ”は、2004年に土星を周回する軌道に投入され、13年以上にわたって土星や衛星の観測を行いました。
“カッシーニ”は2017年9月に土星大気に突入してミッションを終えるのですが、その直前に“グランドフィナーレ”と呼ばれる最後のミッションを実施しています。
このミッションは、22回にわたって土星のすぐ近くを通り土星本体と環の間を通り抜けるというものでした。
今回の研究で分析された重要なデータは、この“グランドフィナーレ”で得られたものでした。
このデータからは、土星の環が本体よりもずっと後になってから形成されたことも分かっている。
“カッシーニ”はオリオン座とおおいぬ座の明るい恒星が、土星の後ろに隠される掩蔽現象を6週間にわたって観測。
研究チームは、恒星が様々な緯度で土星の縁に潜入し、再び出現する様子をとらえたデータから、星の光が土星の大気を通過する際の変化を調べ、上層大気の密度を求めています。
大気の密度は高度が高くなるほど薄くなりますが、大気密度の減少度合いは温度によっても変わってきます。
この観測データからは、土星の上層大気の温度を緯度ごとに導くことに成功しています。
そして、分析の結果明らかになったのは、土星の上層大気の温度はオーロラが発生する緯度付近で最も高いということ。
これは、オーロラ電流が上層大気を加熱していることを示唆するものでした。
さらに、研究チームは大気の密度と温度から土星大気内の風速も求めています。
惑星の上層大気は宇宙空間と接する領域であり、土星の上層大気を理解することは、太陽系内での太陽風や磁場の変動といった“宇宙天気(space weather)”を理解するカギにもなります。
こうした宇宙天気が太陽系の他の惑星に与える影響を理解したり、他の恒星系での系外惑星と宇宙天気の関係を知る上でも重要になるようです。
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