水星内部のダイナモ作用のシミュレーション研究から、水星磁場の“棒磁石”が中心から北にズレている理由が解明されました。
中心核内部の磁場が自己調整機構によって対流をコントロールすることで、自発的に生成。維持されているそうです。
水星の固有磁場
2008年のこと、NASAの水星探査機“メッセンジャー”の観測により、水星が地球のような固有磁場を持つことが明らかになりました。
大規模な固有磁場は、水星内部の中心核のダイナモ作用によって磁場が作られている証拠になるので、この発見は水星の起源や進化を明らかにするうえで重要な成果でした。
さらに、その後の観測から分かったのが、水星磁場の双極子(棒磁石)が北に大きくズレていること。
地球の磁場では、双極子はほぼ地球の中心にあります。
この双極子のズレは、“メッセンジャー”の観測成果の中でも最も重要な発見の1つなんですが、その原因は一切明らかになっていません。
地球と水星内部の仮想的な棒磁石の位置。 地球の磁場は地球中心に置いた棒磁石でよく表現できるが、 水星では棒磁石を水星半径の5分の1にあたる約500キロ北にズラさないと、 観測結果を説明できない。 |
棒磁石のズレは自発的に生成・維持されている
今回の研究では、水星中心核の熱化学的状態を模した最新の実験や理論計算をもとに、新たな水星内部構造モデルを作成しています。
このモデルを“ダイナモモデル”に組み入れ、水星中心核の対流とそれに伴うダイナモ作用を数値的にシミュレーション。
すると、特定のモデルで、北にズレる双極子をはじめとする水星磁場の特徴をすべて再現するシミュレーション結果が得られたんですねー
ダイナモ作用は、天体が大規模な磁場を生成・維持するためのメカニズム。
さらに、詳細な解析によって明らかになったのは、中心核の対流で作られた磁場が、電磁場中で運動する荷電粒子、電流に作用する力になる“ローレンツ力”を通じて対流構造を調整することによって、北にズレた双極子を自発的に生成・維持していること。
研究グループでは、これを「自己調整(self-regulation)」と命名している。
自己調整が働く場合(上)と磁場によって自己調整が働かない場合(下)の、 水星表面での磁場動径成分の分布図。 赤色が内向き、青色が外向きの磁場、磁場により自己調整機構がオフになると形態が維持されず、 全く異なる磁場構造になることが分かる。 |
昨年10月には、日欧共同の水星探査計画“ベビコロンボ”によって、日本の水星磁気圏探査機“みお”が打ち上げられ、いま水星に向かっているところです。
水星磁気圏探査機“みお(MMO:Mercury Magnetospheric Orbiter)”
今回の研究成果や、将来の“みお”の観測による詳細な磁場データによって、水星ダイナモのメカニズムが明らかになり、水星の起源や進化に関する理解が飛躍的に深まることが期待されますね。
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