“炭素”は私たち人間を始め、今知られている全ての生命体にとって不可欠な元素。
炭素は宇宙に豊富に存在する元素の1つでもあります。
ただ、核物理学の長年の歴史の中で、この豊富さは大きな謎になっているようです。
この炭素12は、“ヘリウム4(陽子2個・中性子2個)”の原子核が3個融合することで合成されたと考えられています。
ところが、ヘリウム4が2個融合した状態は極めて不安定で、これを持続できるのは1京分の1秒未満…
なので、3個目のヘリウムは、そのわずかな時間内に衝突して融合しないと炭素12にはなれないんですねー
また、単純に3個のヘリウム4が衝突しても、そのほとんどは核融合せず、再びばらけてしまいます。
単純計算すると、ヘリウム4が3個衝突しても、核融合反応が起こるのは稀なことになります。
これでは、宇宙に存在する炭素12の量を説明することはできません。
でも、ホイル状態を実験的に生み出すことは極めて難しいので、これまでホイル状態の正確な実態は、ほとんど分かっていませんでした。
なので、シミュレーションの計算時間は無限に増えてしまうことになります。
そこで研究チームが狙ったのは、この配置に制限を付けることで、現実的な時間内で研究を完了させることでした。
それでも、計算が必要な配置パターンは数百万通りになるので、今回の研究における“JUWELS”でのシミュレーション実行時間は500万CPU時間(CPUで処理が行われた時間)に達しています。
シミュレーションでの結果、ホイル状態では陽子や中性子が個別に存在する可能性は低く、陽子と中性子が2個ずつの塊になった状態(つまりヘリウム4の原子核に極めて近い状態)で、正三角形もしくはかなり平たい二等辺三角形の配列で存在する可能性が高いことが分かりました。
この状態で予測される原子核の物理状態は、実験で測定した結果とよく一致。
これは、シミュレーションの前提条件が正しいことを意味していました。
この結果が示しているのは、ホイル状態の実態に迫るうえで、実験では限界がある原子核の不安定な状態を知るためには、シミュレーション手法が有効であること。
さらに、実験では限界がある様々な物理状態を知ることにもつながったということです。
炭素は、より重い窒素や酸素といった元素の合成にも必須なので、ホイル状態は他の元素の存在とも間接的に関わりがあると言えます。
また、炭素が核融合反応によって他の元素になることは、太陽より重い恒星でのエネルギー生成など、恒星進化論にも関わってきます。
ホイル状態を正しく、かつ詳細にシミュレーションできた今回の研究成果は、核物理学の難題を深く知る原動力になる可能性があります。
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炭素は宇宙に豊富に存在する元素の1つでもあります。
ただ、核物理学の長年の歴史の中で、この豊富さは大きな謎になっているようです。
宇宙には炭素12が豊富に存在するけど…
宇宙に存在する炭素の約98.89%は“炭素12(陽子6個・中性子6個)”で、豊富に存在する炭素の安定同位体になります。この炭素12は、“ヘリウム4(陽子2個・中性子2個)”の原子核が3個融合することで合成されたと考えられています。
ところが、ヘリウム4が2個融合した状態は極めて不安定で、これを持続できるのは1京分の1秒未満…
なので、3個目のヘリウムは、そのわずかな時間内に衝突して融合しないと炭素12にはなれないんですねー
また、単純に3個のヘリウム4が衝突しても、そのほとんどは核融合せず、再びばらけてしまいます。
単純計算すると、ヘリウム4が3個衝突しても、核融合反応が起こるのは稀なことになります。
これでは、宇宙に存在する炭素12の量を説明することはできません。
エネルギーの高い不安定な状態は存在する?
ただ、ヘリウム4が3個衝突したときに、“ホイル状態”と呼ばれる中間的な状態を経由すると、炭素12を生成する核融合反応が起こりやすいことが分かっています。でも、ホイル状態を実験的に生み出すことは極めて難しいので、これまでホイル状態の正確な実態は、ほとんど分かっていませんでした。
ヘリウム4の衝突で炭素12が生成されるには、融合後にエネルギーの高い不安定な状態が一瞬でも存在する必要がある。原子核で許されるエネルギー状態には制限があるので、必ずしも存在するわけではないが、宇宙には炭素12が豊富に存在するという“証拠”をもとに、天文学者のフレッド・ホイルはそのような高エネルギーの状態が存在するという予測をした。これがホイル状態。
今回の研究では、ホイル状態の詳細に迫るため、スーパーコンピュータ“JUWELS”を使用し、核格子有効場理論の非制約格子モンテカルロシミュレーションを実施しています。この研究を進めているのは、ユーリヒ総合研究機構のShihang Shenさんたちのチームです。
本来なら、原子核を構成する陽子と中性子の配置パターンに制限はありません。なので、シミュレーションの計算時間は無限に増えてしまうことになります。
そこで研究チームが狙ったのは、この配置に制限を付けることで、現実的な時間内で研究を完了させることでした。
それでも、計算が必要な配置パターンは数百万通りになるので、今回の研究における“JUWELS”でのシミュレーション実行時間は500万CPU時間(CPUで処理が行われた時間)に達しています。
赤い四角と青い丸は、異なるシミュレーションで示された値。☆が実験で測定された値。いずれも結果がよく一致していることが分かる。(Credit: Shihang Shen, et.al.) |
この状態で予測される原子核の物理状態は、実験で測定した結果とよく一致。
これは、シミュレーションの前提条件が正しいことを意味していました。
今回のシミュレーションでは、陽子と中性子の配列の仕方には、ある程度の制約があることが判明した。これは実験結果ともよく一致する結果である。(Credit: Serdar Elhatisari / Universität Bonn) |
さらに、実験では限界がある様々な物理状態を知ることにもつながったということです。
炭素は、より重い窒素や酸素といった元素の合成にも必須なので、ホイル状態は他の元素の存在とも間接的に関わりがあると言えます。
また、炭素が核融合反応によって他の元素になることは、太陽より重い恒星でのエネルギー生成など、恒星進化論にも関わってきます。
ホイル状態を正しく、かつ詳細にシミュレーションできた今回の研究成果は、核物理学の難題を深く知る原動力になる可能性があります。
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