ブラックホールの強大な重力に逆らって逃げ出す“風”があるそうです。
今回の研究で着目しているのは、降着円盤の“光の力”を使って“風”が加速するという説。
紫外線の力を使ってガスが加速されることで、ブラックホールからも逃げ出せる強風になるというものです。
京都大学の発表によると、X線の疑似観測によって実際に観測されている“風”の様子を定量的に再現し、ブラックホールの周りで生み出される紫外線の力によって“風”が生まれるということを実証できたそうです。
その重力にとらえられたら最後、あとは吸い込まれる運命しか待っていません。
でも、不思議なことにその重力に逆らって、逆にブラックホールの周囲から逃げ出す方向に吹き飛ばされるガスも存在しています。
それでは、重力に逆らってブラックホールから吹いてくるかのような“風”は、どこに存在しているのでしょうか?
観測されているのは“活動銀河核”という場所。
“活動銀河核”とは、一部の銀河で見られる、中心の大質量ブラックホールが活発に活動している現象です。
ブラックホール周囲を回転する物質の流れで“降着円盤”の位置エネルギーが光エネルギーに転換されることで、大質量ブラックホールの周囲は明るく輝くことになります。
ブラックホールの強大な重力に逆らって逃げ出す“風”は、この活動銀河核をX線で観測すると、スペクトルに吸収線に現れるので確認することができます。
吸収線が現れる位置が、本来現れるはずの位置よりも大きくズレればズレるほど、“風”の速度が速いことも分かっています。
“風”が吹くための加速の仕組みについては、未解明な部分が多いものの主要な仮説は2つあります。
それは、降着円盤の“光の力”もしくは“磁場の力”を使って加速するという説です。
ただ、これらの説が観測結果をどこまでよく再現できるのかは、分かっていませんでした。
そこで、今回の研究では降着円盤からの“光の力”による説に着目。
紫外線の力を使ってガスが加速されることで、ブラックホールからも逃げ出せる強風になるという理論モデルに基づいて、コンピュータシミュレーションによるX線の疑似観測を実施しています。
今回の研究に用いられた理論モデルによる“風”の様子を見てみると、強い紫外線が降着円盤から放射されていて、紫外線がガスを外側に押していることで“風”がつくられるということが示されています。
この理論モデルを基に実施されたのが、中心にあるブラックホールの周囲からX線が放射されるときにX線と“風”がぶつかることで、どのようなスペクトルがつくられるかというシミュレーション。
その結果、導き出されたのは吸収線の深さまでは完全に再現できていないものの、2本の吸収線がそれぞれ観測と合致した位置に出てくることでした。
また、“風”に当たって散乱されたX線によって輝線がつくられるも再現できたそうです。
理論モデルから観測を再現する試みは、これまでも行われてきました。
でも、“風”の速度が遅すぎるなどの問題がありました。
今回、理論モデルの進展や疑似観測の方法の改良などにより、“風”の様々な観測的特徴を初めて定量的に再現することに成功しています。
エネルギー分解能とは、異なるエネルギーを持ったX線を、どれだけ区別して観測できるかという、分光器の解析性能を表す指標のひとつ。
この解析性能から期待されるのは、ブラックホールからの“風”によって作られる吸収線の様子を、より詳細にとらえられることです。
さらに、今回の研究結果を用いて、“XRISM”で模擬観測を行った際のスペクトルを作成しています。
これまでのX線天文衛星のものと“SRISM”のものを比較すると両者の違いは明らかでした。
“XRISM”を使うことで、一つ一つの細かな構造を分離して観測することが可能なことが分かりました。
今後、実際にこのようなスペクトルが観測されることで、ブラックホールの“風”の詳細がより明らかになってくることが期待されますね。
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今回の研究で着目しているのは、降着円盤の“光の力”を使って“風”が加速するという説。
紫外線の力を使ってガスが加速されることで、ブラックホールからも逃げ出せる強風になるというものです。
京都大学の発表によると、X線の疑似観測によって実際に観測されている“風”の様子を定量的に再現し、ブラックホールの周りで生み出される紫外線の力によって“風”が生まれるということを実証できたそうです。
ブラックホールの重力に逆らって逃げ出す“風”
ブラックホールは強大な重力を持ち、事象の地平面を超えてしまうと光すら脱出できないことで知られています。その重力にとらえられたら最後、あとは吸い込まれる運命しか待っていません。
でも、不思議なことにその重力に逆らって、逆にブラックホールの周囲から逃げ出す方向に吹き飛ばされるガスも存在しています。
それでは、重力に逆らってブラックホールから吹いてくるかのような“風”は、どこに存在しているのでしょうか?
観測されているのは“活動銀河核”という場所。
“活動銀河核”とは、一部の銀河で見られる、中心の大質量ブラックホールが活発に活動している現象です。
星、星間チリ、星間ガスといった通常の銀河の構成要素とは別の部分からエネルギーの大半が放出されている特殊な銀河を活動銀河という。このエネルギーの大半を、銀河の中心1%程度のコンパクトな領域から放出していて、この部分を活動銀河核と呼ぶ。
ブラックホール周囲を回転する物質の流れで“降着円盤”の位置エネルギーが光エネルギーに転換されることで、大質量ブラックホールの周囲は明るく輝くことになります。
ブラックホールによって集められたガスやチリは、降着円盤を形成しブラックホールに落ち込んでいく。一方、降着円盤内のガスの摩擦熱によって電離してプラズマ状態になると、電離したガスは回転することで強力な磁場が作られ、降着円盤からは荷電粒子のジェットとして噴射する。
ブラックホールの強大な重力に逆らって逃げ出す“風”は、この活動銀河核をX線で観測すると、スペクトルに吸収線に現れるので確認することができます。
吸収線が現れる位置が、本来現れるはずの位置よりも大きくズレればズレるほど、“風”の速度が速いことも分かっています。
“風”が加速する仕組み
なぜ、“風”は大質量ブラックホールの強大な重力から逃げられるのでしょうか?“風”が吹くための加速の仕組みについては、未解明な部分が多いものの主要な仮説は2つあります。
それは、降着円盤の“光の力”もしくは“磁場の力”を使って加速するという説です。
ただ、これらの説が観測結果をどこまでよく再現できるのかは、分かっていませんでした。
そこで、今回の研究では降着円盤からの“光の力”による説に着目。
紫外線の力を使ってガスが加速されることで、ブラックホールからも逃げ出せる強風になるという理論モデルに基づいて、コンピュータシミュレーションによるX線の疑似観測を実施しています。
コンピュータシミュレーション結果と実際の観測結果との比較も行っている。
今回の研究に用いられた理論モデルによる“風”の様子を見てみると、強い紫外線が降着円盤から放射されていて、紫外線がガスを外側に押していることで“風”がつくられるということが示されています。
この理論モデルを基に実施されたのが、中心にあるブラックホールの周囲からX線が放射されるときにX線と“風”がぶつかることで、どのようなスペクトルがつくられるかというシミュレーション。
その結果、導き出されたのは吸収線の深さまでは完全に再現できていないものの、2本の吸収線がそれぞれ観測と合致した位置に出てくることでした。
また、“風”に当たって散乱されたX線によって輝線がつくられるも再現できたそうです。
理論モデルから観測を再現する試みは、これまでも行われてきました。
でも、“風”の速度が遅すぎるなどの問題がありました。
今回、理論モデルの進展や疑似観測の方法の改良などにより、“風”の様々な観測的特徴を初めて定量的に再現することに成功しています。
“風”の詳細をより明らかにしてくれる次世代の天文衛星
2022年に日本が打ち上げを予定しているX線分光撮像衛星(X線天文衛星)の“XRISM”は、これまでのX線天文衛星と比べてエネルギー分解能が一桁高くなります。“XRISM(X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission)”は、NASAやヨーロッパ宇宙機関の協力のもと2018年に開始された、JAXAの7番目のX線天文衛星計画。星や銀河、そしてその間を吹き渡る高温ガス“プラズマ”に含まれる元素やその速さを図ることで、星や銀河、銀河の集団が作る大規模構造の成り立ちを、これまでにない詳しさで明らかにする。“XRISM”に搭載されるのは、広い視野を持つX線撮像器と極超低温に冷やされたX線分光器。これらを使って、プラズマに含まれる元素やプラズマの速さを、画期的な精度で測定する。
エネルギー分解能とは、異なるエネルギーを持ったX線を、どれだけ区別して観測できるかという、分光器の解析性能を表す指標のひとつ。
この解析性能から期待されるのは、ブラックホールからの“風”によって作られる吸収線の様子を、より詳細にとらえられることです。
さらに、今回の研究結果を用いて、“XRISM”で模擬観測を行った際のスペクトルを作成しています。
これまでのX線天文衛星のものと“SRISM”のものを比較すると両者の違いは明らかでした。
“XRISM”を使うことで、一つ一つの細かな構造を分離して観測することが可能なことが分かりました。
今後、実際にこのようなスペクトルが観測されることで、ブラックホールの“風”の詳細がより明らかになってくることが期待されますね。
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