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もう二度と太陽系の内側には戻ってこない? 恒星間天体“アウムアムア”を赤外線で観測したけど…

2018年12月22日 | 流星群/彗星を見よう
赤外線天文衛星“スピッツァー”の観測とモデルの計算から得られた、恒星間天体“オウムアムア”の大きさや反射率に関する新たな研究成果が発表されました。

ただ、太陽系外の恒星系からやってきた“オウムアムア”は、また太陽系の外に帰っていき、もう太陽系の内側に戻って来ることは無いそうです。


明るさの変化から推測した“オウムアムア”の形状と大きさ

2017年10月にハワイのパンスターズ望遠鏡で発見された史上初の恒星間天体“オウムアムア”。
発見直後から世界中の望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡で観測が行われ、その正体や予想外の加速、故郷などが調べられてきました。

可視光線波長での明るさが大きく変化するので、“オウムアムア”はおそらく細長い形をしていて、直径が800キロほどだろうと考えられています。
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オウムアムア(イメージ図)
その後、“オウムアムア”の運動の様子を調べた研究から、“オウムアムア”は彗星のように凍ったガスでできていて、太陽へ接近した際に表面からガスが放出した影響で“オウムアムア”がわずかに加速したらしいという結果が発表されています。

  太陽系外からやってきた“オウムアムア” 予想外の加速をするのはなぜ?
    

ただ、この結論は“オウムアムア”が典型的な彗星よりも小さいという見積もりに依存することになります。


赤外線で観測できなかったことが大きさの上限を決定した?

2017年11月、NASAの赤外線天文衛星“スピッツァー”も“オウムアムア”に向けられます。
赤外線の観測では可視光線波長の観測に比べて、より具体的に天体の大きさを知ることができるからです。

ただ残念ながら、すでに“オウムアムア”は“スピッツァー”で観測するには暗くなっていたんですねー

でも、「“スピッツァー”では見えなかった」っという結果自体が非常に価値のあるもので、“オウムアムア”の大きさの上限を推定することが可能になったそうです。

この結果をもとに、アリゾナ大学の研究チームはモデル計算を行い、“オウムアムア”の大きさが100~400キロだと推測。

ただ、この場合の大きさは、“オウムアムア”が球形をしていると仮定したものでした。
明るさの変化から推定されるような細長い形状の場合には、直径が240~1080キロに相当するそうです。
この大きさは、“オウムアムア”の加速運動やガス放出活動からの見積もりサイズと矛盾しないものでした。


表面の反射率が高いのは太陽に接近したから

また研究チームでは、“オウムアムア”の表面のアルベド(反射率)が彗星の10倍ほども高い可能性があることも示しています。

“オウムアムア”は、恒星から遠く離れて数百万年間も恒星間空間を旅してきました。
なので、これまで星の熱に暖められて新鮮な表面が露出することがありませんでした。

ただ“オウムアムア”は、発見される約5週間前に太陽に接近しています。
この時の太陽の熱により、“オウムアムア”ではガスの放出が起こり、新鮮な表面が露出したのかもしれません。

そして、表面のチリや汚れは取り払われたり、ガスが反射率の高い氷や雪で表面を覆うことに…
結果、“オウムアムア”の表面のアルベドが高くなった可能性があるようです。

発見から1年、“オウムアムア”は現在、土星軌道ほどまで遠ざかってしまいました。
もう二度と、太陽系の内側には戻ってこないそうですよ。


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太陽の30倍以上もある大質量星が起こす超新星爆発。初めてIc型超新星になる前の天体を発見!

2018年12月15日 | 宇宙 space
これまで、爆発前の天体が特定されたことが無かったIc型超新星。

ところが、渦巻銀河“NGC 3938”にIc型超新星“2017ein(SN 2017ein)”が出現したんですねー

出現した位置をもとに、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した過去の画像をくまなく調べてみると、2007年の画像中に“SN 2017ein”がIc型超新星爆発を起こす前の天体が見つかります。

質量が太陽の30倍以上もある大質量星のうち2割が起こすIc型超新星爆発。
爆発前の天体の発見は、大質量星の進化などの研究に役立つそうですよ。


太陽の30倍以上もある大質量星が起こすIc型超新星爆発

太陽よりもはるかに質量の大きな恒星は、一生の最後に重力崩壊型超新星爆発を起こします。

こうした超新星爆発を起こす前の天体、前駆星を見つけることができれば、どのくらいの質量の星がどのくらい誕生するのかという割合や、大質量星の進化の様子などを調べることができます。

重力崩壊型超新星のうち約2割を占めるIc型超新星は、質量が太陽の30倍以上もある大質量星が、水素やヘリウムでできた外装を失った後に起こす爆発現象と考えられています。

外層が無くなっても爆発前の星は明るく質量も多きいはずですが、これまでIc型超新星の前駆星が見つかったことはありません。

ところが2017年5月、おおくま座の方向約6500万光年の距離に位置する渦巻銀河“NGC 3938”に、Ic型超新星“2017ein(SN 2017ein)”が出現したんですねー
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渦巻銀河“NGC 3938”の画像に現れたIc型超新星“SN 2017ein”。
右下は“SN 2017ein”を中心にした周辺領域の拡大画像。
カリフォルニア工科大学の研究チームは、翌月にこの超新星をハッブル宇宙望遠鏡で撮影し正確な位置を測定。

さらに、ハッブル宇宙望遠鏡が過去に撮影した“SN 2017ein”の画像アーカイブをくまなく調べてみると、2007年に撮影された画像の中に“SN 2017ein”の前駆星と推定される天体を発見。

はじめて、前駆星の候補天体を見つけることができたんですねー


見つけ出せたのは近くて明るかったから

同じころ、カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究チームも、ケック天文台の赤外線撮像分光器と補償光学システムで“SN 2017ein”の位置を高精度観測しています。

そして、カリフォルニア工科大学の研究チームと同じく、ハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブと突き合わせることで、同じ候補天体を見つけ出しています。

これまでに多くのIc型超新星が観測されてきました。
でも、あまりに遠方にあったので、ハッブル宇宙望遠鏡ではそれらを解像することができませんでした。

“SN 2017ein”は地球から近かったこと、他のIc型超新星の5~10倍も明るかったという幸運にも恵まれので、簡単に見つけ出せたそうです。
今、Ic型超新星の研究に必要なのは、最も近くの銀河内で起こる、明るく質量の大きな恒星の爆発なんですね。

前駆星の候補天体を詳しく調べてみると、この星は青く非常に高温だと分かります。

その結果から考えられる前駆星の質量は、太陽質量の45~55倍もある単独の大質量星か、太陽の60~80倍と48倍の質量を持つ大質量星の連星系のうち重い方だということ。

単独星シナリオも連星系シナリオも理論的にはあり得るのですが、連星系の場合は従来モデルではもっと軽い星と考えられていたので、今回の結果は謎なんですねー
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Ic型超新星爆発を起こした青色超巨星(イメージ図)。
単独星シナリオの場合が描かれている。
発見された候補天体が本当に“SN 2017ein”の前駆星かどうかは、約2年後に超新星が暗くなった時、そこから姿を消していることで確認できます。

その確認のため、また、天体の明るさや質量を詳しく調べるため、“SN 2017ein”の観測は今後も継続して進めるそうですよ。


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金星探査機“あかつき”2年間の定常運用を終了。そうだ、燃料も残っているし3年ほど運用を延長しちゃえ!

2018年12月13日 | 金星の探査
2016年4月から2年間の定常運用を終えたJAXAの金星探査機“あかつき”。
姿勢制御用の燃料がまだ残っていることもあり、3年間の延長運用に移行することが発表されました。

様々な科学的な成果をもたらしてくれた“あかつき”ですが、これから始まる延長運用フェーズがどのようなものになるのか?

大きな不具合などが無ければ今後4~11年間は引き続き観測が行えるそうですよ。


金星の気象衛星“あかつき”

JAXAの“あかつき”は日本初の金星探査機。
2010年5月に種子島宇宙センターからH2-Aロケット17号機により打ち上げられました。

金星の大気を立体的に観測するため、観測波長の異なる複数のカメラを搭載している“あかつき”の主な目的は、スーパーローテーションと呼ばれる惑星規模の高速風など、従来の気象学では説明ができない金星の大気現象のメカニズムを探ること。

言ってみれば、“あかつき”は金星の気象衛星なんですねー


二度目で周回軌道投入に成功

当初の予定では、“あかつき”が金星の周回軌道に投入されるのは2010年12月7日でした。
でも、軌道投入のために逆噴射を行う主エンジンが噴射途中で破損… “あかつき”の金星周回軌道投入はは失敗に終わってしまいます。

その後、金星軌道よりも内側に入るという予定外の高温環境に耐えながら、再び金星に近づくのを待つことに。

この間“あかつき”は、太陽風が太陽半径の5倍程度離れた距離から急に加速される様子を観測することに成功。長年謎だった、コロナ加速問題を解くカギを得ています。

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“あかつき”に、再び金星周回軌道投入のチャンスが訪れたのは、5年後の2015年12月7日でした。

このとき“あかつき”は姿勢制御用のスラスター4機を約20分間噴射。
遠金点が44万キロ、周期14日で金星の周りを公転する超楕円軌道に投入されます。

その後、2016年4月に軌道修正が行われ、近金点8000~1万キロ、遠金点36万キロ、周期10.5日の軌道で定常観測を行ってきました。
ちなみに、当初目指していたのは30時間周期の軌道でした。


定常運用終了後は3年間の延長運用フェーズへ移行

“あかつき”がこれまでの観測で明らかにしたのは、赤道付近の中層から下層にかけての大気に、ジェット状の風の流れ(赤道ジェット)が存在すること。

さらに、金星の雲頂に長さ1万キロに及ぶ弓状の構造がしばしば発生し、これが金星表面の地形によって生じていることも発見しています。

  金星の“巨大な弓状模様”はどうやって作られたの?
    

“あかつき”は様々な科学的な成果をもたらしてくれました。
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“あかつき”の中間赤外線カメラ(LIR)で撮影された金星大気の弓状構造(上段左、下段)。
上段右は紫外線イメージャ(UVI)で撮影されたほぼ同時刻の紫外線での金星像。
一方、20016年12月には赤外線カメラの制御回路が故障。
このため、TR1(波長1μm赤外線カメラ)、TR2(波長2μm赤外線カメラ)が使えない状態になっています。

“あかつき”の2年間の定常運用期間を終了した後、JAXAでは今年8月にプロジェクトの終了審査を実施。

当初予定していた軌道への投入失敗や、TR1、TR2の故障はあったものの、ミッションとしてのミニマムサクセス、フルサクセスの条件は達成できたとして定常運用の終了が決定されました。
  2018年11月27日には金星軌道の周回数が100周を超えている。

現在は宇宙科学研究所の所内プロジェクトとして、3年間の延長運用フェーズに移行しています。

12月7日の時点で“あかつき”に残っている姿勢制御用の燃料は1.41~3.86キロ。
これは、大きな不具合などが無ければ今後4~11年間は引き続き観測が行える量になるそうです。


12月7日に発表された研究成果

故障前のTR2カメラで撮影された金星の夜領域の画像を解析してみると、金星の赤道付近の下層大気に、太陽の動きに連動した風が生じていることが明らかになります。

自転する金星が太陽光を受けると、太陽に加熱される場所が自転とは逆向きに移動することになります。

これによって金星大気に生じると考えられているのが“熱潮汐波”と呼ばれる波です。

金星の大気に生じている自転速度の60倍もの高速風“スーパーローテーション”も、この“熱潮汐波”が原因だという説があります。

発表された研究成果が示しているのは、“熱潮汐波”の影響が金星の下層大気にまで及んでいることでした。
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2016年10月19日に“あかつき”のTR2カメラで撮影された
金星の夜の領域(疑似カラー合成画像)。
通常探査機が燃料を使い果たすと、ソーラーパネルやアンテナを太陽や地球の方向に向けることができなくなってしまいます。
そう、バッテリーの充電やデータの送受信が出来なくなるんですねー
  観測対象(惑星など)の重力に引かれ高度を保てなくなることもある。

幸い当初予定していた2年間の定常運用を終えた“あかつき”には燃料がまだ残っています。

これから始まる3年間の延長運用フェーズがどのようなものになるのか? どんな発見を送ってくれるのか?
“あかつき”にはまだまだ頑張ってもらいたいですね。


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星の材料は超大質量ブラックホールによって銀河内を循環している

2018年12月11日 | 銀河と中心ブラックホールの進化
地球からおよそ10億光年の彼方にある銀河団の中心に横たわる巨大楕円銀河。

この巨大楕円銀河の中心部では、超大質量ブラックホールが存在していて、周囲のガスを集めています。
でも、まるで噴水のように激しく噴き出す現象も起きているんですねー

こうしたガスの噴水が銀河の星の材料を循環させていて、このプロセスは銀河の進化にとって基本的なことのようです。他の多くの銀河でも同じプロセスが働いているようです。


ブラックホールから高温ガスのジェットが噴き出している

今回、研究の対象になったのは、地球からおよそ10億光年の彼方にある銀河団“Abell 2597”の中心に横たわる巨大楕円銀河。

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのチームが、アルマ望遠鏡とヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLT、NASAのX線天文衛星“チャンドラ”を使って観測しています。
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銀河団“Abell 2597”の中心にある巨大楕円銀河周辺の疑似カラー画像。
(黄)アルマ望遠鏡で観測された冷たいガス、(赤)VLT望遠鏡で観測された暖かい水素ガス、
(紫)X線天文衛星“チャンドラ”で観測された高温の電離ガス。

その結果、巨大楕円銀河の中心部に存在する超大質量ブラックホールによって引き込まれた大量の冷たい分子ガスが、噴水のように外へ激しく噴き出すという一連のサイクルがはっきりととらえられました。

  ブラックホールに落下する物質は角運動量を持つため、
  降着円盤と呼ばれるへんぺいな円盤をブラックホールの周囲に作る。
  降着円盤内のガスの摩擦熱によって落下するガスは電離してプラズマ状態へ、
  この電離したガスは回転することで強力な磁場が作られ、
  降着円盤からは荷電粒子のジェットが噴射しX線などが観測される。



星の材料は銀河内を循環している

この現象は「星の材料になるガスが、銀河中心のブラックホールによって循環する」という、一連のサイクルの一部になるようです。
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“Abell 2597”の中心にある巨大楕円銀河(イメージ図)。
中心の超大質量ブラックホールからガスが噴き出している。

ブラックホールに向かって落下するガスのエネルギーが噴水の“ポンプ”の動力源になり、高速の高温ガスジェットを放出。
放出されたガスは、銀河を取り囲む球状の構造“ハロー”のガスとぶつかり、冷えて減速すると、銀河本体や超大質量ブラックホールの重力に引かれて、再びブラックホールへと引き込まれていくというサイクルが成立しているんですねー

観測では、太陽30億個分の質量を持つ大量の分子ガスが、巨大楕円銀河の中心10万光年の範囲にわたって細長く伸びていることも分かりました。


高温電離ガスと低温の分子ガスは表裏一体

実は、研究チームではアルマ望遠鏡を使って過去にも同じ銀河を観測しています。

この時、一酸化炭素分子が放つ電波を観測することで、ブラックホールに向かって落下していく冷たいガスの動きを測定。
また、VLT望遠鏡に搭載された可視光観測装置“MUSE”を使って、銀河から飛び出す温かいガスの分布もとらえています。

新しいアルマ望遠鏡の観測では、この高温の電離ガスとほぼ同じ分布を持つ冷たい分子ガスの塊をいくつも発見しています。

そう、アルマ望遠鏡と“MUSE”のデータを使うことで、冷たいガスと熱いガスの特徴を比べながら考察を進めることができるんですねー
  “チャンドラ”のデータを使うことで、もっと高温のガスの様子もとらえることができた。

そして、今回の観測によって裏付けられたのが、高温電離ガスと低温の分子ガスが、表裏一体だということでした。

低温分子ガスの周囲を高温電離ガスが殻のように覆った状態で、銀河スケールの噴水の中を移動している。
このガスの循環を包括的に理解できるようになったのは、X線・可視光線・電波を使った多波長観測のおかげです。

今回は“Abell 2597”の観測でしたが、この循環プロセスは銀河の進化にとって基本的なものと考えられます。
なので、他の多くの銀河でも同様に起こっていることなんでしょうね。


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宇宙で最も明るい銀河は、中心にある超大質量ブラックホールによって輝いている

2018年12月09日 | ブラックホール
2023年12月23日更新
宇宙で最も明るい銀河が、周囲にある3つの銀河を飲み込みつつある様子がアルマ望遠鏡の観測でとらえられました。

なぜ、この銀河は最も明るい銀河になれたのでしょうか?

3つの銀河のガスやチリ、そして超大質量ブラックホールが銀河の輝きを作っているようです。


宇宙で最も明るい銀河

これまでに知られている銀河の中で最も明るいのはどの銀河でしょうか。

それは、2015年にNASAの赤外線天文衛星“WISE”によって発見された、みずがめ座方向の銀河“W2246-0526”。
その明るさは太陽の350兆倍もあり、宇宙に存在する銀河すべてを地球から同じ距離に置くことができれば、“W2246-0526”が最も明るく見えるそうです。

今回、アルマ望遠鏡による観測でとらえたのは、少なくとも3つの小さい銀河のガスやチリが“W2246-0526”へと引き込まれつつある様子でした。

それでは、なぜ宇宙で最大の銀河では無い“W2246-0526”が、最も明るい銀河になったのでしょうか?

その理由は、他の銀河から引き込まれつつあるガスやチリにあるようです。


銀河中心部に存在するブラックホールが輝きを作っている

“W2246-0526”が明るく輝ける原因は、中心部に存在している超大質量ブラックホールにあるようです。

この超大質量ブラックホールが他の銀河からガスやチリを引き込むと、ブラックホールへ落下する物質は角運動を持つので、降着円盤と呼ばれるへんぺいな円盤をブラックホールの周囲に作ります。
この降着円盤内のガスやチリは、非常に高速に回転することで摩擦熱を発生し、電離してプラズマ状態になるんですねー
電離したガスやチリは回転しているので強力な磁場が作られ、降着円盤からは荷電粒子のジェットが噴出され、非常にまぶしく輝く訳です。
この非常に明るい銀河中心部の天体を活動銀河核と呼ぶ。
3つの小銀河から“W2246-0526”に流れ込むガスやチリの量は、ブラックホールで消費される量を十分に補充できているようです。
銀河“W2246-0526”周辺の観測画像。アルマ望遠鏡の観測により得られた電波データから作成。
銀河“W2246-0526”周辺の観測画像。アルマ望遠鏡の観測により得られた電波データから作成。


他の小銀河と“W2246-0526”とをつなぐチリの尾

チリ・ティエゴ・ポルタレス大学の研究チームは、“W2246-0526”と他の銀河のうち1つとをつなぐチリの尾のような構造を見つけています。

この尾の位置や形状は、ある銀河から別の銀河へと物質が流れていく際に見られるものと一致。
過去のデータから、3つの小銀河の存在は分かっていたのですが、それらの銀河と中心の銀河との相互作用を示す証拠が見つかったのは、今回が初めてのことでした。

この様子を非常にはっきりと見ることができたのは、アルマ望遠鏡による観測のおかげでした。
W2246-0526”周辺の画像。水色の線で囲まれた部分に“W2246-0526”があり、その周りに小銀河のC1~3が存在する。Tidal Tailと書かれた部分に、銀河をつなぐガスやチリからなる尾がある。
“W2246-0526”周辺の画像。水色の線で囲まれた部分に“W2246-0526”があり、その周りに小銀河のC1~3が存在する。Tidal Tailと書かれた部分に、銀河をつなぐガスやチリからなる尾がある。


なぜ強力に輝くことができるのか

“W2246-0526”は約124億年前の初期宇宙に存在する天体です。

この距離(過去へ遡る時間の長さ)は、複数の物質供給源を持つ銀河としては、これまでに発見されている中で最も遠いもの。
アルマ望遠鏡の40台のアンテナによる2時間半かけて行われた観測により、これほど遠くかすかな銀河を、高感度かつ高精度で調べることができたんですねー

“W2246-0526”は、高温のチリに隠された銀河“Hot. Dust-Obscured Galaxies(Hot DOGs)”と呼ばれる珍しい種類の天体でもあります。

ただし、この銀河が大量のチリに隠されたクエーサーの代表的な存在なのか、あるいは特殊な存在なのかは、まだはっきりとは分かっていません。
クエーサーは活動銀河核の一種。銀河の中心核だけで残りの銀河全体よりもはるかに明るく輝いている天体。
“WISE”によって発見された他の銀河の約2倍も明るく輝いている“W2246-0526”。
非常に初期の宇宙で形成された銀河なので、“W2246-0526”は他に仲間のいない独特な銀河の可能性もあります。

一方、現在の典型的な銀河の1000倍も明るい、チリに覆われた遠方の銀河は“WISE”で数多く見つかっています。
ひょっとすると、チリに隠されたクエーサーと銀河の進化における重要な段階で起こる現象を、“W2246-0526”は見せてくれているのかもしれません。

“W2246-0526”の超大質量ブラックホールの質量は、太陽の約40億倍見積もられていますが、その強力な明るさを説明するには、その3倍の質量を持つ超大質量ブラックホールが必要になるようです。

銀河が輝く現象にブラックホールが関わっていることは分かりましたが、なぜここまで強力に輝くことできるのでしょうか?
この謎については今後の観測に期待ですね。
“W2246-0526”と周囲のイメージ図。
“W2246-0526”と周囲のイメージ図。



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