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巨大地球型惑星“スーパーアース”は太陽系から2番目に近い恒星“バーナード星”にあった

2018年12月07日 | 宇宙 space
太陽系から6光年の距離に位置する、2番目に近い恒星“バーナード星”の周りに、地球の3倍程度の質量を持つスーパーアースと見られる惑星候補が見つかりました。

“バーナード星”は、1960年代に惑星が発見されたと話題になり、のちに間違いだったことが分かったいわく付きの恒星。

50年ぶりの再発見で用いられたのは、ドップラーシフトという検出法でした。
惑星の重力により主星(恒星)が引っ張られる現象から惑星の存在を検出したそうです。
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50年前にも発表されていた“バーナード星”の惑星発見

“バーナード星”は、バーナードループやバーナードの銀河などと同じく、アメリカの天文学者E.E.バーナードが1916年に発見しその名を残した天体です。

固有運動が最速の星としても知られていて、100年の間に満月の見掛けサイズの半分ほども天球上を動きます。
なんと、1万年後には太陽から約3.8光年の距離まで接近すると予想されているんですねー
  固有運動とは天球上を1年間に移動する角度。
  “バーナード星”は10.3秒で、夜空の中で最速に分類されている。


実は、“バーナード星”に惑星を発見したという発表は、今回が初めてではありません。

1960年代にアメリカの天文学者ピート・ファンデカンプは、“バーナード星”の固有運動にわずかなブレがあることに気付きます。

そして、“バーナード星”には木星ほどの大きさの惑星があるということ発表。
史上初の系外惑星、それも発見が6光年先という近い場所だったので、世界中の天文学者や天文ファンは沸き立ちます。
  1970年代には、英国惑星協会が核融合のエネルギーで高速の12%まで加速し、
  “バーナード星”まで50年で到達できる探査機“ダイダロス”計画を研究している。


ただ、その後の観測で惑星は見つからず…
今では、ファンデカンプが気付いたブレは観測時の誤差によるもので、惑星ではなかったとされています。

“バーナード星”は太陽系から2番目に近い恒星で、連星系ではない単独の星としては最も近い距離にあります。

ちなみに、太陽系から最も近い恒星は、4.2光年の距離にある“プロキシマ・ケンタウリ”。
ケンタウルス座に位置していて、0等級の“リギル・ケンタウルスA”、1等級の“リギル・ケンタウルスB”と共に、三重星の連星系を構成しています。

この“プロキシマ・ケンタウリ”にも系外惑星が見つかっているので、今回の発見は太陽系から2番目に近い系外惑星候補になります。


巨大地球型惑星“スーパーアース”

今回、スペイン・カタルーニャ宇宙研究所を中心とする国際チームは、赤色矮星を回る系外惑星の発見を目指した“Red Dots”と“CARMENES”というプロジェクトの中で、バーナード星に惑星が存在することを示す証拠を発見しています。

主星の周りを公転している惑星の重力で、主星が引っ張られ地球からわずかに遠ざかったり近づいたりします。
研究チーム使用したのは、この動きによる光の波長の変化“ゆらぎ”を読み取る“ドップラーシフト法”でした。

観測に用いられたのは、ヨーロッパ南天天文台ラシーヤ観測所の口径3.6メートル望遠鏡に付けられた系外惑星探査用の分光装置“HARPS”をはじめ、世界中にある7種類の観測装置。観測期間は20年にもわたり、観測は771回も行われています。

研究チームは、その膨大な観測データを分析して、スーパーアースと見られる系外惑星の候補を発見したそうです。
  スーパーアースは地球の数倍程度の質量を持ち、
  主成分が岩石や金属などの固体成分と推定された惑星。


場所は“バーナード星”。へびつかい座の方向約6光年の距離に位置する10等の恒星でした。
スーパーアースは、この恒星を公転していて、質量は地球の3.2倍以上あるようです。


質量が小さく暗い赤色矮星を回るスーパーアース

惑星が公転しているのは、“バーナード星”から6000万キロ(太陽~地球間の0.4倍)ほど離れた軌道。
1周するのに約233日かかるそうです。

“バーナード星”は、質量が小さく低温で暗い赤色矮星に分類されています。
表面温度は約2700度で太陽の表面温度約6000度と比べ半分以下、直径は太陽の約30%、質量は太陽の約16%、明るさは0.3%しかありません。

なので、惑星が“バーナード星”から得るエネルギーは少なく、地球が太陽から受けているエネルギーのわずか2%しかないんですねー

そのため、惑星の表面温度は摂氏マイナス170度ほどと推測されていて、少なくとも私たちが知る生命に適した環境ではなさそうです。

また、惑星が公転している場所は、“バーナード星”の水のスノーラインにあたります。

水の“スノーライン”は水が凍る・凍らないの境界線になります。
また、惑星が地球のような岩石惑星になるか、木星のように大きく重いガス惑星になるかの境界にもなると考えられています。
  太陽系では小惑星帯(アステロイド・ベルト)の位置がスノーラインにあたり、
  実際に、その内側には地球や火星といった岩石惑星、
  外側には木星や土星といったガス惑星が形成されている。


それと、現在の理論で予測されているのが、スノーラインがスーパーアースのような惑星を形成するための理想的な場所だということ。
その点からも、今回発見された天体は惑星であり、なおかつスーパーアースである可能性を裏付けるものになるんですねー

現在ヨーロッパ南天天文台が計画意中の“欧州大型望遠鏡”や、NASAの“ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡”などの次世代の高性能望遠鏡が使えれば、大気の組成や生命の有無など、多くのことが分かってくるようですよ。


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急に明るくなったホームズ彗星を調べてみると、他の彗星に比べて太陽から遠く冷たい場所で生まれたことが分かった

2018年12月05日 | 流星群/彗星を見よう
2017年10月下旬のこと、わずか2日の間に40万倍以上も明るくなったホームズ彗星。
増光時のデータから、爆発的な増光の原因は大量のチリの放出だと分かります。

でも、どのようにして爆発的増光が起こったのでしょうか?

データを再解析して分かってきたのは、ホームズ彗星が他の彗星に比べて、太陽から遠く冷たい場所で生まれたということでした。


わずか2日で40万倍以上も明るくなった彗星

1892年に発見されたホームズ彗星は、太陽の周りを約7年で公転しています。

2007年5月に太陽に最も接近する“近日点”を通過した後、10月下旬には爆発的な増光(アウトバースト)を起こします。

アウトバーストを起こした場所は、太陽から約3.6億キロ(太陽から地球までの約2.4倍)離れた場所。
10月23日には約17等の明るさだったホームズ彗星は、24日には9等級も増光して8等になり、翌25日に約2.9等になっていました。

わずか2日ほどの間に14等級以上、明るさにして約40万倍以上も増光したことになります。
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2007年10月26日のホームズ彗星


揮発性の高い氷の昇華が大増光を引き起こした

急増光直後に行われたホームズ彗星の分光観測で分かったのは、爆発的な増光の原因が大量のチリの放出にあることでした。

でも、どのようにして爆発的増光が起こったのかは謎のまま…

そこで、今回の研究ではホームズ彗星から放出されたチリの成分に着目。
ホームズ彗星の爆発的な増光の分光データを再解析したんですねー
  すばる望遠鏡が中間赤外線波長で観測したデータを使用している。

そして気付いたのことが、ホームズ彗星には揮発性の高い氷が多く含まれているという可能性でした。

このような氷が爆発的に昇華することで爆発的なチリの放出が生じ、ホームズ彗星の大増光を引き起こしたようです。
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爆発してから約2日後に、
スバル望遠鏡で撮影したホームズ彗星の中間赤外線画像


ホームズ彗星は太陽系の過去の情報を秘めた化石

解析の結果、ホームズ彗星は他の彗星に比べて、アモルファス(非晶質)成分のチリが多く、結晶質成分が少ないことが分かります。

彗星に含まれるシリケイト(ケイ酸塩)と呼ばれる鉱物は、結晶質のものとアモルファスのものとが共存していました。

このうち結晶質の成分は、アモルファス成分のものが原始太陽の近くで加熱されて変化したものであり、太陽から離れた場所まで運ばれてから彗星に取り込まれたと考えられています。

太陽から遠く離れるほど、そこまで運ばれるチリが少なくなります。
なので、結晶質成分が少ないほど、太陽から遠いところで誕生した彗星だと考えることができるんですねー

つまり、ホームズ彗星に結晶質成分が少ないということは、この彗星が他の彗星に比べて太陽から遠く冷たい場所で誕生した証拠になるということです。

そのような場所には、低い温度で昇華する一酸化炭素などの氷や、水のアモルファス氷といった揮発性の高い氷が豊富に存在すると考えられ、それらがホームズ彗星に含まれていたようです。

ホームズ彗星は今回の研究で、太陽系の過去の情報を秘めた化石という一面を見せてくれました。
彗星は、大きな尾をたなびかせた美しい姿や、崩壊や急増光といった思いもよらない姿を見せてくれるだけではないんですね。


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低金属量の恒星の周囲には、複数の岩石惑星を持つ小さな惑星系が形成されやすい

2018年12月03日 | 宇宙 space
700個の恒星とその周りの系外惑星に関する研究から、複数の岩石惑星を持つ小さな惑星系は、重元素が多い恒星よりも低金属量の恒星の周囲に形成されやすいことが分かったそうです。


太陽よりも金属量が少ない恒星

イェール大学の研究チームの研究によると、複数の惑星を持つ小さな惑星系は、ヘリウムより重い全ての元素(天文学では“重元素”や“金属”と呼ぶ)が好きではないようです。

酸素やケイ素、鉄などは、地球のような小さい岩石惑星の主成分になる元素です。

研究チームは、700個の恒星とその周囲の惑星を観測してあることに気付きます。
それは、複数の惑星からなる小さな惑星系は、太陽よりも金属量(重元素量)が少ない低金属量星の周囲に作られやすいということでした。
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低金属量星の周囲に存在するコンパクトな複数惑星系(イメージ図)。
最近まで系外惑星探しは、大きい惑星に対して重点的に行われてきました。

これは、小さい惑星を検出するには観測機器の精度が不十分だったため。
ただ、今後は超精密分光器“EXPRES”などの活躍によって、小さい惑星の発見も可能になるそうです。

今回の研究成果と合わせると、小さな複数惑星系はこれまでに想像されていたよりも多く存在していると考えられます。

また、低金属量星の寿命が長く、こうした小さな複数惑星系は最初に作られた惑星系かもしれないとも考えられるので、地球外生命を探す上で理想的な対象になるようです。


鉄に対するケイ素の比率が高いと小さな惑星が作られやすい

研究チームが2005年に発表した成果として、恒星に含まれる重元素が多いほど、その周囲に木星のような巨大ガス惑星が形成される可能性が高くなるというものがあります。

この説は、微惑星同士の衝突合体でできたコアが、原子惑星系円盤中のガスを捕獲して木星型惑星が形成されるという“コア集積モデル”を強く支持するもので、惑星形成のメカニズムとして確立されています。

でも、小さい惑星の形成に関する理解は、困難な課題として残っていました。

複数の惑星が存在するコンパクトな惑星系が、低金属量星の周囲に形成される可能性が高いという発見は、天の川銀河内で最も一般的な惑星系の理解に繋がる、新しく重要な手がかりを示す成果になります。

さらに、今回の研究で示されたのは、低金属量星では鉄に対するケイ素の比率が高いこと。
惑星の誕生現場における鉄とケイ素の関係を調べていくと、別の面白いことが分かるかもしれません。

鉄に対するケイ素の比率が、温度を調整するためのサーモスタットのような役割を果たし、この比率が上昇すると小さな岩石惑星の形成が増えるようです。

小さな岩石惑星の形成にとって、ケイ素は秘密の材料なのかもしれませんね。


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衝突中の銀河の中心で見つかったのは、合体する直前のブラックホールのペアだった

2018年12月01日 | 銀河と中心ブラックホールの進化
銀河同士が衝突、合体すると中心に存在する超大質量ブラックホールも合体して、さらに大きいブラックホールへ成長します。

今回、X線と近赤外線による観測から見つかったのは、衝突中の銀河の中心にある非常に接近した超大質量ブラックホールのペア。
合体する直前の状態がとらえられていて、数千万年以内に衝突、合体するそうですよ。


銀河が合体すると中心にあるブラックホールも合体する

銀河の中心には、太陽の数百万倍から数億倍以上もの質量を持つ超大質量ブラックホールが存在すると考えられています。

そして、銀河同士が衝突、合体する時には、それぞれのブラックホールも合体して、さらに大きいブラックホールへと成長していきます。

銀河の合体は10億年以上もかけてゆっくりと続くプロセスなので、観測を続けてブラックホール同士の合体を確認することは現実的な話ではありません。

でも、コンピュータシミュレーションを使ってみると、その最後の1000万~2000万年ほどの間にブラックホール同士の合体が急速に進むことが分かります。

ただ、こうしたブラックホールの衝突、合体の様子を可視光線で観測するのは難しいんですねー

それは、銀河の衝突に伴って銀河内の大量のガスやチリが巻き上げられ、ガスやチリが合体中の銀河の中心部周辺に厚いカーテンを作るため。
その奥にあるブラックホールが見えなってしまうからです。

その様子を調べるには、ガスやチリの雲を見通すことができる赤外線波長での観測が必要になります。

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X線観測で成長中のブラックホールを探し出す

今回、エウレカ・サイエンティフィック社の研究チームが調べたのは、ハッブル宇宙望遠鏡やハワイのケック天文台を使った、近赤外線サーベイで得られた衝突銀河の中に見られるブラックホールのペアでした。

ガスがブラックホールへ落ち込むと高温になりX線を放射します。
そのX線の明るさから、ブラックホールがどれほど速く成長しているのかが分かります。

このことから研究チームは、NASAのX線天文衛星“スウィフト”によるX線観測データから、成長中のブラックホールが存在すると思われる銀河を探し出すことになります。

続いて研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブでX線データで見つかった銀河を確認。
ハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブで見つからなかったものについては、ケック天文台での近赤外線観測で確認を行います。

こうして500個ほどの銀河を分析した結果、チリが豊富な衝突銀河の中心付近がX線で明るく見えるものは、そこに接近したブラックホールのペアが存在することが確かめられていきます。
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衝突銀河と、その中心に位置する2つの銀河中心核の拡大画像。
オレンジ色はケック天文台撮影の近赤外線画像、
上左(へびつかい座の銀河“NGC 6240”はハッブル宇宙望遠鏡、
下のカラー画像はパンスターズ望遠鏡で撮影。
わずか3000光年まで接近しているブラックホールもあり、これは宇宙のスケールでは至近距離といえるもの。

これまでの衝突銀河の観測では、これほど合体の最終段階に近い例はなく、今回明らかになったブラックホール同士の距離の約10倍も離れている様子しかとらえられていませんでした。

現在、天の川銀河とお隣のアンドロメダ座大銀河は接近しつつあり、数十億年後には合体すると予測されています。

その際には、両銀河の中心にある超大質量ブラックホールも衝突、合体するはずです。

ブラックホール同士の衝突現象では重力波も生じるはずなので、数十億年後に私たちの子孫が重力波を観測しているかもしれませんね。


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