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2020年 ペルセウス座流星群の極大はいつ? 天気は? どの方角を見ればいいの?

2020年07月24日 | 流星群/彗星を見よう
夏の風物詩“ペルセウス座流星群”が今年もやってきます。
“ペルセウス座流星群”は、12月の“ふたご座流星群”、1月の“しぶんぎ座流星群”と共に三大流星群と呼ばれている。
流星自体の活動が最も活発になる“極大”を迎えるのは、8月12日(水)22時頃だと予想されています。

ただ、今年は8月12日が下弦の月にあたるんですねー
なので、流星群を観察しやすい時間帯のほとんどに月明かりがあり、見える流れ星の数は条件の良い年より少なめなはず。
下弦とは、満月ののち次の新月の前までの間の月の形。月の左半分側が、弓の弦(つる)に当たる方を下にして見える。

それでも、月はそれほど明るくないので、まずまずの数の流れ星を見ることができそうです。


おすすめの日時は? 天気は? 夜空のどこを見ればいいの?

普段より目立って多くの流れ星を見ることができるのは、11日の夜~13日の夜までの3夜。
なかでも、12日の深夜から13日未明に、最も多くの流れ星が出現すると期待されています。

極大を迎える8月12日(水)に、流れ星を見れるチャンスがありそうなのは西日本と東北の太平洋側、北海道の道東エリア。
日本海側は高気圧の縁辺流の影響で雲が広がりやすくなり、雨が降るかもしれないのが新潟。
関東では大気の状態が不安定になり、午後に雷雨の可能性があるので、星空が雲に隠れてしまうかもしれません。
8月10日現在のウェザーマップ気象情報の16日先までの天気予報によると、
8月12日夜に晴れそうなのは、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡、鹿児島、那覇。
曇り予報は仙台と長野、東京、新潟、広島。
降水確率は、札幌(5%)、仙台(5%)、東京(30%)、長野(25%)、新潟(35%)、名古屋(25%)、大阪(15%)、広島(25%)、福岡(15%)、鹿児島(10%)、那覇(10%)。

いずれの夜も、流れ星が出現するようになるのは21時頃から。
夜半を過ぎて薄明かりに近づくにつれて流れ星の数が多くなると考えられています。

ただ、13日0時頃以降は放射点が高く好条件ですが、月が昇ってしまい月明かりの影響を受けることに…
見える数はそれほど増えず、12日の22時ごろと同程度になると考えられています。
放射点とは、流星群の流れ星が、そこから放射状に出現するように見える点。流れ星の数は、放射点の高度が高いほど多くなり、逆に低いほど少なくなる。

流れ星は、放射点を中心に放射状に出現しますが、なるべく空の広い範囲を見渡すように観察しましょう。
街明かりのない空の暗い場所で観察すると、見られる流れ星の数は最大で1時間当たり30個程度と予想されています。
“ペルセウス座流星群”の流れ星は明るいものも多いので、市街地でも1時間当たり数個は見えるかもしれない。
黄色の矢印は“ペルセウス座流星群”の放射点。(8月12日PM10:40)
黄色の矢印は“ペルセウス座流星群”の放射点。(8月12日PM10:40)


“ペルセウス座流星群”とは?

約135年周期で太陽系を巡っているスイフト・タットル彗星が“ペルセウス座流星群”の母天体になります。
母天体とは、チリを放出して流星群の原因作っている天体のこと。

現在スイフト・タットル彗星は地球から遠く離れた位置にありますが、彗星から放出されたチリは彗星の軌道に広がって分布しているんですねー

地球は毎年同じ時期に、このスイフト・タットル彗星の軌道を通過。
軌道に残されたチリの帯に突入することで、チリが地球の大気圏に飛び込んで燃え尽きるところを流れ星として見ることになります。

地球からは、天球上のある点の付近を中心として流星群の流れ星が四方八方(放射状)に流れるように見えます。
この点を“放射点”と呼び、流星群には放射点の近くにある星座や恒星の名前が付けられています。

“ペルセウス座流星群”の場合はペルセウス座の辺りに放射点があるので、この名前が付けられたというわけです。

観測のコツは、空の広い範囲を見渡すようにし、なるべく月を視界に入れないこと。
あと、目が屋外の暗さに慣れるまで、最低でも15分ほどは観察を続けてください。
あっ レジャーシートを敷いて地面に寝転ぶなどすると楽に観測できますよ。


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まだ、微粒子の円盤が惑星と共存する“けんびきょう座AU”を観測すれば、惑星形成モデルのことが分かってくる。

2020年07月23日 | 星が生まれる場所 “原始惑星系円盤”
一人前の恒星になる前段階の星“けんびきょう座AU”を公転する惑星が見つかったんですねー
周囲に微惑星同士の衝突でできた岩石や氷の微粒子からなる円盤“残骸円盤”が、まだ残っている“けんびきょう座AU”。
そのため、惑星がどのように生まれ、どうやって惑星大気を持つようになるのか? っといった惑星と主星がどのように相互作用するかを研究する上で格好の実験室になるようです。


2000万~3000万歳ほどの幼児期の恒星

研究者たちが10年以上にわたって探していた恒星“けんびきょう座AU”を公転する惑星。
この惑星“けんびきょう座AU b”を発見したのは、アメリカ・ジョージ・メイソン大学を中心とする研究チーム。
地球から31.9光年の距離に位置する“けんびきょう座AU”の観測に用いられたのは、NASAの系外惑星探査衛星“TESS”と赤外線天文衛星“スピッツァー”でした。
“けんびきょう座AU”(左)と今回見つかった惑星“けんびきょう座AU b”(右)のイメージ図。(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center/Chris Smith (USRA))
“けんびきょう座AU”(左)と今回見つかった惑星“けんびきょう座AU b”(右)のイメージ図。(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center/Chris Smith (USRA))
“けんびきょう座AU”は低温の赤色矮星(M型矮星)で、推定年齢は2000万~3000万歳。
約46億歳の太陽と比べれば幼児期の恒星と言えます。

この段階の恒星は“前主系列星”と呼ばれていて、エネルギーのほとんどはまだ核融合ではなく、自身の重力収縮でまかなわれています。
“前主系列星”としては太陽から2番目に近く、微惑星同士の衝突でできた岩石や氷の微粒子からなる円盤“残骸円盤”が“けんびきょう座AU”の周囲には、まだ残っていました。

そのため、惑星がどのように生まれ、どうやって惑星大気を持つようになるのか?
っといった惑星と主星がどのように相互作用するかを研究する上で、“けんびきょう座AU”は格好の実験室といえます。

まだ、年齢も若く、太陽系の近くにあるM型矮星で、大きな“残骸円盤”に囲まれている“けんびきょう座AU”。
こうした特徴を全て持つ恒星系が見つかったのは、今回が初めてのことでした。


“けんびきょう座AU”には同じ星間ガス雲から同時期に誕生した兄弟がいた

主星である“けんびきょう座AU”の周りを8.46日周期で公転している“けんびきょう座AU b”は、海王星より8%ほど大きく、質量は地球の58倍(木星の0.18倍)以下と見積もらています。

さらに、“けんびきょう座AU”は“がか座β運動星団”と呼ばれる恒星の集団の一員で、この集団の星々は、かつて同じ星間ガス雲から同時期に誕生したと考えられています。

集団の代表メンバーである“がか座β”は“けんびきょう座AU”より大きく温度が高いA型恒星ですが、やはり“残骸円盤”を持っていて、惑星も2個(がか座β b、がか座β c)存在しています。

同じ年齢のはずの“けんびきょう座AU”と“がか座β”ですが、何故かそれぞれの惑星の性質はかなり違っているんですねー

“けんびきょう座AU b”の質量は海王星に近く、主星のすぐそばを回っています。
一方、“がか座β b”と“がか座β c”は“けんびきょう座AU b”より50倍以上重く、それぞれの公転周期は長く21年と33年…

そこで、研究チームが考えているのは、“けんびきょう座AU b”は主星から遠く離れた場所で作られ、現在の軌道まで移動してきたという説。

こうした惑星の軌道が移動する現象は、惑星がガス円盤や他の惑星と相互作用することで起こります。
一方、“がか座β b”の軌道はそれほど移動していないようです。

年齢がほぼ同じなのに両者でこのように違いがあることから、今回の研究では惑星の形成や移動について多くの手掛かりが得られると期待されています。


惑星の存在を検出して公転周期と質量を求める

実は、“けんびきょう座AU”のような恒星で惑星を検出するのは難しいことだったりします。

系外惑星の発見には“トランジット法”という手法が用いられます。
“トランジット法”では、地球から見て惑星が主星の手前を通過(トランジット)するときに見られる、わずかな減光から惑星の存在を探ることになります。

ただ、“けんびきょう座AU”のようなタイプの星は強い磁場を持っていて、表面に多くの黒点があり強力なフレアをしばしば発生させています。
こうした黒点やフレアによって星の明るさが絶えず変わっていくことで、“トランジット法”による惑星の発見は難しくなってしまいます。

そこで、研究チームが考えたのは、詳細な解析を行うことで黒点やフレアの影響を観測データから取り除くこと。
これにより、惑星による減光だけを抽出することに成功しています。

ちょっとした問題は、惑星の公転周期を求める時にもありました。
それは、“TESS”がデータを地球に送信するため観測を中断しているときにやってきました。
ちょうどその時、3回のトランジットのうちの2回目の減光が始まってしまうんですねー

研究チームでは、“TESS”が観測できない時間を埋めるため“スピッツァー”の利用を思い立ちます。
“スピッツァー”による観測で、さらに2回のトランジットをとらえ、惑星の公転周期を確定できたわけです。

また、惑星の質量を求めるため“ドップラーシフト法”も使われています。

主星の周りを公転している惑星の重力で、主星が引っ張られると地球からわずかに遠ざかったり近づいたりします。
“ドップラーシフト法”では、この動きによる光の波長の変化“ゆらぎ”を読み取り惑星の質量を計測。
観測に用いられたのは、ハワイにあるケック天文台やNASAの3メートル赤外線望遠鏡“IRTF”、南米チリのヨーロッパ南天天文台といった地上の望遠鏡でした。

“TESS”の観測データからは、今回の惑星とは別のトランジット現象候補も見つかっています。
今年の後半には“TESS”の延長ミッションにより、もう一度“けんびきょう座AU”を観測することができます。
恒星の運動についても、“ドップラーシフト法”による観測が現在も続いているので、新しい発見が期待できますね。
NASAの“TESS”や“スピッツァー”により幼年期の恒星を回る惑星を発見。(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)


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ネオワイズ彗星の地球最接近は7月23日! いつ? どの方向に見えるの?

2020年07月22日 | 流星群/彗星を見よう
ここ10年余りで最も明るい彗星になるかもしれないネオワイズ彗星が、地球に接近してきています。

見るべき場所さえ分かっていれば肉眼で十分見える明るさ(3等前後)のネオワイズ彗星。
貴重な天文ショーを見ようと、夜明け前の早起きを始めた天文ファンもいるようです。

現在のネオワイズ彗星の尾の長さは5度ほどで、これは満月の見かけの大きさの約10倍にもなります。
この調子で尾が伸びていけば、とてもドラマチックなことになりそうです。
ロシア国営宇宙開発企業ロスコスモスの宇宙飛行士イワン・ワグナー氏が、国際宇宙ステーションからツイートしたネオワイズ彗星の写真。(Credit: IVAN VAGNER, ROSCOSMOS)
ロシア国営宇宙開発企業ロスコスモスの宇宙飛行士イワン・ワグナー氏が、国際宇宙ステーションからツイートしたネオワイズ彗星の写真。(Credit: IVAN VAGNER, ROSCOSMOS)


ネオワイズ彗星が見える時間帯と方角は?

7月の中頃までは、夜明け前にしか見ることができなかったネオワイズ彗星。

遅くとも日の出時刻の45分前には外に出て、眺めるのは北東の地平線のすぐ上。
ネオワイズ彗星は“ぎょしゃ座”のカペラという明るい星のすぐ下にあり、東には金星(明けの明星)が見えるはずです。

7月15日からは夕方の空で見るようになり、さらに見つけやすくなります。

日没後の北西の空、“おおぐま座(北斗七星)”の下に見え、日を追うごとに地平線からの高度が高くなっていきます。
レバノン上空のネオワイズ彗星。7月8日に撮影された写真から作成された画像。(Credit: MAROUN HABIB)
レバノン上空のネオワイズ彗星。7月8日に撮影された写真から作成された画像。(Credit: MAROUN HABIB)
ネオワイズ彗星は貴重な天文ショーを見る絶好のチャンス。
観察する時間と眺める方角の他に双眼鏡が役立ちそうです。

過去数日間にソーシャルメディアに投稿された写真を見ると、ネオワイズ彗星はかなり見ごたえがあることが分かります。

1997年の夜空に輝いたヘールボップ彗星以来の明るさになるかもしれません。


太陽をかすめて地球に接近中

3月下旬にNASAの赤外線天文衛星“NEOWISE”が発見したことにちなんで命名されたネオワイズ彗星。
正式名称は“C/2020 F3(NEOWISE)”になります。

ネオワイズ彗星は、日本時間の7月4日に太陽に最も接近する“近日点”を通過。
消滅せずに今もなお姿が見えているので、天文ファンはホッとしたはずです。

太陽に接近した時の高温に、彗星の多くは耐えることができません。
しばしば“汚れた雪玉”と表現される彗星の核は、岩石、チリ、ガス、氷からできていて、極度の高温になると崩壊しやすくなるからです。

彗星は太陽に近づくにつれ高温になり、様々な物質を放出し始めます。
これが美しい尾の正体なんですが、核が完全に崩壊して消えてしまうこともあります。

この試練に耐え抜いたネオワイズ彗星。
太陽への最接近を果たした今も、ガスとチリでできた長い尾をたなびかせているんですねー
あと1か月ほどはよく見えるようです。

近日点を通過した今は、太陽光の反射が少なくなっていきますが、彗星自体は地球に近づいてきています。

地球に最接近するのは7月23日で、地球から1億300万キロのところを通過。
その後は、地球からも離れて徐々に見えなくなり、太陽系外縁部に帰ってしまいます。

最高の条件でネオワイズ彗星を見るには、早起きして明け方の空の低いところにある彗星を見るべきでしょうか?
それとも、7月中旬以降に夕方の空の見やすい位置に来ている彗星を観察するべきでしょうか?
7月前半までだと早起きして、7月後半からは日没後の観察になります。

ただ、天文ファンの多くが気にしているのは、のんびり構えている間にネオワイズ彗星が見えなくなってしまうこと…
いま見逃してしまうと、次回ネオワイズ彗星が巡ってくるのは6800年後です。

地球に最接近する7月23日から4連休が始まるので、日没後の20時頃に、尾の伸びた明るいネオワイズ彗星を楽しんでくだい。
貴重な天文ショーを見る絶好のチャンスですよ。
7月23日20時30分の北西の空、“おおぐま座(北斗七星)”の下にネオワイズ彗星(C/2020 F3)が見える。
7月23日20時30分の北西の空、“おおぐま座(北斗七星)”の下にネオワイズ彗星(C/2020 F3)が見える。


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アラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機“HOPE”を無事に打ち上げ。 H2ロケットは45回連続成功、成功率は世界トップクラスの98%!

2020年07月21日 | 火星の探査
アラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機“HOPE”を搭載したH2Aロケット42号機が、7月20日に種子島宇宙センターから打ち上げられました。
約57分後に“HOPE”の正常な分離を確認し打ち上げは成功。
H2A、H2Bロケットの打ち上げは45回連続の成功となり、打ち上げ成功率は世界トップクラスの98%になるそうです。


日本の基幹ロケットH2Aによる火星探査機の打ち上げ

7月20日、三菱重工はH2Aロケットでアラブ首長国連邦(UAE)ドバイの政府機関になるムハンマド・ビン・ラシード宇宙センターの火星探査機“HOPE”の打ち上げに成功しました。
H2AによるUAE政府ミッションの打ち上げは、2018年に打ち上げた観測衛星“ハリーファサット”に続き2件目。

H2Aロケット42号機は、午前6時58分14秒にJAXAの種子島宇宙センター大型ロケット発射場から離床。
補助ロケットや第1段ロケットを切り離しつつ計画通りに上昇し、打ち上げから約57分後の高度430キロ付近で“HOPE”の分離が確認されました。
打ち上げは当初7月15日に予定されていたが、悪天候のため順延していた。

日本の基幹ロケットH2Aは、世界で最も信頼性の高いロケットの1つになります。
今回の打ち上げ成功によりH2AとH2Bロケットの打ち上げは、合わせて45回連続の成功。
これにより、打ち上げ成功率は98.0%に達しました。
UAEの火星探査機“HOPE”を搭載し打ち上げられるH2Aロケット42号機。(Credit: 三菱重工株式会社)
UAEの火星探査機“HOPE”を搭載し打ち上げられるH2Aロケット42号機。(Credit: 三菱重工株式会社)


UAEによる火星探査ミッション

この火星探査ミッションは、UAE建国50周年を迎える2021年に中東では初となる無人探査機の火星到着を目指すものです。

アブダビやドバイなど7首長国によるUAE連邦政府が、2014年7月に設立したUAE宇宙庁がミッションを統括。
ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センターが、探査機“HOPE”の設計など技術面の取りまとめを行こなっています。

探査機のアラビア語名は“Hope(希望)”を意味する“Al-Amal(アルアマル)”。
重さは打ち上げ時の燃料込みで1350キロ、大きさは縦横2.37メートル×2.9メートル、電気出力600ワットの太陽電池パドルを展開した時の翼長は7.9メートルほどになります。
火星探査機“HOPE”のイメージ図。(Credit: MBRSC)
火星探査機“HOPE”のイメージ図。(Credit: MBRSC)
“HOPE”の探査目的は、火星大気の完全な画像を撮影すること。

これにより、以下のことが可能になるそうです。
  1. 大気下層の特徴を把握し、火星における気候力学や天気図の把握

  2. 大気上層と下層の相関関係を調べ、火星の天気が水素と酸素をどのように散逸させているかの調査

  3. 大気上層での水素と酸素の構造と変動を調べ、火星において水素と酸素が宇宙空間に流出している原因の解明
一方、日本が1998年に火星に送り込もうとした探査機“のぞみ”が14台もの観測機器を搭載していたのとは対照的に、“HOPE”では以下の3台に観測機器が絞り込まれています。
  1. 大気温度・氷・水蒸気・粉塵を観測する赤外線分光計“EMIRS(Emirates Mars Infrared Spectrometer)”

  2. 高分解能で高解像度のカラー画像撮影のための多波長耐放射線カメラ“EXI(Emirates eXploration Imageer)”

  3. 紫外線波長を検出することで一酸化炭素や酸素の含有量と変動を観測する紫外線分光器“EMUS(Emirates Mars Ultraviolet Spectrometer)”
“HOPE”が火星周回軌道に入るのはUAEの建国50周年に当たる2021年2月。
火星の1年にわたって、上空2万~4万3000キロをを周回し観測を行う予定です。
火星の1年は地球の約687日に相当する。

今回の探査機打ち上げをもって、UAEはプロジェクト開始から6年という短期間で火星ミッションにおける探査機打ち上げを成功させた、世界で最も若い国になりました。

探査機“HOPE”の成功は、UAEが挑戦的な宇宙プログラムを進めるにあたり非常に大きな飛躍になります。

さらに、UAEが目標としているのは、2117年までに人類の居留地を火星に作り上げること。
今回の“HOPE”打ち上げは、その計画の基礎だと位置づけられているようです。
H2Aロケット42号機打ち上げライブ中継の録画(Credit: 三菱重工株式会社)


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リュウグウのサンプルを持って探査機“はやぶさ2”が12月6日に帰ってくる!

2020年07月20日 | 小惑星探査 はやぶさ2
小惑星探査機“はやぶさ”の後継機として、2014年12月にH-IIAロケット26号機で打ち上げられた“はやぶさ2”。
探査の目的は、C型小惑星“リュウグウ”でサンプルを採取し、太陽系の起源や進化と生命の原材料物質を解明することでした。
現在は地球まで9200万キロの位置まで戻っていて、地球帰還予定日が12月6日になるようです。


地球を目指してイオンエンジンの運転中

昨年の11月に小惑星“リュウグウ”を出発した小惑星探査機“はやぶさ2”は、地球を目指して5月12日からイオンエンジンの運転を実施しています。

イオンエンジンの運転が行われるのは8月末までで、必要な速度変更量のノルマを達成すると運転を止めて軌道を精密に計測。
その後、軌道の微調整をするため、最後に1週間程度イオンエンジンを噴射し、10月からは化学エンジン(スラスター)を用いた軌道微調整を数回行うことになっています。

現在、地球まで9200万キロのところまで戻ってきている“はやぶさ2”。
太陽からの距離は約2億キロで、地球を外側から追いかける方向に飛行中で残された工程は約3.2億キロです。
復路の第1次運転ではイラストのように3台のエンジンで噴射が行われ、太陽から遠ざかって太陽電池の発電量が下がるとともに、2台運転から1台運転に切り替えられている。現在の第2次運転も1台で行われていて、8月から2台運転に切り替えられる見込み。(Credit: JAXA)
復路の第1次運転ではイラストのように3台のエンジンで噴射が行われ、太陽から遠ざかって太陽電池の発電量が下がるとともに、2台運転から1台運転に切り替えられている。現在の第2次運転も1台で行われていて、8月から2台運転に切り替えられる見込み。(Credit: JAXA)


地球帰還とカプセルの分離

これまで、今年の11~12月頃とされていた地球帰還予定ですが、今回の記者発表会では12月6日(日)が地球帰還になっています。

現在、JAXAでは宇宙物体のオーストラリアへの着陸許可を申請中。
許可取得に向けてJAXAとオーストラリア宇宙庁が協力して作業を実施しているそうです。
2020年8月10日に着陸想定地(ウーメラ立入り制限区域)を管轄するオーストラリア政府から着陸許可が発行された。

地球に帰ってきた“はやぶさ2”は大気圏に突入することなく、“リュウグウ”のサンプルが入っているとみられるカプセルを分離します。
カプセル分離から着陸までの流れ。(Credit: JAXA)
カプセル分離から着陸までの流れ。(Credit: JAXA)
分離されたカプセルは高度約200キロで大気圏に再突入し、高度10キロまで降下したところでパラシュートを開いて、オーストラリアのウーメラ地区に着地。
カプセルは光学観測やビーコンの情報などから位置が調べられて探索、回収されることになります。
“はやぶさ2”の運用計画。(Credit: JAXA)
“はやぶさ2”の運用計画。(Credit: JAXA)


拡張ミッションで向かう天体の絞り込み

カプセル分離後の“はやぶさ2”に残るイオンエンジンの燃料は約55%とみられています。
また、イオンエンジン自体も1万4000時間の設計寿命に対して、帰還までの累積の運転時間は7000~8000時間ほど。
地上試験では、すでに6万時間以上の運転も達成しています。

このことからJAXAではイオンエンジンが使用可能と判断。
“はやぶさ2”は地球に着陸するとなくエスケープ軌道に入り、拡張ミッションのため別の天体を目指すことになります。

ミッションの延長を考える上で重要になるのは、地球に帰還するときの探査機の熱制御です。
帰還時の“はやぶさ2”は、地球の公転軌道よりも内側に入るので、これまでの飛行で最も強く太陽熱を受けることになります。

この熱に十分耐えられるかどうかを計算などで見極めたうえで、拡張ミッションで向かう天体を絞り込むそうです。

そこで、気になるのは目標になる天体。
残りの燃料を考えると、次に向かうことができるのは火星軌道より内側の範囲にある天体に限られれてしまいます。

残りの燃料を考慮すると、目標天体の探査は単なるフライバイ(天体のそばを通過しながら観測を行う探査)になるのでしょうか?
それとも、探査時間を長く取れるランデブー(天体と速度を合わせ、天体の近傍に長時間滞在する探査)になるのか?

地球帰還の日付が発表されたことで一層期待が膨らむ“はやぶさ2”のミッション。
残り5か月、計画が無事に遂行されることを願いましょう。


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