宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

夏ツーリングでも熱暴走しないスマホの選び方

2020年07月19日 | book gadget goods etc
2023年9月6日更新

ツーリングでスマホをナビやマップ表示に使っていると熱暴走することってありません?

特に気温が高い夏のツーリングは、スマホの温度が上昇しやすいので要注意。
気付くとスマホの画面が真っ暗っということもあり得ます。

自分が使っているのはHUAWEIの“Y6”というロースペックなスマホなので防水には未対応。
雨が降ることを考えるとスマホはケースに入れて使うことになります。
夏場はこのケースに熱がこもって温度が上昇… しばしばスマホが強制終了してしまうことがありました。

そこで、今回は夏ツーリングで熱暴走なく活躍してくれるスマホの選び方を書いていきます。
色々と考え、財布と相談したうえでタフネススマートフォンを購入しました。
タフネススマホTOUGHBOOK P-01K

スマホの温度が上昇する原因

気温が高く、スマホの温度が上昇しやすい夏のツーリング。
スマホの温度が上昇する原因を考えてみると、主な原因は3つになると思います。
  1. スマホを充電しながら使っている。

  2. スマホ本体に直射日光が当たっている。

  3. 急な雨に備えてスマホはケースに入れて使っている。
使用中のスマホは画面表示やGPS、Bluetoothなどでバッテリーを消費していきます。
2~3時間の走行だと大丈夫ですが、日帰りツーリング以上だとバッテリー切れが心配。
どうしても走行中の充電が必須になってしまいます。
この充電によりバッテリー自体が発熱することになります。
バッテリー交換可能なスマホだと予備バッテリーを購入するのもいいかもしれません。
意外と盲点なのが直射日光による温度上昇です。
走行中は風が当たっているので油断しがちですが、スマホが日に当たっていると本体はけっこう熱を持ってきます。

スマホが防水でないと、急な雨のことを考えてケースに入れてしまいがちです。
ケース内に熱がこもって排熱ができないので注意が必要です。
スマホの温度が上昇してしまったら…
よく言う熱暴走ですね。
手っ取り早いのは、電源を切る、充電をやめるです。
直射日光に当たっている場合はカバンの中へ。
保冷剤を当てるなど、急速に冷却してしまうと、スマホ内での結露の発生により故障の原因になってしまうのでお勧めしません。

温度の上昇を対策する

温度上昇の対策を考えてみました。
  1. なるべく充電時間を短くする。

  2. 日差しを付けて直射日光を当たらないようにする。

  3. ケースは使わず防水対応の機種を使う。
充電時の発熱は、バッテリー交換可能な機種や大容量バッテリー搭載機種を選ぶと充電時間を短くできます。
さらに、低消費電力のSoC搭載スマホを選ぶことで、バッテリーの消費と発熱を抑えることもできます。

直射日光は日差しを付けて対策するしかないかも。
あと、スマホはブラック以外の色を選ぶのもありです。

防水対応の機種を選べばケースに入れなくても急な雨に対応できます。
雨が降ったら水冷効果も期待できます。さらに防塵対応だったりすると心強いですね。
ただ、防水対応の機種は密閉性が高く熱がこもる傾向にあるので、少しでも発熱を低くするため低消費電力のSoCがおすすめです。

選んだスマホはタフネス仕様

ちなみに、スマートフォンによく採用されているクアルコムのSoCだとこんな感じでシリーズ展開されています。

ハイエンド性能の“Snapdragon 8シリーズ(800番台)”
最上位クラスのSoCなので、普段使いのWebや動画の閲覧などはもちろん、4Kや8Kの動画の撮影や3Dゲームのぷれいなど高負荷な処理を含む用途でも快適に使用できる。
ただ、それなりにバッテリーの消費と発熱は高くなる。

コストパフォーマンスに優れた“Snapdragon 6/7シリーズ(600番台/700番台)”
ミドルレンジクラスのSoCとしては、Snapdragon 6シリーズ(600番台)とSnapdragon 7シリーズ(700番台)があります。
Snapdragon 7シリーズの方が性能は高めでハイエンドに近い性能。
4Kや8Kの動画撮影や3Dゲームなどをしないのなら十分な性能を持っている。

エントリークラスの“Snapdragon 4シリーズ(400番台)”
性能控えめなエントリークラスのSoCで、WebやSNSなどライトな使い方なら十分使える。
2~3万台の価格帯で帰る機種が多く、型落ちならさらに安くなっている。

自分はマップ専用(googleマップ、YAMAP)と割り切って中古のスマホを購入。
マップ専用なので、ミドルからエントリークラスのSoCを搭載した機種で十分と考えました。

その結果、熱対策を考慮して選んだのは、パナソニックのタフネススマートフォンTOUGHBOOK P-01K。
エントリークラスよりもさらに下のSoCを搭載しているスマートフォンです。
2018年10月に発売された無骨なドコモ端末で、 端末の性格上、もちろんブラック以外の色展開は無しでした。

購入の決め手は以下の通り。

バッテリーの交換が可能で、SoCは途上国向け低価格端末に搭載されることを前提にしているSnapdragon 210。
CPUがQualcomm MSM8909(1.1GHz)クアッドコアとかなりロースペックなSoCなので、低消費電力と低発熱が期待できます。

米国国防省の軍用規格“MIL-STD-810”の試験17項目に準拠しています。
落下、衝撃、振動、風雨、侵漬、湿度、粉塵(砂塵)、耐日射、高温運転、高温保管、低温運転、低温保管、温度衝撃、着氷/凍結性降雨、凍結融解、低圧力運転、低圧力保管
もちろん、防水対応なのでケースに入れず使っていけます。
耐衝撃・耐振動・防塵・直射日光・高温運転などの試験をクリアしているので、バイクツーリングならではの運用でも力を発揮してくれはずです。

あとはツーリングで役立ちそうな機能の紹介。
本体の両側面にあるカスタマイズ可能なショートカットボタンは、画面をタッチしなくてもアプリを立ち上げたりできるので便利かも。
水に濡れた手や手袋装着時でもタッチ操作可能な機能も付いています。
他機種での評判によると、この手の機能は微妙なことが多いようですが…
6980円と安かったので中古端末を購入。
キズも全くない良品を手に入れることができました。
純正の電池パック(容量3100mA)は、リアカバー一体式で8,900円と少しお高めなので、ツーリングで使用してから購入の判断をしようと思います。

3年ほど使って感じたのは、少し動作が遅いけどマップ専用として十分使えるということ。
さすがはSnapdragon 210です消費電力や発熱は少ない感じ。

ツーリング(googleマップ)では電源ケーブルを挿して使ってます。
ケース無しの運用で発熱は気にならないけど、直射日光が当たるとそれなりに熱くなるかな。

登山ではYAMAPを使っているけど、フライトモードだと1日は十分に持ちます。
発熱は、ぜんぜん気にならないレベルです。
雨が降っても気にせず使えるのがいいですね。

TOUGHBOOK P-01Kを使い始めて分かったこと

本体を手にとって思ったのが、思っていたほど大きく無く、重くないなぁー っということ。
さっそく充電しながら、初期設定とアプリのインストールを始めていきます。
“OCN モバイル ONE”のSIMを入れてAPNの設定をするとドコモの電波をつかんでくれました。

入れたアプリはGPS Status、YAMAP、GPS Test、Yahoo!天気、Edge。
“GPS Test”を表示させると、“P-01K”はアメリカのGPSとロシアのGLONASSに対応していることが分かります。

測位が速く、精度も問題なし。
一瞬喜んだのは、衛星のID 193・194・195が表示されたこと。
みちびき(初号機・2号機・4号機)を認識しているんですねー(日本の国旗が表示されてました。)
ただ、他の項目がブランク… 残念ながらデータの取得はできてないですね。
○○○
ショートカットボタンはグローブを付けていても押しやすいので、GoogleマップとYAMAPを登録しました。

あとは、ツーリングで使ってみてどうなるか?
ツーリング中はGPS ONでGoogleマップを表示させた状態にしているので、バッテリーの減りは気になるところです。
タフネススマホを持つのは初めてのことなので、ツーリングや登山にも持っていきたいですね。


こちらの記事もどうぞ


11光年彼方の赤色矮星にスーパーアースとみられる系外惑星を発見! 気になるのは大気の存在

2020年07月17日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
太陽系から11光年彼方に位置する恒星“グリーゼ887”に、スーパーアースとみられる系外惑星が2つも発見されました。
どちらも惑星の表面で水が液体の状態で存在できる領域“ハビタブルゾーン”のあたりに位置しているようです。


赤色矮星を回る系外惑星

みなみのうお座の方向約11光年彼方に位置する赤色矮星“グリーゼ887”は、連星系を1つとして数えると太陽系に10番目に近い恒星になります。
“グリーゼ887”はCD-36°15693、ラカイユ9352とも呼ばれる。

“グリーゼ887”は質量も直径も太陽の半分ほどと小さく、近くにある割に暗いけど、赤色矮星としては最も明るく見える星なんですねー

今回、この“グリーゼ887”を観測したのは、ドイツ・ゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲンの研究チームでした。

研究チームは、赤色矮星を回る系外惑星を“ドップラーシフト法”で探す“Red Dots”プロジェクトの一環として“グリーゼ887”の観測を実施。
用いられたのは、南米チリにあるヨーロッパ南天天文台ラ・シーヤ観測所の口径3.6メートル望遠鏡に設置されている分光器“HARPS”でした。

主星の周りを公転している惑星の重力で、主星が引っ張られると地球からわずかに遠ざかったり近づいたりします。
研究チームは、この動きによる光の波長の変化“ゆらぎ”を読み取る“ドップラーシフト法”で、“グリーゼ887”を巡る2つの系外惑星を発見しています。


惑星の表面では水が液体の状態で存在しているかも

どちらの惑星も質量は地球より大きいのですが、巨大氷惑星である天王星や海王星よりはかなり小さい“スーパーアース”に分類される系外惑星になります。

内側の“グリーゼ887 b”は、中心星から約1000万キロの軌道を約9.3日周期で公転。
外側の“グリーゼ887 c”は、中心星から約1800万キロの軌道を約21日周期で公転しています。

太陽から5800万キロの軌道を88日周期で、水星は公転しています。
この水星に比べると“グリーゼ887 b”と“グリーゼ887 c”は、ずっと中心星に近い軌道を公転しているんですねー

ただ、“グリーゼ887”は太陽よりもはるかに暗い赤色矮星というタイプの恒星になります。

なので、“グリーゼ887 b”や“グリーゼ887 c”が中心星“グリーゼ887”から受け取るエネルギーの量は大きくなく、どちらも惑星の表面で水が液体の状態で存在できる領域“ハビタブルゾーン”のあたりに位置しているようです。

外側を公転している“グリーゼ887 c”の表面温度は約70度と推定されています。
“グリーゼ887”と周りを公転する惑星系のイメージ図。(Credit: Mark Garlick)
“グリーゼ887”と周りを公転する惑星系のイメージ図。(Credit: Mark Garlick)


惑星に大気は存在しているか?

さらに、今回の観測では2つのスーパーアース以外にも重要な発見がありました。

それは、“グリーゼ887”には太陽と違って黒点がほとんどないことです。

もし、“グリーゼ887”が活発であれば恒星風によって“グリーゼ887 b”や“グリーゼ887 c”の大気は一掃されてしまうはずです。
そうなれば地表に届くX線の量は大幅に増え、生命にとって致死的なものになってしまいます。

でも、“グリーゼ887”の活動は穏やかとみられるので、地球よりも多くの光を浴びているにもかかわらず、惑星は大気を維持しているのかもしれません。

地球程度の濃い大気が存在していれば、地表の放射線の強度は地球型生命に影響を及ぼすほどにはならないはず。
さらに、地球のような磁場があれば、その影響はさらに小さくなり、生命を宿している可能性もあります。

“グリーゼ887”の明るさはほぼ一定なので、これらの惑星系の大気を検出することは比較的容易になり、ハッブル宇宙望遠鏡の後継機ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主要なターゲットになります。

“グリーゼ887 b”や“グリーゼ887 c”には、致死的な光線から惑星を守る大気は存在しているのでしょうか?
大気が存在するなら、酸素といった生命の進化を促す元素が含まれているのでしょうか?
さらに、これらの好条件はどれだけ続いていたのでしょうか?

太陽系外の生命探査を含む、より詳細な研究をするのに“グリーゼ887”を巡る系外惑星は、最適なターゲットになりそうですね。


こちらの記事もどうぞ


木星からガスを剥いだような系外惑星を発見! 巨大ガス惑星の核を観測するチャンスかも

2020年07月15日 | 宇宙 space
地球のような高密度の惑星としては観測史上最大のものが見つかりました。
ただ、この惑星は変わっていて、巨大ガス惑星からガスをとって核だけをむき出しにしたような姿をしていたんですねー


地球並みの密度を持つ最大質量の惑星

今回、イギリス・ウォーリック大学の研究チームが見つけたのは、ろ座の方向約730光年の彼方に位置する恒星“TOI 849 b”。

観測には、ヨーロッパ南天天文台のパラナル天文台に設置されている望遠鏡群“次世代トランジットサーベイ”と、同じくヨーロッパ南天天文台のラ・シーヤ観測所3.6メートル望遠鏡に備え付けられた分光器“HARPS”が用いられました。

太陽とよく似た恒星のすぐ近くを回っている“TOI 849 b”の公転周期はわずか18時間、表面温度は摂氏1500度ほどと見られています。

“次世代トランジットサーベイ”の観測から分かったのは、“TOI 849 b”のサイズが海王星とほぼ同じだということ。

もう一方の“HARPS”では“ドップラーシフト法”により惑星の質量を計測。
“TOI 849 b”の質量が海王星の2.3倍ほどだと分かります。
主星の周りを公転している惑星の重力で、主星が引っ張られると地球からわずかに遠ざかったり近づいたりする。“ドップラーシフト法”では、この動きによる光の波長の変化“ゆらぎ”を読み取り惑星の質量を計測している。

観測結果は、“TOI 849 b”の密度が岩石惑星である地球とほぼ同じであることを意味していました。

地球と同じくらい高密度な系外惑星で、これほど質量が大きなものが見つかるのは異例なこと。
でも、そもそも海王星より一回り質量が大きく、木星よりはずっと小さな系外惑星自体が“海王星級惑星の砂漠地帯(Neptunian desert)”と呼ばれるほど珍しい存在なんですねー

“TOI 849 b”は観測史上最大の質量を持つ地球型惑星(密度が地球並みの惑星という意味)になります。

これだけ質量が大きな惑星であれば、普通なら誕生したときに大量の水素やヘリウムを集めて、木星のようなガス天体に成長するはずです。

そのガスが見当たらないということは、この天体が露出した惑星の核(コア)だということに…
もちろん巨大ガス惑星の核が、露出した状態で恒星の周りを回っているのを見つけたのは初めてのことになります。
発見されたガス惑星の核“TOI 849 b”と中心星のイメージ図。(Credit: University of Warwick/Mark Garlick)
発見されたガス惑星の核“TOI 849 b”と中心星のイメージ図。(Credit: University of Warwick/Mark Garlick)


惑星の核がむき出しになっている理由

なぜ、普通の巨大ガス惑星でなく、その核だけがむき出しで見えているのでしょうか?

研究チームが考えている可能性は以下の2つ。
  1. かつては木星のような姿だったけど外層のガスをほとんど失ってしまった。 
    その理由としては中心星に近づき過ぎて引き裂かれたことや、他の惑星と衝突したことが考えられます。
    星の光によって大気が散逸した可能性もありますが、それだけではこれだけ多くのガスが失われることはないようです。
  2. ガス惑星に成りそこなった可能性
    つまり、核だけはできたけど何かがうまくいかず、大気が形成されなかったというシナリオです。
    生まれたての恒星を取り囲むガスとチリの円盤“原始惑星系円盤”の中で、巨大なガス惑星がどのようにして大気を獲得していたのかは、以前この記事で説明しています。
    大気が獲得できなかったということは、“原始惑星系円盤”の中で惑星が形成される際、“TOI 849 b”が誕生した部分がたまたま空隙になっていたか、形成されるのが遅すぎて円盤に物質が残っていなかったのかもしれません。
今回の“TOI 849 b”発見は初めての事例であり、このような惑星が存在すること、発見されえることを私たちに教えてくれました。

太陽系では惑星の核を見ることは不可能です。
でも、この天体は、それができるチャンスを与えてくれているのかもしれません。

例えば、木星の核の性質については数々の大きな問題が未解決のまま残っています。
“TOI 849 b”のような奇妙で特異な系外惑星の観測が、惑星形成に関しての知見を得るための唯一無二の手段になるのかもしれません。


こちらの記事もどうぞ


太陽探査機“ソーラーオービター”が太陽表面まで7700万キロの距離に到達

2020年07月13日 | 太陽の観測
これまで見ることができなかった太陽の両極域を観測するための探査機。
ヨーロッパ宇宙機関の太陽探査機“ソーラーオービター”が、6月15日に初めて太陽に接近し、表面まで7700万キロの距離まで到達したようです。


太陽の両極域を観測する探査機

2020年2月10日、アメリカ・フロリダ州にあるケープカナベラル空軍基地から1基の“アトラスVロケット”が打ち上げられました。

このロケットに搭載されていたのはヨーロッパ宇宙機関の太陽探査機“ソーラーオービター”。
“ソーラーオービター”は太陽を斜めに周回する軌道に投入され、これまで見ることができなかった太陽の両極域を観測するんですねー

これまで地球や人工衛星、探査機からは見ることができなかった太陽の両極域は、太陽活動を理解する上でカギになると考えられている部分です。
この領域が観測し易くなるので、今まで見たことのない画像、新しい発見が期待されます。

6月15日に“ソーラーオービター”は、初めて楕円軌道上で太陽に一番近づく点“近日点”を通過。
このときの太陽表面からの距離は、地球~太陽間の半分にまで迫る約7700万キロでした。

近日点通過の1週間で探査機が行ったのは、搭載された6基のカメラを含む10種類の科学機器の動作確認。
撮影された画像は7月中旬に公開される予定です。
太陽探査機“ソーラーオービター”の太陽初接近のアニメーション。(Credit: ESA/MediaLab)


2つの探査機による相互補完的な観測

今年初め、ハワイにある口径4メートルの望遠鏡“ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡”が、太陽をより高解像度で大きく撮影しました。

でも、地上からだと大気の影響を受けるんですねー
なので、宇宙から観測したときと比べて太陽スペクトルのほんの一部しか見ることができませんでした。

では、太陽を観測する探査機ではどうでしょうか。

2018年に打ち上げられたNASAの太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”は、太陽の非常に近くまで接近して観測を行います。

ただ、太陽に近づき過ぎるので、カメラのセンサーがその高熱に耐えることができないんですねー
なので、“パーカー・ソーラー・プローブ”には、太陽を直接とらえるカメラは搭載されませんでした。

逆に、太陽を撮影できない“パーカー・ソーラー・プローブ”にとって“ソーラーオービター”のカメラを含む観測機器は極めて重要な助けになります。
2つの探査機による相互補完的な観測により、単独のミッションよりも多くの成果が得られるはずです。


惑星の重力や公転運動量などを利用した軌道変更

6月15日に初期フェーズを終えた“ソーラーオービター”は、2020年12月と2021年8月に金星の重力、2021年11月には地球の重力を利用して軌道変更“フライバイ”を実施。

これにより、初期運用軌道になる太陽を周回する長楕円軌道に投入され、黄道面、つまり惑星の公転軌道とほぼ同じ面上を移動することになります。
科学観測の開始は2021年11月を予定しています。
惑星の近傍を通過するとき、その惑星の重力や公転運動量などを利用して、探査機の速度や方向を変えることができる。燃料を消費せずに軌道変更と加速ができ、このような飛行方式をフライバイあるいはスイングバイという。
太陽を中心に描いた太陽探査機“ソーラーオービター”の軌道。(Credit: ESA/ATG MediaLab)
その後、金星へのフライバイにより、“ソーラーオービター”は地球やその他の惑星が太陽の周りを回る公転面から離れ、太陽を斜めに周回することに。
高緯度から太陽を観測することで、観測史上初めて太陽の両極をはっきりととらえることになります。

太陽極域の観測は、太陽磁場のふるまいを理解することにもつながります。

さらに、磁場によって発生する太陽風や、太陽風が太陽系全体の環境に及ぼす影響についても研究が発展するはずです。

最終的に“ソーラーオービター”が接近するのは、太陽から水星までの距離よりも短い4200万キロの位置。
ちなみに“パーカー・ソーラー・プローブ”は、2024年に太陽の表面から600万キロほどしか離れていない距離を飛行するようです。


2020年7月17日_追記
近日点の通過中に撮影した太陽の姿

“ソーラーオービター”が6月15日に近日点(約7700万キロ)を通過したときの画像が公開されました。
近日点通過の1週間で撮影された画像(Credit: NASA / ESA)
近日点通過の1週間で撮影された画像(Credit: NASA / ESA)
“ソーラーオービター”には、6つのイメージングセンサーが搭載されていて、それぞれが太陽の様々な表情を撮影します。

なかでも、紫外線撮像装置“Extreme Ultraviolet Imager(EUI)”がとらえた画像には、研究者たちが“キャンプファイヤー”と呼ぶ太陽表面の小さな爆発や非常に小さな規模の太陽フレアらしきものが写っていました。

研究者たちが考えているのは、“キャンプファイヤー”が太陽表面よりも外側のコロナ部分の方が300倍も高温になる理由を説明するものだということ。

この現象を詳しく理解するのに必要になるのが、“キャンプファイヤー”部分の温度を正確に調査することです。
もちろん“ソーラーオービター”には、そのためのスペクトル撮像装置が搭載されているので、謎の解明に向けて研究者たちの期待は高まっているようです。
かつていないほど接近した“ソーラーオービター”が初めて見た太陽(Credit: ESA/ATG MediaLab)
通常、探査機が撮影する最初の画像は、搭載している機器の動作試験を兼ねたものになります。
なので、最初の撮影で何らかの発見をするとは期待されていないんですねー

最初の段階から“キャンプファイヤー”のような画像をとらえ、最高のスタートを切った“ソーラーオービター”ですが、これまでに前例のない困難にも遭遇しています。

それは、新型コロナウィルスのパンデミックによるもの。
ドイツ・ダルムシュタットにあるヨーロッパ宇宙運用センターの管制チームの多くが、1週間以上にわたり在宅勤務に移行せざるを得なかったことです。
その間は、必要最低限の人数での監視操作が求められ、重要な操作もリモートから実行していたそうです。

現在、“ソーラーオービター”はすべての機能が正常なことが確認され、計画通りにミッションを継続中のようですよ。


こちらの記事もどうぞ


なぜ、月は表側と裏側で地質的に非対称なのか? “海”と呼ばれる領域が火山活動を活発にさせていたようです。

2020年07月11日 | 月の探査
なぜ月の裏側には、“海”と呼ばれる色が濃い領域はないのでしょうか?
今回の研究で明らかになったのは、表側の“海”に濃集している“KREEP”により、岩石が溶融するのに必要な温度が下がることでした。
これにより、月の表側での初期火山活動は、これまでの想定より4~13倍も活発になり、月の表裏の違いを増幅させていたようです。


月は火星サイズの天体が地球に衝突してできた

45億年前に、火星サイズの天体“テイア”が原始の地球に衝突。
この衝突から生まれた破片が、かなり急速(おそらく数百万年強の間)に分離し、地球と月を形成したと考えられています。

大きい方は地球になり、大気と海のある地質学的に活発な惑星になるのにちょうどよい大きさと環境へと進化。
小さい方が月になるのですが、こちらには地球のような特性を保持するのに十分な質量はありませんでした。

一方、数十年にわたる月の観測と調査から分かってきたのは、月の歴史は思っていたよりもはるかに活発で、直近では10億年前に火山活動や磁気活動があったということでした。


表側と裏側で特徴が異なる月の表面

月は自転周期と公転周期が一致しているので、地上から見上げると常に同じ“表側”の面が見えていて、色が薄い部分と“海”と呼ばれる色が濃い部分があることが分かっています。

一方、探査機の画像でしか見ることができない“裏側”の面は、表側に広くみられる色が濃い部分がほとんど存在してないんですねー
太陽に照らされた月の裏側と地球。NASAの人工衛星“DSCOVER”が2015年に撮影。(Credit: NASA/NOAA)
太陽に照らされた月の裏側と地球。NASAの人工衛星“DSCOVER”が2015年に撮影。(Credit: NASA/NOAA)
NASAのアポロ計画により持ち帰られた大量の月の石(382kg)から分かっているのは、色の濃い部分は化学組成が特徴的であり、火山活動に起因するものだということでした。

この色の濃い部分はカリウム(K)、希土類元素(REE)、リン(P)を豊富に含む岩石で、この特徴から“KREEP”と名付けられています。


月の表側は火山活動が活発だった

なぜ、火山活動とこの“KREEP”の特徴が月の表側だけにあり、裏側にはほとんど存在しないのかは、いまだに謎のままです。

今回の研究では、観測や室内実験、モデリングを組み合わせて、月が形成された時点で存在した非対称性が、その後も数十億年にわたって月の表裏における地質活動の違いを増幅させていたことを明らかにしています。

“KREEP”はカリウム、ナトリウム、ウランといった放射性元素を多く含んでいます。
これらの元素が放射性崩壊を起こす際に発生する熱、それがマグマを作る可能性があることを過去の研究で指摘されていました。

ただ、これだけでは月の表側全体で火山活動が盛んになった原因を説明するには不十分でした。

そこで研究チームは実験により、岩石に“KREEP”が含まれることで岩石が溶融するのに必要な温度が下がることを突き止めます。
これを考慮に入れれば、放射性崩壊だけを考慮したこれまでの想定よりも、火山活動が4~13倍も活発になる事も示されました。

ほとんどの溶岩流は月の初期段階で生じています。
なので、この結果は月の進化のタイミングや、月で生じた様々な地質現象の順序にも制約を与えることになります。
NASAの月探査ミッション“ルナ・プロスペクター”で観測された月表面のトリウム濃度。トリウム濃度と熱源になる外の放射性元素の濃度には強い相関があり、月面の表側に濃集している。この濃集地域と月の歴史で観測される特徴との関係は、月の科学において重要になる。(Credit: Laneuville, M. et al (2013) Journal of Geophysical Research: Planets.)
NASAの月探査ミッション“ルナ・プロスペクター”で観測された月表面のトリウム濃度。トリウム濃度と熱源になる外の放射性元素の濃度には強い相関があり、月面の表側に濃集している。この濃集地域と月の歴史で観測される特徴との関係は、月の科学において重要になる。(Credit: Laneuville, M. et al (2013) Journal of Geophysical Research: Planets.)
浸食の影響が極めて少ない月面では、太陽系初期段階からの地質学的記録を残しています。

特に、表側にある領域には、月の他の場所とは異なりウランやトリウムなどの放射性元素が農集しています。
このような局部的な農集の原因を理解できれば、月形成初期段階の解明に役立ち、その結果、原始地球環境の解明にもつながっていきます。

今回の研究結果が示唆しているのは、およそ45億年前に月が形成されて以来、高濃度の“KREEP”成分を含む領域が月の進化に影響を与えてきたことでした。

このような地質的な非対称性が時間とともに増幅された証拠は、太陽系の他の衛星でも発見される可能性はあります。
もし発見することができれば、地質的な非対称性や初期段階の惑星と衛星の解明に役立つはずです。


こちらの記事もどうぞ
  これまでの説より1億年も早い? 月が冷えて固まり始めたのは太陽系の誕生から5000万年後だった