さすらうキャベツの見聞記

Dear my friends, I'm fine. How are you today?

土曜のイヴは6年来ない

2011-12-24 12:45:47 | ひとこと*古今東西
 今日は、12月24日、土曜日。

 暦(こよみ)の巡り会わせで、土曜日のクリスマス・イヴは6年に一度しか巡ってこない・・・らしい。
(このネタを記すのに、今を逃したら、また6年後になってしまう。)


 そんなわけで…。


    


土曜のイヴは六年来ない。


       

今年のイヴは土曜日ね、という娘の声に、

それじゃ珍しく一家五人がそろうかもしれないわね、

と女房が思わぬはしゃぎ声で答えています。

そんなやりとりに、ぼくはちょっと胸がつかれる思いがします。

そうか。女房はそんなことを願っていたのか、

といまさらながらに気づくのです。ここ数年、子どもたち

(といっても長男は22歳ですが)の成長を見ながら、

それを喜ぶ気持ちの裏側で、どこかさびしい思いがしていたのは

僕だけではないのですね。最近めったにないことですが、

夕食に全員がそろい、冗談を言いあっている時など、

ふと子どもたいの成長がピタリととまり、

ずっとこのままでいられたらなんて

君に笑われそうな空想をしたりすることもあります。

君とぼくが遊び歩いていた大学生の頃、

ぼくたちの親も、そんな思いをしていたのでしょうか。



また一年が暮れて行きます。今年も、お互い元気で何よりでした。

娘によると、今度の土曜のイヴは六年先になるそうです。

その間、君やぼくの家族に、どんな変化が

おきているのでしょうね。せっかくのカレンダーの心配りです。


今年のイヴは外に飲みに行かないように。



お正月は、全員で我が家に来てください。

町の財産、でもある。イズ・ステージ。



    


ふつうの一人称コピーなのかなと思って読んでいたら、13,14行目で、
「君」宛ての手紙で、大学以来の親友だということも読み取れます。
終わりの数行で、新築した我が家のお披露目に親友の家族を呼ぶ招待状だということが分かります。
人生ようやくにして築いた自慢のわが城に、それも、「街の財産、でもある」自慢の家へ。

コピーとして読むのであれ、実際の手紙として読むのであれ、この一文の伝えたいことは、

  「ようやくにして 家を建てました」
  「今度のクリスマス・イヴにお披露目したいので ぜひご家族おそろいでおいでください」

 です。(キャベツとしては、後半のまとめはちょっと違う気もする。←違う取り方もある、という意味)

そのことを早く伝えたいのに、すぐには書かない。
「自慢の城を持てた」のだからそう書きたい。
しかし「自慢の」という語は一度たりともつかっていません。
その喜びを、家族たちの喜びをも、書き出しの3行で、家族たちの情景描写で表現しています。
さらに私が唸ったのは、その中にさりげなく書き込まれた「珍しく一家五人がそろう」の一言です。
長男が22歳ともあります。
父・私はまもなく50歳になるでしょう。
これまでイブもなく三連休もなく、会社とそのつきあいを優先させる立場であり、生活であった人でしょう。
「ようやくにして築いた城」と書かなくても その感慨は「イズ・ステージ」のターゲット読者ならよく分かります。

 終わりまであと4行のところまで読んできて、私の唸りは声になりました。
ふつうなら「ぜひお越しください」と書くご招待のモチベーションを、

  せっかくのカレンダーの心配りです。

と書くセンス。岩崎さんのコピーにはこういう技が宝石箱のように詰まっています。・・・

              (鈴木康之著『文章がうまくなるコピーライターの読書術』から、
                   コピー・ライター岩崎俊一さんの、1988年頃の積水ハウスの「イズ・ステージ」という戸建て住宅の
                   新聞広告のひとつと、それについての解説の一部転載)


    


 今、東急田園都市線沿線に住むスタッフが、時折、フリーペーパー『SALUS』を持ってきてくれるが、私はそれが楽しみだったりする。
 岩崎さんの連載エッセイがあったり、他の読み物も、コンパクトながら味わいがあるからだ。



 私もまた、私自身が頂いているものを、
読む人に、聴く人に、それを彷彿とさせるように、そして、しみじみと味わい、
また、じんわりと暖かくなるように、伝えられたら…と思ふ。
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