*茅ヶ崎に酒蔵があることをご存知ですか?
創業より130年、手作りによる少量生産を貫いている“湘南最後の蔵元”熊澤酒造です。
明治5年創業という歴史を持ちながらも、廃業の危機にあった蔵元を継ぎ、経営回復・発展させてきた六代目 熊澤茂吉氏は弱冠37歳という若さ。大学卒業後、将来に確たる希望もなくアメリカに留学。「後継者もいないし、造り酒屋を閉めようか」という連絡を受けて一時帰国した茂吉氏は、「自分が活躍できる場はここにあった!」と24歳で実家の造り酒屋に入社を決めたそうです。
こうして茂吉氏の、古い体質が残る酒造業界を改革すべく奮闘する日々が始まります。「湘南の酒が美味いはずはない」という偏見(私も実はそう思っていました。スミマセン)、流通に不利な状況、商取引の慣習や従来の杜氏制度の問題点を打破すべく、素人感覚でおかしいと思ったことはすべて口に出し、酒蔵を仕切っていた叔父さんの熊澤圓造氏とも毎日けんかしたそうです。
酒造りの冬季にのみ雇っていたベテラン杜氏たちの技術を地元の青年杜氏に徹底的に仕込み、酒造りのない夏場にも地ビール造りに同じ醸造技術を活かし、通年雇用することで組織体制を強化。この時(平成8年)誕生したビールが、今ではすっかりお馴染みとなった「湘南ビール」です。
同時期に、流通の弱さを克服すべく蔵元の敷地内に何とレストランをオープン。自社商品(日本酒・地ビール)を売り出すという策を打ち立てます。使用していない古い酒蔵(大正時代の貯蔵庫)を改築し、ビール酵母入りのピッツァを薪窯で焼くトラットリア・モキチ、平成14年6月にはブランド酒「天青」に合う食事処をと、蔵元創作料理天青、さらにはビール酵母を使ったパン製造に取り組み、MOKICHI Baker&Sweetsを。これで流通規模は一気に倍以上に広がったそうです。
想像以上の大当たりとなった湘南ビール、大繁盛のレストランの収益を酒蔵の設備投資にあて、本物志向の高品質ブランド酒「天青」が誕生したというわけです。作家の陳舜臣氏により名付けられたこの日本酒、その由来は、「雨の去った後の、どこまでも青く澄み切った空」をイメージしたそう。確かにその名通りのすっきり涼やかな味わいは、湘南の地を代表するお酒のイメージにピッタリです。
蔵元創作料理天青へはランチ・ディナータイム共に訪問済。
お料理の方は、創作ということにこだわりすぎ(遊びすぎ?)てか、当たり外れがあるように感じましたが、お酒のリストの充実ぶりは感動ものですよ! 酒蔵にいなければ飲めない澱の浮いた「しぼりたて」や「どぶろく」など、酒好きには堪えられない品々に思わず目移りしてしまうほど。
ブランド酒「天青」の、大吟醸(雨過)、吟醸(千峰)、純米(吟望)、特別本醸造(風露)という4酒をミニグラスで1杯ずつ楽しめる「ききくらべ」(1,200円)、「しぼりたて」(600円)、杉升で供される「たる酒」(500円)、(裏の竹林で取れた)本物の竹製の徳利(太い竹筒に穴を空けたもの)とおちょこでいただく「青竹酒」(700円)、シェリー樽で醸造した日本酒(600円)などなど…。
今更ながらに日本酒の奥深さを痛感、「湘南の酒なんてどうせ…」という偏見は見事に砕け散りました(爆)。
日本酒造りを軸に、次々と新事業を打ち出してきた六代目。
「もともと経営の多角化を狙ったのではなく、蔵元の基盤を固めるためにしてきたこと。湘南唯一の蔵元にしかできないことにこだわった結果です」
つい最近、茅ヶ崎駅近くの日本精麦跡地にカフェレストラン モキチ・フーズ・ガーデンがオープンしたばかり。若き敏腕社長の快進撃はまだまだ続きそう。
そうそう、先日ディナーを楽しんだエリゼ光の六川シェフが、六代目に異様な(笑)興味を示していて、「友だちになりたい! 食を介して面白いことが一緒に出来るかも」と言うんです。
で、10月末以降の水曜日(エリゼの定休日)、「天青で一席設けようじゃないか!」というプランに発展いたしました。
シェフが「もうずっと会っていない」と言うので、王様夫妻をお誘いして、せっかくだからかおりんとスティーブ@茅ヶ崎氏にも声かけて―、って次回の湘南グルメ決定じゃん!! ということになりました。
なーんか面白いことになりそうだと期待しているのですが。
★熊澤酒造について詳しく知りたい方は こちら