りょうりやむそう(日本料理/辻堂)
*侘び寂びの空間で堪能する純和風の本格懐石~
遅ればせながらオフ会レポートです。
約1年ぶりとなる「湘南グルメ」。
舞台となった辻堂の懐石料理店
夢窓は、地元在住のスティーブ先生でさえ探し当てるのに6年を要したという「知る人ぞ知る」名店です。先生をして「湘南ではNo.1の腕前!」と言わしめる料理人のお店ですが、宣伝やメディアへの露出などが一切なく、その存在を知る人はごくわずか。完全予約制で、最大8名までしか客を入れません(ってか、キャパ的に入店不可能?)。クチコミで知った客のリピートによって繁盛しているお店なのです。しかも謎の存在のはずなのに、タクシー運転手による知名度はかなり高いという…。いやでも期待は高まるばかりです。
エリゼ光から、シェフをはじめ4名が参加するにあたり、定休日の関係で開催日は水曜となったのですが、あれれ?此方のお店のお休みも水曜日ではないですか!最大定員8名の貸切ということで無理を聞いていただいたようです。こういう融通が利く点は、オーナーがシェフを務める小さなお店の魅力ですね。
18:30にJR辻堂駅の改札に集合し、二手に分かれタクシーでGO! 数年後「湘南随一」のショッピングモールとなる予定の巨大な空き地(なんだか不思議な眺めだった)を抜けて、なんの変哲もない閑静な住宅地へと向うこと5分。タクシーを降りると、コンクリート塀にうっかり見過ごしてしまいそうな木の看板が立てかけられています。これがお店の存在を知らせる唯一の手掛かり。矢印の先の小さな古民家がこの日の宴の舞台でした。
引き戸を開け、玄関で靴を脱いで店内へ
古い日本家屋を改装したそこは、質素で凛とした佇まい。派手な飾りは一切ありませんが、まさに日本古来の「侘び寂び」の空間です。調度は勿論、料理を盛る器、さりげなく活けられた花にまで粋な演出が。ダイニングから見える小さな庭にも季節を感じさせる工夫が凝らされています。
8人掛けのテーブルには、すでに人数分セッティングが。
歓待の杯
和紙の敷かれた薄い板の膳、銀の箸置き。
赤い漆塗りの小さな杯は、いわゆる「ウェルカムドリンク」。
今後もご縁がありますように―という願いが込められているとか。
一同席についたところで「とりあえずビール」で乾杯。
落雷による停電の影響で電車のダイヤが乱れ、到着が遅れていたかおりんも無事間に合い、全員で乾杯出来ました!
前菜
上:新里芋のすくい豆腐(トッピングは鮑!)
下:甘長唐辛子の湯葉詰め(乗っているのは蒸した雲丹!)
のっけから鮑、雲丹キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
すくい豆腐の器はなんと里芋の葉っぱですから!
このゆるいお豆腐といい、甘長唐辛子にかかっているジュレといい…箸ではすくいきれません。スプーンが欲しかった!
椀
茶豆と長芋の団子入りカサゴの澄まし汁
赤い塗り椀の中には、カサゴと長芋のお団子が。カサゴは湘南ではポピュラーな白身魚ですが、さばくのに手間がかかるためか、アラごとブイヤベースの具にしたり、丸ごと塩焼きにしたりという料理が多いのです。切り身で、しかもこんなに丁寧な細工をしたものを出されたのは初めてかも。
茶豆をまぶした長芋の団子は適度な粘り気がいいですね。細かく刻んだ大葉が乗っています。これぞ和食の王道!の澄んだお汁は柚子の隠し味も上品。
造り
本鮪、平目、ダルマイカのお刺身をカキ氷のように細かくかいた氷の上に。細かく刻んだ大葉と山葵添え。
イカの甘さはハンパじゃありません!本鮪の上品な脂の乗り具合といい、平目のプリプリした歯応えといい。もっとたくさんいただきたかった…。
酒肴5点盛り(4人前の盛り付けです)
とうもろこしの炭火焼き
焼きもろこしはベーコンにくるんで。とうもろこしの葉で作った茶巾に入っています。
左:生蛸ゲソ小松菜添え(ちょこんと乗っているのは梅肉)
右:湯むきトマトと若布
左:細切りの牛蒡を衣にした海老の揚げ物
右:焼き蛤(大根おろしとポン酢でサッパリと)
料理人の遊び心、独創性が光る一皿(にてんこ盛りですが)。
日本料理の定石はキチンと踏んだ上で、食材の使い方や盛り付けに斬新さを感じました。
ゲストを驚かせたい、楽しませたいという作り手の心意気が伝わります。
焼き物
まながつおの炭火焼き、大豆の葛豆腐(白味噌がけ)、海苔寿司
葛豆腐のまるでお餅のような弾力は未知の食感。揚げて白味噌で仕上げていますが、なんともいえない(未知だから)深い味わいに唸りました。私は六川シェフの向かいの席だったので、反応を見るのが興味深かったです(氏も腕組みをして考え込んでおりました)。
インパクト大賞レビュア泣かせの一皿(笑)
一言で何と表現していいやら…。
グジ(甘鯛)の新蓮根団子 焼き茄子添え? いやいや、そんな単純なお料理ではありません!
皮を剥いて香ばしく焼いた茄子は上品な甘さ。普通に焼いても十分美味しい食材に繊細な仕事を施してあるところはまさに高級料亭の趣です。新蓮根の団子は甘鯛の身を餡にする贅沢さ。ふっくらやわらかい白身魚と、シャキシャキした食感を残した蓮根の団子のマッチングは素晴らしい! これをとろみをつけた和風だしであんかけにし、白髪ネギを添えて。チュラルフレンチのエリゼ六川も「美味いなぁ…」と唸った逸品です。
食事
路地みょうがの炊き込みご飯、香の物ご飯は小さなお釜で丁寧に炊き上げ、お茶碗に盛る前に炊き上がった様子を見せていただけます。
おかわりをすると、底のおこげが食べられるというお楽しみも。
炊き方が美味いのか、お米が上等なのか、はたまた両方か―。とにかくウマ~(゜д゜)!!の一言に尽きます。
もち米のような強さと、一緒に炊き込んだ食材の旨みによるしっとり感が同時に楽しめます。
ほんのりと染まった色合いも食欲をそそります(〆なのに)。
さりげなく白身のお魚をほぐしたものが入っているのですが、これがまた控えめにいいアクセントとなっている感じ。
香の物はきゅうりの浅漬けと葉唐辛子の佃煮。
赤出汁が付きます。具はえのき茸。
水菓子
鮮やかな赤が美しい果実はソルダム。
すももの一種なのだそうです。湯剥きし、柔らかくなるまで甘く煮てあります。同じくソルダムの果汁で作ったジュレがかかっています。添えられた葉っぱがハート型で可愛らしい。
お茶
玉露風味の緑茶は冷やしてありました。水菓子の鮮やかな紅色とのコントラストも美しい。最後の最後まで、舌も目も大満足の完璧なディナーでした。
お酒は、乾杯のビールを含めると4種いただきました。
セレクトは全てスティーブ先生にお任せしましたが、京都の軽い口当たりのものから、東北のしっかりした飲み口のものまで、メニューを順番にオーダーしたような…。
ちなみに冷酒はこんな涼しげなガラスの徳利で登場
全て形の異なるミニグラスを持って来て下さいます。
ご主人の向野正彦さんは、長年京都や神戸で茶事に携わってきた経歴の持ち主。お料理には四季折々の旬の食材を彩りも豊かに使い、味覚だけではなく視覚も満足させてくれそうです。
お料理に添えられていた葉っぱ、店内に飾られるお花などもご自身が山で採取したものだそう。
夢窓国師にちなんだ店名には、「窓のむこうには夢がある」という意味も込められているのだそうです。まさに一歩店内へ足を踏み入れれば、夢にいざなう上質な時間(とお料理
)が待っています。給仕を務める奥様は美人で上品だし、居心地は抜群ですよ。
季節の変わり目ごとに繰り返し訪れたいお店。
もちろんオフ会的にも大成功!
最後は皆さんで名刺の交換会となっておりました。スティーブ先生、素晴らしいお店をご紹介いただきありがとうございました
■店舗情報
□12:30~15:00 18:00~22:30
□水曜定休(完全予約制)
□駐車場あり
□藤沢市辻堂神台2-13-13
□0466-34-8018