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家族になった保護猫たちの日常を綴りながら、ノラ猫たちとの共存を模索するブログです。

ノラたちとの共存を目指して 番外編・4 「エサをやるなは殺せと同じ・第3弾(後編)」(特別加入)

2020年08月31日 | シリーズ:ノラたちとの共存を目指して
今回はノラが増えるファクターについての検証です。ネット上でよく見かける「ノラにエサをやると不幸なノラが増えるからやってはならない」という記述。殆どすべての役所、ノラ猫保護団体のHP、ボランティアさんのブログにも書いてある。ノラを増やさないために目の前のノラを犠牲にしろというわけです。実際、「残酷なようだけど仕方のないこと」などとわざわざ添え書きされていたりする。

空腹に耐えかね救いを求める子猫に出会っても無視するというのは、普通の人にとっては"勇気"のいることだ。下手をすれば人間性を崩壊させてまでエサをやってはいけないと言う、その根拠は正当なものだろうか。果たして本当に、ノラが増える要因はエサを与えるからなのだろうか。

前編ではノラの自然増について検証しました。過去に的確な調査がない状況では推論の域を出ないが、ノラの出産回数が環境省のパンフレットほどではないこと(生まない雌も多い)、ノラ幼猫の生存率が低い(推定20%)ことがパンフでは考慮されてないなど、自然増がノラ増加の主要因とするには疑問があった。

人間社会に暮らすノラは野生動物のようにエサを捕る(見つける)ことができず、食物を人間に頼らなければ生きていけない。エサを与えないというのは殺処分同様にむごい仕打ちなのです。ただエサを与えるにしても、余ったエサを片付ける、必要以上にノラを集めないなどマナーを守る必要がある。また、自然増回避よりもそのノラ自身のために、不妊手術を施すことは意味があるとこのブログでも述べてきた。

と、ここまで書いて冒頭指摘した記述をよく読むと、実はエサをやるなとは書いてない。それはれっきとした犯罪(動物愛護法違反)だからです。「無責任なエサやり禁止」といった表現も紛らわしい。公益財団法人どうぶつ基金が提唱する「マナーを守らないエサやりはダメ」か、あるいは「エサをあげるときはきちんと後片付けを」とすべきなのだが、ネット上の殆どの記述がいまだに読み手に誤解を与えていることは残念でならない。

さて、ノラの寿命は短く(平均3~5年と言われている)ボランティアによる保護活動も広がりつつあるのに、ノラの数が減ったという話はあまり聞かない。むしろ局所的には増えたというニュースも目立つが、それらをよく読むと原因は自然増以外にありそうだ。そこで今回は後編として、自然増以外のノラの増加について検証してみます。今回も前編同様、その1(資料編)の補完的後続となります。

本論の前に、全国ノラの数推計についての新情報です。JPFA(ペットフード協会)の昨年度アンケート調査結果では、全国20~79歳の6.3%が平均2.63匹の外猫を世話している。総務省による同年齢人口(H27年)から算出するとその数は1550万匹。東京都や千葉県がまとめた外飼い猫の割合(推定150~270万匹・勝手に全国適用)を差し引いてもかなりの数で、前編でまとめたこれまでの推計値200~1000万匹強を上回る。ただ、同じノラが複数人に世話になっているケースもあるだろうからその分割り引いて考える必要がある。

他にも市単位の調査報告がいくつかあったがいずれも数千匹のレベルだった。傾向として実数測定よりアンケート調査が、また規模が大きいほど多い結果になるようだ。いずれにしてもノラの数は、飼い猫と同じくらいはいると思った方がよさそうだ。

自然増以外のノラ増加要因としては前編やその1(資料編)で述べた通り、
1.家猫の脱走・行方不明、被災による放棄(多頭飼育崩壊による放棄含む)
2.猫捨て
3.ペット業界の闇(商品価値の劣る猫を副産物として遺棄・処分する)
がある。

家猫の脱走についてみると、JPFAの報告では猫飼育世帯数5332000。東京都の調査から平均飼育期間は8年。ネット上のアンケートより3割から5割が脱走された経験があるという。中外飼いやノラを保護して日の浅い場合は9割近い確率で帰ってくるが、完全家猫の場合は不明になってしまう確率が9割以上だそうです。これまで見てきたアンケート調査結果のうち飼育猫中元ノラの比率、中外飼い・外飼いの比率などを考慮して無謀な推計を行うと、年間12万匹ほどが脱走して不明になっているという結果になった。

また、環境省「動物愛護管理行政事務概要」によると、平成30年度の猫引き取り数56404匹のうち18.5%に当たる10450匹が飼主から持ち込まれたものだという。(引き取ったうちの半数以上が殺処分) これは脱走という管理不注意と違い、飼主のモラルが厳しく問われるべきだ。さらに多頭飼育崩壊の苦情件数は2018年の集計で2063件。20から50匹以上とされるがこれは氷山の一角だろう。最近の多頭飼育崩壊では遺棄よりもむしろネグレクトの方が問題となっている。(例:群馬県みなかみ町で猫50匹以上を部屋に閉じ込めたまま放置。凄惨な状況ですべてが餓死していた。)

猫捨てに関しては正直、まったく手がかりとなる調査が見当たらなかった。愛護センター(旧保健所)に持ち込まれる飼い猫の数は前述の通り年間1万匹ほどだが、その1(資料編)でも述べたように、担当者の感覚では実際の捨て猫はその10倍じゃきかないだろうと言っていた。その7割近くが幼齢猫だが幼齢猫の場合、林の奥に捨てられたら誰も気付かずに餓死するだけだ。それだけに隠れた件数がどのくらいあるのか想像もつかない。ノラ増加に影響する成猫の遺棄では、他人の家や地域猫活動の地域に捨てるなど悪質化が問題になっている。

ペット業界に関しては、登録・報告制になった今でもしっかりした集計報告がされてないのは行政の怠慢なのだろうか。しかし朝日新聞の調査では'18年度の猫販売量がほぼ20万匹で、その1(資料編)で述べた'15年度の15万匹から大幅に増えている。報告義務があるせいか流通量もほぼ一致している。この大幅な増加は、JPFAの猫の入手先に関する最新調査でペットショップやブリーダーから購入した比率が増えていることとも一致する。最近の報道ではコロナ下でさらに増える傾向にあり、俄か飼育者のモラルが問題になっているという。

環境省によるとペット業界での猫の売れ残りは流通量の7.1%で、さらに2.5%の流通途中死亡が報告されている。これらを合わせると2万匹近くになるのだが、果たして信用できる数字なのだろうか。先の朝日新聞報道でも登録の容易さや審査調査のないことを問題点として指摘している。実際、隠れブリーダーはかなり存在すると考えた方がよさそうだ。

さらに本ブログだけでなくテレビや雑誌でも幾度となく報道された"引き取り屋"の存在。売れ残りや商品価値のなくなった猫を引き取って、水や食べ物もろくに与えず身動きすらとれない狭いケージに死ぬまで押し込める。あるいは見知らぬ場所に遺棄する。これらは販売量として報告されるか報告外の所業であって、決して表には出ない。つまりどのくらいの量なのか見当もつかない、まさに"闇"の世界なのです。

論じれば論じるほど雲をつかむような話になってしまいましたが、人間の所業によって野に放たれる猫はちょっとした調査だけでも相当量になることがわかります。もし本格的に調査できれば、おそらく自然増に勝るとも劣らないと思えるのです。それらの多くはそう長くは生きられないだろうけど、やさしい人に巡り合って何とか生きながらえている猫も少なくないのでしょう。

もしノラの増加が自然増だけだとしたら、地域猫活動が進んでいる地域ではノラの数が減るはずだ。ノラ保護が進んでいる地域では、バキュームイフェクトを考慮したとしてもやはりノラの数は減るだろう。そうならないのは、人為的にノラを増やしているからに他ならない。「不幸なノラを増やさないために餌をやるな(やらずに見殺しにしろ)」と言うのなら、もっと声を大にして猫を遺棄する人間の悪徳行為を糾弾すべきだ。矛先を間違えるのも甚だしいと思えるのです。

それだけではない。ノラ保護団体やボラさんの中には、殺処分寸前の猫を引き取ったりブリーダーなどが捨てそうになった猫を引き取るケースも少なくない。目の前の命を大切にしたいという気持ちは本当に尊いと思うし頭が下がります。しかしそれが安易な猫捨てやペット業界の闇を結果的に補完しているという現実も見逃せないのです。本来ならその分、本当に助けなければいけないノラたちを救うことができたかもしれないのに。

まったくもって、この世の中はまさに不条理とジレンマばかりだ。でも本当の悪は何なのか、そこからは目を離さないようにしたい。そして少しづつ、虎視眈々と世の中を変えていかなければ、ノラ救済活動が日の目を見ることはないと思えるのです。次回はそのカギを握る人たち、政治家と報道関係者の検証です。

※本記事では環境省、各地方自治体およびJPFAなどの調査結果を参考にしました。
※また本記事は、猫の繁殖力や不妊手術の必要性を否定するものではありません。


オジン、ごくろうさんだけど、ちょっと長すぎるんだニャー

「ノラたちとの共存を目指して」:予告編(期日未定)
その1  資料編「現状と動向調査」(追記:餌やり、地域猫問題) 2017.2.27
その2  現場編「ノラを守るのに理由は要らない」(報道されたボラさんたち) 2017.5.31
その3  エサやり問題・続編「裁判事例の検証・他」(司法が肯定したもの、否定したもの)2017.8.31
その4  一服編「ノラだからこそ・・かわいい!」(ニャー&みう+テンちゃんの日常) 2017.11.30
その5  闘魂編「許さない、虐待に不法投棄に暗闇ビジネス」 2018.4.29
その6  原点回帰編「再確認・人間性とは?」(食肉、動物駆除と保護活動) 2018.8.31
その7  形而上学編「ノラの幸せとは」(シャッポやソトチビの行動に想う)2020.1.31
その8  地域猫問題・続編「殺処分ゼロに向けて」(目的達成のために必要なこと)
その9  理想追求編「殺処分ゼロの先にあるもの」(対等の精神と真の共存)
番外編
番外編1 「罪と罰」(法の実行と刑罰の妥当性) 2019.3.29
番外編2 「動物愛護の精神を問う」(餌やり議論の本質) 2019.10.31
番外編3 「エサをやるなは殺せと同じ・第3弾(前編)」 (特別加入)2020.6.30
番外編4 「エサをやるなは殺せと同じ・第3弾(後編)」 (特別加入)
番外編5 「政治とメディア」(ノラたちの未来を決める人たち)


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