三河は養蚕が盛んだった土地。稲武も戦後しばらく後まで農家の副業として養蚕が行われていました。今では過去のもののとなった養蚕を将来に伝えようと、稲武の古橋会がまゆっこくらぶを立ち上げ、昔通り蚕を育て糸引きを行い、熱田神宮と伊勢神宮への献糸を続けています。
このほど、稲武地区養蚕・製糸文化伝承事業実行委員会が「蚕に関連した商品開発の参加者募集」を始めました。蚕に多大な興味を持つ友人に誘われて応募したところ、無事通過し、「蚕に関連した原材料を使用した新商品開発について開発費上限5万円」を頂けることになりました。
私と友人が選んだ原材料は、桑の葉と蚕紗。蚕紗とは、蚕の糞のことです。調べてみたら蚕の糞は漢方薬として使われており、染めにも使えることがわかりました。桑の葉のほうは、染めのほか、焼き菓子には何度か使ったことがあるし、草の会ではお茶によく使っています。それで、この二つでの商品開発やワークショップ開催に乗り気になってくれそうな友人たち3人にも声をかけて、「蚕紗と桑の葉利用研究会」を立ち上げました。
まず試したのが、蚕紗と桑の葉を使った染め。蚕紗は、まゆっこクラブからいただきました。
絹と綿の両方を、それぞれ媒染剤をかえて、染めてみました。桑の葉と桑しか食べていない蚕紗では、似たような色ではあるのですが、深みが何となく違う。蚕の体内を通って出た蚕紗は、発酵しているということなのか、色がより深い気がします。
2回目の研究会では、エコプリントとも呼ばれて、近年話題になっているバンダルダイを試してみました。みんなで持ち寄ったのは、桑の葉、蚕紗、ツユクサ、百日紅の葉、栗の葉、琉球藍の葉、アカネ、ログウッド、玉ねぎの皮、マリーゴールド、ターメリック、ハックルベリー、クサギの実。ナスの皮など。
シルクと濃染済みの木綿のバンダナに、好きな材料を散らします。
人それぞれに、選ぶ素材や置き場所が違うのが面白い。
布を半分に折って、キッチンペーパーやラップの芯に巻き付けます。そして上から紐でぐるぐる巻きつけます。私はたまたま人からもらった、布端切れをテープ状に巻いた紐があったので、それを使ちょうどいい具合でした。
大鍋にざるを逆さにしておき、水を張ってそこにまたざるを置いて蒸します。1時間近く蒸してみました。
紐をほどいて中の材料を取り除き、水洗いしてから、媒染しました。
上記、右上と左下は鉄媒染、右下と左上、左の布は、アルミ媒染です。
絹も綿も想像以上によく染まりつきました。
茶色の点々が、蚕紗です。地味ですが、あると複雑さが増します。
前回の研究会の折は、生の桑葉の入ったあんこ入りのマフィンと、オートミールのクッキーを焼きました。今回は、道の駅どんぐりの里で売られていた地元産の桑の乾燥葉を、生地に練りこんでピザを焼きました。トッピングは、かぼちゃとトマトと塩ダラ。なかなか美味でした。ただし、仕込み時に桑の葉を控えすぎたので、次回は倍の量、入れることにします。桑の葉茶には、レモングラスを加えました。桑の葉だけでもおいしいのですが、さわやかさがちょっとプラスされた感じ。
次回はシルクのスカーフを蚕紗で染める予定です。
ところで、稲武地区養蚕・製糸文化伝承事業実行委員会は、同時に「シルクパウダーを使用したシルクフードの商品開発参加者」も募集しました。こちらには、稲武の事業者2店舗が参加。私たちも含めて、採用された事業者は、試作した作品の発表や試食会への参加が義務付けられています。
私たちはまず、来月27日のいなぶふれあいまつりで、上に記した桑の葉と蚕紗のシルク染めのパネル展示と、バンダルダイの展示を予定しています。その後、名古屋金山駅で開催のIKO→MAI、稲武の旧道沿いで開かれている雪み街道いなぶでも、展示と桑の葉入りの焼き菓子の試食会を展開することになっています。
なお、バンダルダイに関しては、蚕紗入りではありませんが、11月6日(水)に、石窯ピザ&バンダルダイの会をどんぐり工房で開きます。こちらは追って告知いたします。お問い合わせは、問い合わせメールにてどうぞ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます