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直訳すれば「平和の解剖学:心的葛藤を解く」とでも訳すべき著
書“The Anatomy of Peace: Resolving the Heart of Conflict”
が「2日で人生が変わる「箱」の法則」というタイトルで邦訳
されている。私が注目したのは、登場人物に「あなたは、自分自
身の敵になっている ( you have become your own enemy)」と語
らせている箇所があるからであった。
これは宗教社会学者ロバート・ベラーが「戦っているうちに、敵
に似てしまったという意味で、我々(アメリカ人)も敗北したの
ではないか」と語ったのを想起させる。ウォーナーは「極東ブロ
グ」の主宰者によれば、「人々の心の葛藤が敵対心を生み出すそ
のプロセスを平和=平安の視点から解剖学的に見ていく、という
哲学的な枠組み」で、行き着いた思想を登場人物の対話によって
展開している。
「あなたは自分自身の敵になっている」というのは逆説的でわか
りにくい。文脈は、黒人暴動を見ている二人の人物が言葉を交わ
す中で出てくるもので、ある教授にパレスチナ人が私は虐げられ
た黒人が催涙弾で散らされるのに同情できる、身を挺してでも催
涙ガスをとどめたい、と言ったときにこの教授が口にする。
このアリッグ教授はパレスチナ難民のユースフに説明する。
「他者を人として見るようになると、人種、民族、宗教などに関
わる問題もそれまでと違って見えたり、感じられたりするように
なる。つまり、希望や夢や恐れを抱いている人々、それにきみ自
身と同じように自己正当化している人々も見えてくるはずだ。虐
げられているグループは、自分たちが虐げる側にならないように
気をつけなければいけない。それは陥りやすい罠だよ。過去の虐
待という正当化の手段が手元にあるわけだから。不正をなくそう
としている人々の大半は、自分がこうむったと思っている不正の
ことしか考えないからね。つまり、彼らが本当に関心があるのは
不正ではなく、彼ら自身のことだよ。自己中心の考え方を、表向
きの大義の陰に隠しているのだ。」
短い文では、原著はもちろん、極東ブログ氏の書評の重みも十分
伝えられない。詳しくは下のsourceを読んでいただきたい。なお、
極東氏はテリー・ウォーナーについて「モルモン教徒であること
の積極的な解体として彼の思想・活動の展開があるのだろうか」
と述べている。
Source:
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2008/03/post_1b39.html
三浦俊章「宗教社会学者ロバート・ベラー氏に聞く」朝日新聞 2002/9/24
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