モルモニズムの情報源、主要な主題を扱うサイト。目次を最新月1日に置きます。カテゴリー、本ブログ左下の検索も利用ください。
NJWindow(J)



モルモン教会の特性(3)

ヨーロッパの人類学者がモルモン教会にアフリカの部族
的特徴を見、そのデゼレト部族がアメリカのコロニーと
なり、更にコロニーからコロナイザー(植民地化する者)
に変っている現状を鋭く分析している。

モルモン教会の部族的性格
オランダの教会員であるウオルター・E・A・ヴァン・
ビーク教授は、内陸の奥地に隔絶されて独特の宗旨のも
とに暮らしていたモルモン教徒を、密接な親族関係を基
盤とし部外者を警戒し排除してきた歴史から、アフリカ
の部族(tribe)に類似するところがある、と言う。そして
一夫多妻も類似点の一つに数えている。

部族 → アメリカのコロニー → コロナイザー
19世紀に部族的特性が顕著であったこの団体は、20世紀
初めアメリカに包含され馴化されて米のコロニーと化した。
多妻制を放棄し、取り囲む広い社会に同化し、アメリカ化
していった。それが年月を経て力をつけてくると、今度は
コロニーであった立場からコロナイズする立場に変ってい
く。外国に宣教団を送って、いわば外国にコロニーを得て
いるからである。

大都市 : 衛星都市
この関係をヴァン・ビークは支配権を持つ大都市とそれに
依存する衛星都市の関係と比較する。アフリカの国々は独
立しても多くが経済、教育、技術、医療など多くの分野で
元宗主国に依存せざるを得ず、実質ネオコロニーの状態で
ある。衛星都市(米以外の国の教会)も同様の状況に置か
れているとみる。

米国教会本部:各国に存在する教会(周辺地域)
方針、指導の流れは本部→周辺の一方向で、伝道部長、地
域会長会の派遣、財政面の管理分配は、colonizer / colonized
のヒエラルキーそのものである。周辺ではコロナイザーの
文化を無批判に採用するしかなく、成長、自律は期待され
ても自立独立は認められない。アフリカのコロニーと同じ
なのである。国際的になった教会は遠心的な作用を警戒し
中央集権的な性格を強化している、とヴァン・ビークは観
察する。

アメリカではモルモン教会は5番目に大きな教会となり、
世界最大の国で主要な勢力の一つと見なされていて、周辺
地域の教会とは事情が大きく異なっている。アメリカでは
宗派(denomination)であり、周辺ではセクトの状態である
と見る。外国のモルモン教徒は周囲の文化とは異なる信条
のもとに生きるため緊張の中に暮らしていくことを免れな
いからである。

以上、要約を試みたが原文を読んだときのインパクトが伝
わるかどうか不安である。要するに著者は教会がコロナイ
ザーの性格を強く持っていることを批判的に鋭く指摘し教
会の姿を浮き彫りにしている。2年前ソルトレークシティ
ーで開かれたモルモン歴史学会で氏の発表を聞いたが、優
れた人類学者の講義を聞く思いで強い感銘を受けたのを覚
えている。

なお、氏は現在、教会がアメリカの教会であることがヨーロ
ッパでマイナスに作用している、という。これは日本でも
同じであろうと私は見ている。

Source:
ダイアログ誌2005年冬季号Walter E. A. van Beek「モル
モン教徒であるヨーロッパ人?それともヨーロッパ的モル
モン?宗教的植民地化をアフリカ・ヨーロッパ的視点から
見る」pp. 3 -36

類似した記事
当ブログ 2012/08/28 改めて痛感!日本のLDS教会は米LDS教会の一部であるという姿

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



« 外国志向でセ... モルモン教関... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。