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Richard Cizik (サイジック) 戦士の異名を持つ
1月16日同志社大学で「アメリカの福音派にいま何が起こっているのか?水面下で進む大変化について」を聞いて、アメリカで大きな影響力を持つ福音派に一大変化が生じつつあることを知って驚いた。アメリカの福音派と聞くと南部の保守的で原理主義的なキリスト教を思い浮かべていたが、現在福音派の中に新しい視点から社会に働きかけようとする世代が登場していることを知った。
確かに現在も福音派と言えば、原理主義的で聖書の直解主義に留まり科学と対決して、大きな変貌を遂げる世界を前にますます終末論的にキリストの再臨を待望するばかりで、自分たちにできることはない、とする守旧派が存在する。また、その対極には信仰や宗教の意義を認めない無神論が普及している。新しい福音派はこの両極の間にあって、世界や地球の現状と将来に「われわれにも責任がある」という当事者感覚を持つ「理性あるクリスチャン」である、という。
旧来の福音派は反中絶・反同性愛を前面に道徳面から政治に関与し、多大な影響力を行使してきた。徹底して共和党支持にまわり、ブッシュを支えてきた。それに対し、最近の福音派は社会的福音の方向に向かい、環境保全に深い関心を寄せ(全人類の福利に関わる)、核不拡散に真剣に注目する(テロリストの手に渡ることを防ぐ)と言う。宗教者として為政者に声を伝え影響力を及ぼしていこうとしている。Cizik氏は大統領と懇談会などの場で言葉を交わせる立場にあるという。
現在重要な諸案件で懸念を抱くアメリカはいわば岐路に立っており、国も人々も転換の必要に迫られている。思考、認識、行動において変革していかなければならない。福音派はその点で世代間・文化面で分裂という大問題に直面している。現在アメリカの福音派は生まれ変わらなければならない、と言う。彼は宗教間対話を推進しようとしていることが窺えた。しかし、実際は彼のような新しい福音派は20%である、ということを知った。この日、会場は満席で人々の関心の高さを示していた。
参考:
講演 Richard Cizik, “What’s Happening to American Evangelicals: Are There Big Changes Underway?” 司会森孝一教授。同志社大学 一神教学際研究センター (CISMOR) 主催。於 同志社大学今出川キャンパス クラーク記念館 礼拝堂。
話しを聞くと、10年前から、福音派キリスト教会への礼拝出席者数が減り続け、911同時多発テロの影響で、イスラム教に改宗するクリスチャンが増えてきているからです。
クリスチャン人口減少化の原因の一つが、過激な政治活動であり、これが多くのアメリカ人に受け入れなくなり、アメリカの福音派も危機感を感じて、多くの人が受け入れられる方向へ改革したのではないかと思います。
僕も教会に深く根ざして生きている人間の一人として、Cizik氏の決断には勇気とそして信仰が必要だったと想像出来ます。
なおかつ影響力を失っていない。米国とくに福音派にとっては預言者的(祭司的な権威に対して)な貴重な存在なのが理解できます。
>命ですね。
でも「動物園」の語源だったとは知りませんでした。
(勉強不足!)
私はCizik氏のような動きを歓迎したいと思っています。宗教(宗派)間対話は必要でこれからの世界で大切なことであると思います。差異はなくなることなく可能であると見ますが、違いや関係が和らぐことになることが予想されます。
行動的で誠実な人柄をアピールしたいのでしょう。人々を説得し変革したい思いが伝わってきます。
ただそれ(社会的福音、宗教間対話)は他の伝統的なキリスト教との差異を失うだけにはならないでしょうか。それは福音派の宗教的熱狂を失うことにはなるのではないでしょうか。西欧の世俗化が遅れてやって来たのか、それとも新しい展開と言える違いがあるのか。「理性」と「熱狂」がごちゃ混ぜな私たちモルモンにとっても人事ではない気がします。