ブリガムヤング大学で他宗との対話・学術交流を託され、一時
代を築き後進に道を開いた元教授(哲学博士)が5月28日(木)プ
ロボで亡くなった。享年82歳。
キリスト教間の理解を深めることを目的に設けられたリチャード・
L・エバンズ講座担当教授に任命され、モルモン関連のテーマにつ
いて招待されれば他大学に赴き、客員教授としても役割を果たし
た。(80-90大学に及んだ。’81年12月現在。)また、BYUに他宗
(教)の権威を招き講演会やシンポジウムを開催した。私は留学中
彼が主宰した講演会などに何度か出席したことがある。復元教会の
歴史家と末日聖徒の歴史家レナード・アリントンを招いてシンポジ
ウムを開いたことは歴史的な意義のある催しであった。私事になる
がこのような学ぶ機会に浴することは専攻の学業(言語学)を修め
ることにもまさって、私の関心をひき楽しみとしていたことであっ
た。
「モルモ二ズムはユダヤ教とキリスト教の流れをくむ宗教である」
というのが彼の持論で、モルモン書を真正の認証され得る聖書偽典
と位置づけたのが記憶される。彼の在職当時ヒュー・二ブレーも
BYUにあってモルモ二ズムを知的に研究する機運が高まり、いわば
黄金時代であったと言えるのではないか、と私は考えている。
彼の功績で最大と言えるものは、1978年キリスト教の著名な神学
者を多数招いてBYUでシンポジウムを開催し、論文集「モルモ二ズ
ム考察 -- ユダヤ・キリスト教との類似」を刊行したことである。
後にBYUのエルサレムセンター(近東学)の所長を務めている。
Source:
Salt Lake Tribune Updated: 05/28/2009 06:09:08 PM MDT
Lucinda A. Barnhurst, “Truman Madsen: Modern Defender of
the Faith,” BYU Today, December 1981.
Truman G. Madsen, ed., “Reflections on Mormonism: Judaeo-
Christian Parallells” Religious Studies Center, Brigham
Young University 1978
[付]
"Revelation, Reason, and Faith: Essays in Honor of Truman G. Madsen"
EXCERPT: Donald W. Parry, Daniel C. Peterson, and Stephen D. Ricks (Editors), Provo, Utah: Foundation for Ancient Research & Mormon Studies (FARMS), 2002, 6.5x9" hardbound, 800+ pages.
The distinguished career of Truman G. Madsen has earned him wide respect in and outside of LDS circles as an outstanding teacher, scholar, researcher, speaker, university administrator, church leader, and religious ambassador. With the publication of Revelation, Reason, and Faith: Essays in Honor of Truman G. Madsen, the Institute pays tribute to this remarkable man whose many accomplishments include helping to advance Book of Mormon scholarship and related interests of the Institute.
Edited by Donald W. Parry, Daniel C. Peterson, and Stephen D. Ricks (each of whom also author a chapter), the 800-plus-page volume contains contributions by 31 scholars, 10 of whom are not Latter-day Saints, reflecting the wide appeal of Madsen's academic work and influence. The non-LDS contributors include the noted biblical scholars David Noel Freedman, James H. Charlesworth, and Jacob Milgrom. The book is organized into five sections: "Philosophy and Theology," "LDS Scripture and Theology," "Joseph Smith and LDS Church History," "Judaism," and "The Temple."
Chapters include:
PHILOSOPHY AND THEOLOGY:
1. William James on Religion and God: An Introduction to The Varieties of Religious Experience, Gerald Bradford
2. Jesus Research and the Appearance of Psychobiography, James Charlesworth
3. Room to Talk: Reason's Need for Faith, James Faulconer
4. The Mind's Road to Fulfillment, Self-Realization, and Experiential Knowledge: Some Tagorean Views, Guttorm Floistad
5. The Utility of Faith Reconsidered, Louis Midgley
6. The Spirituality of Love: Kierkegaard on Faith's Transforming Power, Terry Warner
LDS SCRIPTURE AND THEOLOGY:
7. "Jesus, the Very Thought of Thee": Understanding the Christ of the Restoration and the Reformation, Gary Gillum
8. Sin, Suffering, and Soul-Making: Joseph Smith on the Problem of Evil, David L. Paulsen and Blake Ostler
9. On the Motif of the Weeping God in Moses 7, Daniel Peterson
10. Ancient Views of Creation and the Doctrine of Creation ex Nihilo, Stephen Ricks
11. Genesis 15 in Light of the Restoration, David Seely
12. Joseph Smith Vindicated Again: Enoch, Moses 7:48, and Apocryphal Sources, Andrew Skinner
13. The Higher and Lesser Laws, John Tvedtnes
JOSEPH SMITH AND LDS CHURCH HISTORY:
14. Mormon Catechisms, Davis Bitton
15. The Theology of Councils, Richard Bushman
16. The Refractory Abner Cole, Andrew Hedges
17. The Martyrdom: Joseph and Hyrum Smith as Testators, Daniel McKinlay
18. Placing the Keystone: George Q. Cannon's Mission of Translating and Printing the Book of Mormon in the Hawaiian Language, David Whittaker
JUDAISM
19. The Mystical Denial of Language, Joseph Dan
20. The Book of Job as a Biblical "Guide of the Perplexed," Raphael Jospe
21. Salvation and Redemption in the Judaic Tradition, David Rosen
22. A Simhat Torah Practice and the Ephraimite Tradition, Seth Ward
THE TEMPLE
23. The Temple in Luke and Acts, S. Kent Brown
24. The Dome of the Rock, David Freedman and Rebecca Frey
25. Fundamentals of Temple Ideology from Eastern Traditions, John Lundquist
26. "His Hand Is Stretched Out Still": The Lord's Eternal Covenant of Mercy, Ann Madsen
27. Rationales Are Theology in the Holiness Code, Jacob Milgrom
28. Who Shall Ascend into the Mountain of the Lord?: Three Biblical Temple Entrance Hymns, Donald W. Parry
29. Temple and Temples: Some Linguistic Reflections, R.J. Werblowsky
LINK: FAIR LDS Bookstore - Revelation, Reason, and Faith: Essays in Honor of Truman G. Madsen
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"Moving Forward...together!" - ישוע הוא המשיח
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ここでいう「真正」とはどのような意味ですか?
歴史性はないけれども聖典として読みえるという意味でしょうか?
「著者名を偽った書物」という「偽典」の言葉の意味を考えればそうなります。
それとも新約・旧約に含まれていないという意味でしょうか。
この文章をそのまま解釈すると
モルモン書は間違いなく「聖書偽典」です。
になりますけど・・・??
偽典の特性とは、1)これまでに啓示されている以上に知りたいという啓示への渇望から情報が充足される(NTでは処女降誕やイエスの誕生についてルカが第一歩を踏み出し、マタイもイエスの出生について試みている。ステンダール)、あるいは伝えたいメッセージがあって、2)権威づけるため古代の偉大な人物の名を借りる(OT外典偽典でエノク、モーセ、ダニエル、バラクの名が用いられている。プライス)という点があげられます。
旧新約正典の中にも多くが偽典の性格を具えていて、モルモン書もその意味で聖典と看做すべきで、真面目に取り組むべき書物である、と言う意味で言われたものです。
モルモンフォーラム19号18-19ページを参照してください。ステンダールの記事、プライスの記事(このブログ '06/3/1の書き込み)もよく説明しています。
モルモン教会では、聖書もモルモン書も「神のみ言葉」と考え、特にモルモン書はかつては「完全な書物」とまで言っていました。
つまりモルモン書が「偽典」で有るなど、モルモン教会としてはとても認める事の出来ない、とんでもない話なんですね。
トルーマン・G・マドセン 元教授も、NJさんも、学者としての見地から、モルモン書と教義を分析し、モルモン教会が主張するような、「完全な書物」「預言者ジョセフが神の啓示により翻訳した 」ものではないと認めた。しかし、モルモン教会擁護の為に「偽典」と言う救済策を考えた。
と私は分析します。
これは、学者としての立場と、教会員である立場を両立させる為の、苦肉の策であり、又同時に、モルモン書を「科学の検証」から守る為の数少ない選択肢で有ると思います。
しかしながら、当のモルモン教会はそれを認める可能性は今のところ無いでしょう。
「信仰」と「事実」の整合性をどう取るのか?これはモルモンだけでなく、多くの宗教の問題かと思いますね。特に、唯一神信仰、絶対者信仰を基本とする宗教ではね。
BofMを偽典とみなすことは確かに教会員にとって抵抗感があると思います。しかし、柔軟な考えができ聖書学の知識を得ていく人であれば、少しづつ受け入れ始めているのではないか、と思います。(6/1の私のレスの意味で。)
大豚さんの分析。分析はそれぞれ、お任せいたします。ただ、聖書の原語による解説や批判神学は進めば進むほど教派の違いを越えて共通してくるという印象を持っています。誰かが独占するということはない世界に入っていきます。何かを守る、両立させる、というような配慮は超越して、宗教を客観的に見ている、学問的真理探究の土俵に立っている、と感じます。(時に聴衆を意識して言葉を選んで表現することはあっても。たとえば、プライスは初め福音派の信徒でしたが最先端の批判神学者に変わっていきました。ダイアログの読者[会員]は抵抗感なく読むことができる人が増えていると思います。)
>「モルモン書を真正の認証され得る聖書偽典と位置づけた」の典拠を教えていただけると嬉しいです。
真正(genuine)偽典という表現は今手もとにあるのではBYUToday(April 1979) のReflections on Mormonism の書評ページに見えますが、マドセン自身も時折使用していたと記憶しています。
(「認証され得る」は私が追加した言葉です。)
Reflections 所収クリスター・ステンダールの「山上の垂訓と第三ニーファイ」が読み応えがあります。線を引いたりしていますが、よろしかったらコピーをお送りしましょうか。
よろしいのですか?
頂けたらとても嬉しいです。
住所をメールすれば宜しいでしょうか。
貴重な資料をありがとうございます。