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聖書協会共同訳(2018年末刊行予定)の特徴 - - 飯謙氏講演より

2018-04-19 00:00:40 | 聖書

 

410日大阪クリスチャンセンター(玉造)で開かれた懇談会「どんな翻訳になるのですか? - - 新しい聖書の特徴」に出席した。そこで講演「聖書協会共同訳 ‐‐聖書翻訳から啓(ひら)かれたこと」を聞いた。講師は神戸女学院院長、飯謙(いいけん)教授。1年前にも同様の講演会に出たが、改めてここにこの会で聞いたことの要旨を紹介したい。

聖書翻訳は16世紀のルター以降、直訳・逐語訳形式的対応)で20世紀中頃まで推移した(「改訂標準訳」や「口語訳」などまで)が、直訳の限界に気づいて意訳を取り入れる方向に向かうことになる。言語学者ユージン・ナイダの「動的等価性」の影響を受けて、「共同訳」や幾種類もの現代口語訳(特に英語)が出現するに至った。(実際には「共同訳」(新約)は短命で、他の試み、講談社版もあまり知られていない)。

意訳は訳者間で理解に差があって、聖書翻訳に少しバラけた様相が生じたと言えるかもしれない。講師は翻訳理論の機械的な運用の陥穽(かんせい、おとしあな)がもたらしたものと言う。

そこで、目的や役割を絞った考え方(「スコポス理論」に基づく)に立ち、礼拝で朗読される聖書を世に送るのが今回の方針である。初めから翻訳者と日本語担当者が組んで訳文を作成したことが大きな特徴である。

聖書翻訳に新しい版が出るという背景には、前の翻訳(日本では1987年の新共同訳)から年月がたって言語が変化していること、歴史批評的聖書学、写本研究(新しい底本が刊行されている)、考古学で新しく得られた知見を反映することがある。

紹介された変更例を二三あげると、神格者が「お前」という言葉を使うのは品格的にそぐわないので避ける、「酵母を入れない」は酵母が知られるようになったのは近代であるので「種入れぬ」パンに、マタイ8:15「もてなす」は「仕える」になど。

日本の聖書翻訳の水準は暫く前から大変高くなっている。60-70歳以下の60人からなる翻訳者が担当するこの度の聖書翻訳を私沼野は楽しみにしている。新しく担当する人が多いという。末日聖徒はこの翻訳を合わせて読むことによって大いに聖書の理解が深まり愛着も深まるものと確信している。



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7 コメント

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玉造 ()
2018-04-20 16:16:17
玉造と言えば、カソリックの大聖堂にパイプオルガンを何度か聞きに行きましたが、同じところなんでしょうか?


何事も翻訳や解説に頼らないと、自分だけでは理解できないので、翻訳する人が居ることは有り難いですね。

翻訳を読んでるので、一言一句の意味を追求するのもどうかとは思いつつ、つい言葉に拘ってしまうものですね。

なかなか難しいものです。
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Unknown (Unknown)
2018-04-23 12:17:22
未だに口語訳聖書を使ってるのはモルモンくらいじゃないですか?
もう60前の2、3世代前の聖書を使い続けるのはどうなんでしょ?
廃盤になったらどうする気かなぁ・・・モルモン幹部ってそんなこと何にも考えてなさそうだし
まぁ私は夏から始まる予約申し込みするつもりですけれど
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遅いレス(いつもながら失礼しています) (NJ)
2018-04-23 23:04:53
豚さん、玉造のカトリック教会のすぐ近くにある別の建物です。同じ道に面して200mほど南にあります。

最近の日本語訳聖書は優れた翻訳ですので、信頼して読めると思います。訳によって違いが出るのは、直訳的か意訳的か、誰を読者と想定しているかなど、方針による違いが出てくるのだと思います。後から出るものほどよいという点もあります。

Unknownさん、LDS教会が欽定訳、口語訳に固執するのは便宜上の問題(変更を受け入れると、かなりの教義上の用語・概念に変更・説明を求められ、面倒であるためと思われます。事実、深刻な問題)が背後に横たわっているためです。
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Unknown (Unknown)
2018-04-24 01:02:56
LDS教会が口語訳聖書を使い続ける理由(個人的考察)

●著作権が切れパブリックドメイン化している。
したがってわずらわしい手続きなしに自由に引用、転載できる点。ただし本来は聖書を翻訳、提供した方々の業績にリスペクトすべきであるがそうした意識が末日聖徒にあるかどうかは不明。

●アメリカ、ユタ州で使用しているKJVと章・節の分割が同じ(たぶん)
新共同訳聖書は口語訳との底本の相違などから若干の相違がある。このためKJVに基づく教会幹部や教材の聖句引用との間にずれが生じない口語訳のほうが便利。

●そもそも聖書翻訳の意義を理解していない

ところで LDS聖書研究会なるグループの方々はこのあたりの情報もしっかり押さえられていらっしゃるのでしょうか?
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行き着くところKJVの問題 (NJ)
2018-04-25 23:06:29
Unknown さん、

・聖書の自由な、大幅な引用は著作権の問題が生じるようには思っていませんでした。多分、問題ないのでしょう。今後、注意してみますけれど。
 引用に当たり credit を帰する、つまりレスペクトする、はいちいち断っていなくても、していると受けとめています。

・口語訳と新共同訳を考えた場合、KJVとの章節の一致は調べたことがないので、答えられませんが、伝道再開時口語訳がほぼ唯一の日本語聖書だったという単純な理由だったのだろうと思います。
 本当は口語訳は死海写本などによる新しい底本によっていて、lds教会が好まない進歩的な考え方に偏って見えたものと推測しています。むしろ1970年に出た新改訳の方が福音主義的で相性がよかったはずです。

・>聖書翻訳の意義を理解していない
については、教会がKJVの文言に拘束されている格好なため、他の翻訳を使用することができないでいる、のが実情だと思います。英語圏以外の教会員から始めて、KJVから解放されることが大切ではないかと考えています。

Facebook 上のLDS聖書研究グループは、残念ながら学ぶ気持ちから加入したものの、保守的傾向から離れられない人びとが大部分で、スムーズな話し合いが展開できない状態です。  
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Unknown (Unknown)
2018-04-26 07:51:11
NJさん

丁寧なお返事ありがとうございます。口語訳と新共同訳における章・節分割の相違は日曜学校のレッスンの準備のために民数記を調べていて知りました。日本聖書協会のHPに対照表がありました。

KJVについては、近年の聖書学から明らかになったKJV特有の間違いがモルモン書に反映されているという点に、教会員たちが気づかないようにしたいがために拘っているのかなと思ったりしています。

できれば今年の研究発表会に参加したいと思っておりますが、LDS聖書研究グループの方々には聖書そのものをよく研究してほしいですね。聖書に関する教会幹部の発言やモルモン教義とのすり合わせを研究するのではなく。
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神は翻訳された聖典の言葉で語る。 (オムナイ)
2018-04-27 12:53:07
>講演「聖書協会共同訳 ‐‐聖書翻訳から啓(ひら)かれたこと」

懇談会参加レポート興味深く読みました。

>神格者が「お前」という言葉を使うのは品格的にそぐわないので避ける

戦後すぐに改宗した先輩モルモンは文語訳の聖書に慣れ親しんでいたようで、「これらのいと小さき者の一人に為したるは即ち我に為したるなり。」的に暗唱する場面に遭遇します。

教義と誓約やモルモン経の言葉も未だに古い文体の方がしっくり来ます。

逆に新しい翻訳によって新たな神様の言葉の意味を悟ということもある気がします。

古今の又新しい翻訳者に感謝感謝です。
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