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「シオン」という語の意味の変遷

2013-12-13 17:33:18 | 聖書
ヘブライ語の読みは「ツィヨーン」

末日聖徒はシオンという言葉をよく耳にする。「シオンのステーク」とか教会歴史でミズーリ州ジャクソン郡インディペンデンスがシオンと呼ばれたことなど。日曜学校福音の教義クラス46課でシオンについて学ぶのを機に、シオンという語の意味がどのように変遷してきたかをたどってみた。

 [シオン山の上にあるエルサレム 1836年 G. Balmar画]

まず、始まりはダビデがエブス人の要害の地を陥れて手に入れた時にさかのぼる。砦となっていた丘陵の南西部の高い部分で、シオンと呼ばれ「ダビデの町」と称されるようになった(サム下5:7)。後のエルサレムである。それでエルサレムの町がシオンと呼ばれることになった。また、その住民もシオンと呼ばれた(イザヤ 1:27)。

「 ダビデはシオンの要害を陥れた。これがダビデの町である。」(サム下 5:7)
「主の教えはシオンから
御言葉はエルサレムから出る。」(イザヤ 2:3。 対句の修辞法で、シオンとエルサレムが同じものを指し別の表現で表わされていることが分かる。)

またシオンがエルサレムの住民を指す場合、詩的に「シオンの娘」と表現されることがある。「捕われたエルサレムよ、あなたの身からちりを振り落とせ、起きよ。捕われたシオンの娘よ、あなたの首のなわを解きすてよ」(イザヤ52:2 口語訳。ヘブライ語「娘」は単数)など。

ただこの後半部分、シオンと娘を同格にとらえて、「首の縄目を解け、捕らわれの娘シオンよ」(新共同訳)と訳す聖書もある。 (他に関根正雄訳、新改訂標準[NRSV]訳、漢訳聖書。ヘブライ語文法にその見方がある)。町を擬人化して観る解釈である。私はこの解釈が自然に思われる。

新約聖書では、シオンという言葉による直接の言及はないが、使徒行伝2:44, 4:32, 15:9などに信じた者は心を清め、心を一つにしていっさいの物を共有したという理想の共同体が描かれている。また、黙示録に将来新エルサレムが天から下る様子が描かれている(21:2)。これは「エルサレム」と同義であったシオンが、理想化された神の町シオンに変容したものと考えられる。

新約後、放浪のユダヤ人は毎年過ぎ越しの祭りを祝う時、「来年こそエルサレム(=シオン)で」という合言葉で別れたので、彼らの願望と運動がシオニズム運動と称された。

他方、19世紀に生まれた末日聖徒は待望する神の町がミズーリ州ジャクソン郡インディペンデンスに実現されると信じ、シオンはこの町を指し、またその後聖徒の集合地を指すようになった(教義と聖約57:2)。そして更にシオンとは「心の清い者」(同97:21)を指すと諭された。ジャクソン郡を去るよう迫られた迫害下の聖徒たちを慰めるものだったのだろう。

なお、末日聖徒は旧約聖書のエノク(創世5:21-24)を敷衍拡張した、69節に及ぶ啓示を所有している(高価な真珠、モーセ書7章)。エノクの町の民は心を一つにし、義の中に住んで貧しい者はひとりもいなかった。この町はシオンと呼ばれ、天に取り上げられた、と伝えられる。

これは現在の信仰や理解を遠い過去に遡って、その概念や呼称を適用する例のひとつである。いずれにしても、初めダビデが拠点とした町エルサレムがシオンと呼ばれたのが、時間の経過とともに「理想化された神の町」を意味するようになり、抽象化、普遍化の道をたどってきた言葉である。




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3 コメント

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なに教? ()
2013-12-16 19:52:21
そう考えてみると、モルモンはキリスト教よりユダヤ教に近いのかもしれませんね。

戒律重視、儀式重視、シオン願望、同族主義的
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Unknown (名無しの教会員)
2013-12-17 02:01:25
つい最近に“モルモン教の指導者、ホームレスに変装して心を説く”でアメーバニュースに書いてありました。

私は、これを読んで、聖典に書かれている言葉を幾つかを思い出しました。

慈愛と慈悲の心、これが律法で一番大切なことではないでしょうか。そしてこれが、シオンの原点だと私はそう思います。。お互いに裁かないようにすることも大切なのかもしれませんね。


あまり指導者が管理することに時間をかけすぎてしまうのはよろしくはないでしょう。また豚さんのおっしゃることも理解できます。



このアメーバニュースを読んで見るといいですよ。実際は、ロイター通信の記事だったと思いますが。
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シオンの原点? ()
2013-12-17 13:16:07
私は、シオンの原点は、主とアブラハムがかわした「約束の地」の契約だと思います。

旧約聖書の原像は、イスラエルの民の「土地取得伝承」だと、山形孝夫氏は「聖書の起源」に書いています。

この本の中で、まず、カインとアベルの物語が出てきます。農耕民のカインと遊牧民のアベルが神に捧げものをします。神は、遊牧民のアベルの捧げ物だけを心に止めます。

この記述だけを見ても、旧約聖書が「遊牧民の書物」である事が分かります。
カルデヤのウルの地を出たアブラハムの父テラとその家族は、カナンの地へ向かい、約1000年後のヨシュアになって、やっと定住の地を得ます。
その象徴が「シオン」です。

シオンとその周辺の地を得る為に、イスラエルの民は、その地の定住民を惨殺します。
神は、女性と子供を生かしておいた事にまで怒り、抹殺する事を求めます。

シオンはイスラエルの民が、苦難の末にたどり着き、血と殺戮によって手にした土地です。これが歴史的な事実かどうかは分かりませんが、少なくとも聖書にはそう書いて有ります。

私には、「シオン」と「慈悲や慈愛」が結びつきません。

いまだにイスラエルは、カナンのパレスチナ(ペリシテ)の人々を苦しめています。

もういい加減に、神の約束を言い訳にした争いは止めて欲しいものです。
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