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薛恩峰(せつおんほう)「現代中国におけるキリスト教 無神論社会を生きるクリスチャン」を聞いて

2011-08-30 09:48:13 | 中国、中国のキリスト教
8月27日 同志社大学今出川キャンパス(神学館3階礼拝堂)で開催された講演会に出席した。主催は同志社大学一神教学際研究センター(CISMOR)。中国で牧師の家に生まれ、同志社に留学した薛恩峰氏は2007年「原典現代中国キリスト教資料集」を監修、出版している。


薛恩峰(xue1en1feng1)牧師     - - - - - - - - -

薛恩峰(せつおんほう)「現代中国におけるキリスト教 無神論社会を生きるクリスチャン」を聞いて。(主宰者 同志社大学一神教学際研究センターに提出した感想)

原典現代中国キリスト教史料集を買って読んでいたので、編集者の薛恩峰先生に直接会って講演を聞く機会を得て、大変嬉しく思った。史料集は三分の一弱読んでいるが、書物では得られないものを講演によって得、気付かなかった点を幾つも知らされた。この企画に感謝いたします。

本文700頁に及ぶ資料集に対し、俯瞰を得られる講演であった。また、書物と違って口頭で語られる説明は分かりやすく、幾つかの大事な局面が生き生きと私の頭の中で整理された。

1、中国におけるキリスト教会存亡の重大危機にあって呉躍宗の果たした役割が大きかったこと、同時期周恩来も信教の自由を踏まえた政府側の見解を提示し、両者の働きが相俟って今日のキリスト教会があること。

2、キリスト教会にとって困難な二つの時期に言及された。一つは中国のキリスト教会が歩みを始めて間もない1950年代初め朝鮮戦争が勃発し、米中が対立し敵対関係が先鋭化した時期。この時中国の教会は三つの点で自立を求められた。もう一つは1966年から11年続いた文化大革命で酷い破壊・弾圧を受けた時期。このような危機を忍んで存続する過程で各教派は合同し、教派が存在しなくなったという説明に注目した。
 薛師の父親が牧師であった咸陽教会の被った苦難と立ち直るに至った話は、一つの典型的なケースとして理解を深める貴重な証言であった。

3、今日のキリスト教ブームの理由。① 改革・開放以来、人々の知的欲求が高まり、情報を求めてキリスト教に向かったという側面がある。 ② 1980年以来、人々を生まれてからずっと管理・世話してきた「単位」と呼ばれる組織がばらけてしまって、人々はほり出され疎外感に直面することになった。教会はその隙を埋める形となった。この②の説明は大変興味ある重要な指摘であると思った。

終わりに薛講師は、複眼の視点を持つことの必要性を、また、流動的で変動のただ中にある中国や中国のキリスト教会を、「外から批判するのは易しい、しかし、中国の人々の現状や苦難に寄り添う形で臨む」自分でありたいと淡々と語ったのが印象に残った。

大変収穫の多い講演会で、出席してよかったと喜んでいます。

参考
本ブログ 2010/02/09 「原典現代中国キリスト教資料集」を手にして

武重直人「中国改革・開放政策による民衆の価値意識変容 - - 都市部におけるプロテスタンティズム受容実態からみた脱イデオロギー化の様相」1999年修士論文 (早稲田大学大学院アジア太平洋研究科)[なお、武重氏は別のところで「単位」の消滅についても扱っている。]
 


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2 コメント

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客観的な眼差しを可能にするもの (ZOO)
2011-08-31 18:32:37
NJさんが中国で接してきたクリスチャンは概ね聖書を字義通りに解釈する福音派的な信仰の方々だったと思います。
薛恩峰氏の説明は、何かそことは距離が感じられるものでした。
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補足 (NJ)
2011-08-31 21:05:13
そのような印象を与えましたか。実際は「概ね聖書を字義通りに解釈する福音派的な信仰の方々」で間違いないと思います。

そのような印象を与えたとすれば、牧師である薛恩峰氏は研究者でもありますから、例えばキリスト教に人々が惹かれる理由を説明した部分などで「距離」が感じられたのかもしれません。

しかし、彼は次のようにも言っていました。教会で「誰でも聞いて分かりやすい説教」を聞いて、「行い」を重んじる中国人クリスチャンは、理屈ではなく行動によって信仰を体現し証を得ている、と。

また、20C最後の20年間を中国のキリスト教復興期とすれば21Cは発展期ととらえられる、とも言っています。ということは現在「福音派的」段階に相当すると私は思っています。
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