10月8日付けタイム誌は、米国大統領選挙を直前にして、共和党の大統領候補ミット・ロムニーの信奉するモルモン教が彼にどのような形で表れているかを分析して、特集記事を組んだ。この記事によると、モルモン教会の教義やたどった歴史、教会の対応の仕方(歴史観)を知ると、ロムニー候補の積極的な意欲や、自由を重視する姿勢、そして時に見せる便宜主義(環境に応じて柔軟に対応する処世)が理解できると言う。
「ロムニーに浸透しているモルモンの特徴」(“The Mormon in Mitt”)と題するこの記事は、ジョセフ・スミスがアメリカを神が選ばれた地、米国憲法を神に霊感されたものと見たことから説き起こす。スミス殺害後、教会は西部に移り時間の経過と共に現実に即した(プラグマティックな)姿をとるようになった。連邦政府との関係では、リンカーンが「もし、ブリガム・ヤングが私に干渉しないなら、私も彼に干渉しない」と語ったのに対し、ヤングは政府との間で紛争の種を播かないことでそれに応えた。そして、教会は19世紀の晩年に多妻制度を放棄しユタの州昇格を得ることになった。この間、ロムニーの祖先はメキシコ北部に移住して多妻を実施していたが、メキシコに革命が起こりメキシコを追われることになる。ロムニーの父ジョージはこの出メキシコを目にしていた。状況が変わると、人は対処しなければならないのだ。
M.ロムニーが周囲の状況に合わせるのは、家族と教会のたどった歴史が影響している可能性がある。マサチューセッツでは穏健派であったが、立候補に当たって保守的な共和党で出馬するため右寄りにシフトした。彼は自由と個人主義をアメリカの重要な特質と見ることについて、「昔人々が自由を求めてこの国に移住してきたのと同様、今日もそれは続いており、アメリカを史上世界で最強の国にしたのは、自由を希求する心、発明、創意、果敢、開拓などの精神にほかならない」と著書「弁解は不要」(No Apology)に書いている。
ロムニーは現大統領を支持する47% (5月現在) の人々が政府の福祉に依存するとすれば、それを理解しはするが、政府が温情主義・過保護主義的になって、「国民が同朋(兄弟)を世話する」(「世話する」は創4:9の言葉) 形から離れ、「政府が我々を世話する」ようになるのは望ましくない、と考えている。
ロムニーは教徒として人生に困難(劣勢、逆風)がつきものと心得ている。支持率が重要な州で低迷しているが彼が今後どう出るか、予測できることは、彼が直近の次の状況(領域)に向かって前進する姿勢をくずさないということである。外からは、彼の人生は順調で恵まれたものと見えるかもしれないが、彼には最悪の嵐に遭っても生き抜き、成功する術を深く芯に持ち合わせている。それができるかどうかが、彼の前途を、また米国民の将来を決めることになる。(Jon Meachamの記事を要約)。
本ブログ参考記事
2011/10/02 ロムニーとハンツマンの比較、ふたりはどう違うか
日本でもモルモンについて取り上げられる事が多くなりつつありますね。
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/nms/feature/post_28949
今回の大統領選挙は共和党候補のロムニー氏がモルモン教だという点で注目を集めています。モルモン教とは、いったいどんな宗教なのか?また、今回の大統領選にどう影響しているのか?宗教と大統領選から“アメリカの今”を探っていきます。