NJWindow(J)

モルモニズムの情報源、主要な主題を扱うサイト。目次を最新月1日に置きます。カテゴリー、本ブログ左下の検索も利用ください。

モルモ二ズム研究の七つ道具 -- 推薦図書、定期刊行物、その他

2009-07-08 23:50:48 | モルモン教関連
今年6月「限られた予算でモルモ二ズムの研究を始めるには」と
いう問いが寄せられ何人かの専門家が回答していた。大変興味が
あるので、ここに要約して紹介したい。対象は教会員で、教会の
歴史や教義などについて、教会で提供されるものを越えて批判的
資料をも吟味できる初心研究者である。

I マウスの提案 
書籍(資料は全て英文であるので英語のまま)
1 Thomas Alexander, “Mormonism in Transition”
2 Leonard Arrington, “Great Basin Kingdom”
3 Philip Barlow, “The Mormons and the Bible”
4 Thomas F.O’Dea, “The Mormons”
5 Erich Robert Paul, “Science, Religion, and Mormon
Cosmology”
6 D. Michael Quinn, “Mormon Hierarchy” (Vol. 1 and 2)
7 Jan Shipps, “Mormonism: A New Religious Tradition”
8 Ronald Walker, James Allen, and David Whittaker,
“Mormon History” これはイリノイ大学出版局がウエブサイト
に掲載し、オンラインで見られるようになっている。
9 Cornwall, Heaton, and Young, “Contemporary Mormonism”
10 Armand Mauss, “The Angel and the Beehive” コメント
で別の人が推薦
11 Richard Lyman Bushman, “Joseph Smith: Rough Stone
Rolling”
12 Terryl Givens, “By the Hand of Mormon”
13 Lester Bush and Armand Mauss ed.,“Neither Black Nor
White”
14 Dan Vogel and Brent Metcalf ed., “American Apocrypha”
15 Truman G. Madsen, ed., “Reflections on Mormonism:
Judaeo-Christian Parallels”
[13-15は沼野がここに追加]

定期刊行物
ダイアログ誌、モルモン歴史ジャーナル、BYU紀要、サンストー
ン誌に目を通していなければ、本当にモルモ二ズム研究に通暁し
ているとは言えない。(Mauss)。

II 限られた予算でモルモ二ズム研究を始めるには?
[書籍]
1) 先ず概説書(例えば上の7, 8の注や末尾にあげられた
参考文献リスト)から自分の関心や興味に従って読みたい本のリ
ストを作り、とりかかる。
2) 本は購入する場合はamazon.com などで安価に手に入れ
ることができる。購入するのは何度も参照したくなる本、なしで
すますことができないものから始める。
3) あるいは図書館を利用する。大学図書館では大学間の
相互利用制度も視野に。
4) ネット上に公開されている場合は、ダウンロードして
目を通すことができる。
5) 何冊もの重要な資料を網羅したDVD、CD-ROMを入手する。
例、New Mormon Studies CD-ROM. 960冊以上の書籍が含ま
れている。
6) 参考になるブログ(英語)に行き、最近話題になって
いる事柄に注目し、自分が関心を持つトピックには目を通す。
Mormon Archipelago (http://www.ldsblog.org )がblogを総まと
めにリストアップしていて便利である。自分の関心とスタンスに
合ったものを選ぶことができる。 

[定期刊行物]
4冊も5冊も購読するのは大変であるからダイアログかサンスト
ーンから始める。あとは必要に応じて他のジャーナルを適宜個別
に注文する。今ダイアログなら創刊号から現在までDVDで入手する
ことができる。また、ダイアログ、BYU紀要はオンラインで無料で
見ることができる。定期刊行物に必ずある書評ページは、どの書
物を読むべきかを示唆してくれるので大変参考になる。

[シンポジウム]
日本に住んでいると簡単ではないが、何人かの回答者がモルモ二
ズムのシンポジウム(conference)に参加するよう勧めている。研
究者にとってディズニーランドに来た子供のように楽しい機会で
ある、と形容している。この分野で著名な学者が大勢来ていて、
彼らの話を直接聞け彼らと言葉を交わし、自分と同じような研究
者(関心を持つ素人研究者を含む)と知己になれるからである。
よく知られているのはモルモン歴史学会とサンストーンのシンポ
ジウムで毎年会場を変えて開催されている。

マウスはこのようにして週20時間以上時間を充てて研究すれば、
1年もたてばほとんどの会員や指導者(彼らの90%)以上に末日聖
徒の歴史と文化に精通するようになるだろう、と述べている。現在
モルモ二ズム研究は大変盛んで楽しく充実した時代である(ロビン・
ジェンセン)。

III 日本で研究する場合
残念ながら日本語でIにあげた15冊に相当するものはなく、英語
で文献を読めるように努力することが求められる。(2006/7/1
モルモンは英語がわからなければ・・」参照)英語がこなせれ
ばIIにあげた方法を日本でも適用して研究を進めることができる。
英語を読む方法は選んだ本は精読し、他はブラウズ(ざっと目を
通す)という両方の方法で臨む。

大学など研究機関の図書館に英語のモルモン関連の文献が多少
見つかるはずである。東京大学を始め研究施設が整った大学、それ
から上智大学、同志社大学などキリスト教系大学など。わかってい
る範囲では南山大学、徳山大学、広島国際学院大学の図書館に
会員の教員が購入した英文の文献が蔵書として保管されている。

教会教育部の最新の教材(インスティテュート教科書、邦訳)が
比較的詳細な資料を掲げているか注に記しているが、教会擁護的
であるという制約を免れない。反対に批判的なものでは、高橋弘
著「素顔のモルモン教」が詳細であるが、「素顔」を描こうと暗
部暴露的偏向(bias)で一貫しているため、それを覚悟しなければ
ならない。

日本で独自の研究をするには、英語世界の研究者と並ぶことは資
料アクセスの面でも容易ではないので、日本の文化を背景として
日本における教会の状況について研究することが考えられる。そ
こで教会や教徒の信仰生活を観察・分析して、あるいは「モルモ
ン」をキーワードに検索して日本において教会がどのように見ら
れているかなどをテーマに研究を進めることができる。その場合
でも米におけるモルモ二ズム研究の同類先行研究を知って行わな
ければならない。

Source: Times and Seasons 2004/04/12
Times and Seasons 2009/06/23
* Armand Mauss は元ワシントン州立大学 社会学、宗教学教授。
日本伝道再開後間もなくのマース伝道部長の息子。


最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
七項目にしてみると (NJ(七つあげると))
2009-07-10 11:49:50
七つ道具、七つあげると・・

1 書籍(論文や他の資料を含む。基本文献 + 重要にして興味ある新刊。)

2 定期刊行物(そのときどきの最新・最重要な研究や分析がわかる)

3 英語(この場合、読解力が重要。ハンディから使えるツールにしたい。)

4 パソコン(インターネット閲覧、資料のダウンロードなどを可能とする)

5 インターネット(モルモン関連のサイトが数多くあり、最新ニュースが得られる)

6 シンポジウム(情報・知見の集積と発表・共有の場、刺激に富む)

7 教会(最後になったが基本中の基本。教義学習、信仰実践の場 + 教会[員]観察の場)
返信する
Unknown ()
2009-07-10 12:05:20
豚に英語はね・・・。
返信する
豚にも英語を・・ (NJ(すみません))
2009-07-10 20:40:38
六十の手習いのつもりで、まだまだ六十になってないんやし。

おっ、そう、六十になってから始めてもええけど。

冗談はさておいて、言葉の壁は大きいですね。(自分も含めて)認めます。
返信する
言葉の壁 (ワサッチ)
2009-07-10 22:41:34
モルモン書を批判的に読む能力は聖書の批判的研究の良書を多く読むことによっても養われると思います。

英語のモルモン書研究の本を一冊読む労力で日本語の聖書学の本を十冊読める。

それと専門書は高価です。それも大きな壁です。
返信する
適切な補足に感謝 (NJ(異議なし))
2009-07-10 23:26:49
そうですね。ご指摘ありがとうございます。日本にも多くの優れた聖書学シリーズがあり、注解書も出ていて参考になります。

私は専門書にいく前に、榊原康夫や古屋安雄の一般向けの本でたくさんのことを学びました。(実際は専門書にはあまり手が届いていない。)

専門書が高価であることは確かに大きな壁ですね。東京では教文館の建物に聖書図書館があって、聖書に関する書籍がかなり揃っていると思います。東京神学大学の図書館はもっと広範囲にそろえていて便利です。
返信する
多すぎる ()
2009-07-13 09:22:15
確かに書物は多くの知識と情報を与えてくれます。
しかし、それは同時に、偏見を植え付ける事にも成ります。
書物が多すぎて、その全てを読む事は出来ません。
自分が好きなものを読む、自分が受け入れやすいものを読む、理解しやすいものを読む。と言う傾向になってしまいます。

最終的に大事なのは、客観的かつ論理的な判断力、だと思っています。

聖書の中でも、「性的経験の無い女性が妊娠した」「死んだ人が生き返った」などの記述は、「物語」として受け止めるのが、正しい判断かと私は思います。

自分が持っているだけの情報で充分とは言えませんが、所詮全ての情報を得る事は不可能なのですから、「自分が得た情報をどう分析するか?」が鍵じゃないでしょうか?

論理的には、モルモン書に一つでも間違った記述が有れば「完全な書物」では有りません。
返信する
ありがとうございます。 (美ら)
2009-07-13 10:55:01
訪問してくださりありがとうございます。

こちらは現実から離れた世界で難しいですね。
時々訪問します。
返信する
語学力が素晴らしいですね (美ら)
2009-07-13 19:10:46
度々、訪問して下さりありがとうございます。

沼野さんのような方にお褒めの言葉を頂いて
嬉しく思います。
返信する