「忌(いみ)」
他との接触を避けねばならぬ者とそれを取り巻く者との間に、絶対に
守られなければならぬ信仰感覚によって保ち持続される状態をいう。
≪物忌みの展開≫
・三重県度会(わたらい)郡→「忌(うま)れ」
・香川県三豊あたり→「忌(おそ)れ」
・広い意での呼び方→「忌(ひ)」・「服」=ブク・ボク(服忌の服の意)
・「穢(けが)れ」も「清さ」も「忌」
これらの忌を犯すと、罰・祟りを受けた。
中世以後には「物忌(ものいみ)」という語を多く使う。
① 忌を守らねばならぬ状態をいう。
祭りに奉仕する者がすべての外から来るものを
避けようとする場合。
② 忌を守る任務にあたる者をいう。
物忌の父・母、物忌役の娘や巫女を言う場合。
③ 特別に清いものをいう。
神の用にしか立てぬものにつけておく一種の徴章(しるし)や、
忌衣の模様のような場合。
古くから忌(ひ)は人に属するもの・日・土地に属するものなどがあり、
その制限はよく似ている。
山の神の春秋の祭りの日は午前中山に入ってはならないとか、
地神祭りの「金忌(かないみ)」とは農耕用の金物をいっさい使わぬこと
などは、「イミ」とか「ダチ(火物ダチ・青物ダチ)」と呼び、
ショウジン(鶏精進)ともいう。
≪忌みの内容変化≫
「イミ」・・・嫌(きら)うというのではなく、一日中行いを謹んで、
農作などを控えるということ
「ナエミノイワイ」・・・播種後四十九日・五十日目に苗をとらず
祝うとし、「苗厄(なえやく)」ともいう。
神が苗代へ降り賜うと信じたゆえであろう。
すなわち、「ヤク」と「イミ」と「イワウ」の連関が考えられる。
忌を犯すと身に罰・祟りを受けた印象は、斎戒を意味する事から禁忌
の意となり、転じて厭悪(=いまわし)の意義さえ生じた。この過程には、
神が人の間に天降られるために人は銘々謹慎したのだが、後には畏怖
のあまりそうすると考えるようになり、伊豆諸島のように海南坊(カイナンボウ)
などの怪物・異人などの来臨を説くこととなった。
≪別火生活≫
〔壱岐の島の例〕
葬式時、身内の一定の者だけが分け食う物が、「火の飯」といわれる。
「火」・・・「忌」の義
「火が悪い」・「火が清い」などと用いる。
「ヒデ」・・・忌飯料・香典を意味する。
忌むものは、別火の生活をするゆえに、「イミ」のことを「火」ともいう。
正月十五日に、青少年戒の行事のひとつに、浜・野などに籠をつくり、
そこで煮炊きしたものを食い合う(イソモチヤキ)こと、自分の家の火を
用いぬ盆籠・辻飯なども、忌火(別火)思想の現われであり、通例月毎
の下弦の一夜は、物忌みの日であり、その次の日に祭りを行う。
全国で行われている、「とんど」・「どんどやき」など。
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『日本民族語大辞典』桜楓社:石上堅著