【 10以上の数詞 】
★『古事記』(712年)の中に出て来る数字・・・5つ
十一 トヲ・マリ・ヒト
十二 トヲ・マリ・フタ
十四 トヲ・マリ・ヨ
十六 トヲ・マリ・ム
十七 トヲ・マリ・ナナ
「マリ」=「アマリ」の「ア」が脱落。
トヲ 数えて アマリがいくつあるという表現。
・8世紀の碑文に47を「40余り7つ」とチュルク語でかかれたものがある。(柴田武)
・英語で11、12(eleven,twelve)の語源が「10数えて1つ(2つ)余った」という。
★『古事記』にみえる20の位
廿一 ハタチ・マリ・ヒト
廿六 ハタチ・マリ・ム
「ハタチ」の「チ」=「ヒトツ」「フタツ」の「ツ」が転じたもの。
「箇」を意味する。
「ハタ」=二十
・「ハタ」は動詞「ハテ」(果)と同根。(大野晋ら)
これ以上数えられない、両手、両足の指すべてを使いきった数の意。
・「ハタは」二十(フタソ)の略転。(大槻文彦)
☆ 十は複合語の場合に「ソ」という。「ト」の転音。十露盤(そろばん)など。
★30以降の例
三十 ミソ 三十八 ミソヂ・マリ・ヤ
四十 ヨソ 四十九 ヨソヂ・マリ・ココノ
五十 イ 五十六 イソヂ・マリ・ム
六十 ムソ 六十三 ムソヂ・マリ・ミ
七十 ナナソ 七十七 ナナソヂ・マリ・ナナ
八十 ヤソ 八十三 ヤソヂ・マリ・ミ
九十 ココノソ 九十五 ココノソヂ・マリ・イツ
※「ヂ」=「ハタチ」「チ」と同じ「ツ」(箇)の転じたもの。
数詞に添える接尾語、助数詞。
※「五十」=イ
5(イ)と 50(イ) は同語。(大野晋ら)
ポリネシア語などに一つの単語で4と40を表すのがあるのと同類。
※50で10を表現しないのは、20「ハタ」で10を表現しないのと同じといえる。
例)伊勢神宮に五十鈴川(イすずがわ) (川本宗雄)
★3桁の数字
・百(モモ)・・・由来は諸々(モロモロ)とも物物ともいわれる。(大槻文彦)
一百三十七 モモ・アマリ・ミソヂ・マリ・ナナ
一百五十三 モモ・アマリ・イソヂ・マリ・ミ
※762年頃の仏足石歌(奈良薬師寺の石碑文で万葉仮名)に、
「32」を弥蘇知阿麻利布多都(ミソチ・アマリ・フタツ)という例がある。
※百は単位として使う時・・・「ホ」という。上代は「ポ」といい、
「オポ」(多、大)からきている。(白鳥庫吉)
例) 八百屋(ヤホや)、八百萬神(ヤホ・ヨロヅのかみ)
三百(ミホ)、六百(ムホ)
※『古事記』での読みに五百八十を「イ・ホ・チマリ・ヤソ」というのがある。
「チマリ」=「留り」の上代東(アヅマ)方言。 (大槻文彦)
★その他実例
千五百 チ・イ・ホ (『古事記』)
万五千 ヨロヅ・アマリ・イツ・チ (『日本書紀』720年)
★借り物の漢数詞(1~10)
壹、貮、参、肆、伍、陸、柒(漆)、捌、玖、拾
・音は呉音に由来する。
※呉音・・・中国の南朝時代(4~6世紀)、揚子江下流域(江南:かつての呉の地)
のシナ音で、朝鮮半島の百済を経て仏教(538伝来)とともに伝わった。
↓
その後、漢音が長安、洛陽から遣唐使らによってもたらされた。
この借り物の漢数字のお陰で日本人の数体系への進化が進んだと思われる。
『数の民族誌 世界の数・日本の数』内林政夫:著(八坂書房)参照
二十はハタチって読むのって、ちゃんと古事記に載っていたからなんですね。
その由来ははっきりした記録としては残っていないので、
だいたいは後世の人たちの想像でしかないです。
でも、両手両足の全て数えきれなくなった「果て」
という単純なのが一番当たってるような気がします。
「ありゃりゃ、指を使い果たした~、んじゃあ、
コレをとりあえずハタチ(20)としておくか~。」
なあ~んてね、そんな感じだったんじゃあないかなあ・・
いにしえのものって結構好きですが、
一百三十七 モモ・アマリ・ミソヂ・マリ・ナナ
一百五十三 モモ・アマリ・イソヂ・マリ・ミ
この読み方だけは堪忍~~!!
ホント、借り物の漢数字様様ですね~!(笑)