「(株)パピーユ/島之内フジマル醸造所」
(株)パピーユ/島之内フジマル醸造所 大阪市中央区島之内1-1-14
*https://www.winery.or.jp/winery-map/2651/ より
ぶどう産地としての大阪
大阪には、すでに120年を超えるブドウ造りの歴史があり、生産量も全国トップクラスだった時代もあります。しかし、都市化が進み、ブドウ畑は宅地に変わり、農家さんは街で働くようになりました。その結果、多くの畑が耕作放棄地となり、大阪のブドウ畑は今では減少する一方です。しかし、それでもまだ大阪には多くのブドウ畑があり、大阪でワイン業界に身を置くものとしてワイン産地が消えゆくのを黙ってみている訳にはいきませんでした。私たちは、大阪府柏原市で2010年から耕作放棄地を中心にブドウ栽培をスタート。その後、耕作依頼は増え続け、2haを超えるブドウ畑を管理するまでになりました。一年でも放棄された畑は、雑木などが入り込み、再び栽培を再開するのは費用のことを考えるとかなり困難になります。いちワイン業界の人間として何とか次の世代へワイン産地としての大阪を引き渡したいと思い、大阪で長年育てられているデラウェアを中心に苦戦しながらもブドウ栽培を続けています。
ワイン造りへの挑戦
当初は大阪の創業100年を超える老舗ワイナリーであるカタシモワイナリーさんで委託醸造という形でワインを造っていたのですが、管理する畑が急増したことにより、間借りでは追い付かなくなり、2013年、自分たちでワイナリーを設立することを決めました。ただ、創業から間もない小さな会社なので予算が少なく候補地選びにかなり苦戦をしました。しかし、そのお陰で、ワイン造りや自分たちの本当に表現したいことを見つめ直す良いきっかけとなり、最終的に私たちが選んだ場所はセオリー通りの『畑の近く』ではなく『街のど真ん中』でした。
私たちのゴールは、ワインを造ることでも、大阪のブドウ産地を残すことでもありません。それはあくまでも手段、課程であり、私たちのゴールは『ワインを日常に』です。どこか舶来のモノのイメージがあるワインに親しみを持ってもらうためには、もっとワインのことを知ってもらわなければいけません。ワインは難しそう、という先入観をくつがえさなければ先に進まないと思うのです。また、産地と造り手と消費者が一体になれるような場所を創ることによって、ワインがただの工業製品ではなく、農作物であることを身をもって伝えるために、私たちは大阪のど真ん中にワイナリーとその接点となるレストランを作りました。
そして、さらに増え続ける耕作放棄地や近郊の農家さんからのブドウ買取依頼のため、自社ワイナリーのキャパシティを超えることが予測され、既存の契約農家さんのブドウを買い続けるため、東日本のブドウを受け入れるネゴシアン型ワイナリーを東京都江東区の清澄白河に設立。もちろん日本の原料のみでワインを造り続けています。
私たちのワインは決して派手なタイプではありません。あくまでも食中酒として日本の食卓に寄り添うような味わいを目指しています。繊細な和食を味わうように少し耳を傾けながら味わっていただけるとブドウ畑からの声が聞こえるかもしれません。
商品リスト
Chill-out white 2022
●余市のブドウ
コロナの影響は思いがけないところで、私たちに貴重な機会を与えてくれました。
ワインの減産によりブドウ出荷量に余裕ができたということで、大阪に北海道余市のブドウたちがやってきたのです。
私たちは基本的に大阪のブドウをつかって大阪でワインをつくることを大切にしていますが、やはり全く違うエリアで育ったブドウや普段触ることのない品種を扱うことができるのは勉強になるし、何よりも楽しい!
ワイナリー新設ラッシュの続く北海道のブドウが今後も大阪に入ってくることは難しそうですので、ぜひこの機会に島之内フジマル醸造所で北海道のブドウを醸したワインをお試しください。
●ケルナーを酸化的に??
ケルナーは、普段私たちが扱うデラウェアに比べて酸化に弱い品種。発酵中や液体の移動時にはなるべく酸化的な負荷をかけないように気を付けて仕込んだ一方で、熟成は少し酸化的にすることでケルナーの香りをもっと華やかな感じにできるのではないかと考えました。
そこで、発酵完了したワインの一部をあえてクヴェヴリ(ジョージアの土甕)で熟成させてみたのです。 6カ月の熟成の後、クヴェヴリ熟成のケルナーは思った以上に華やかに開いた香り。 この香りを100%活かして瓶に詰めたかったので、本数は少なくなってしまいますが、クヴェヴリ熟成のみでボトリングしています。
●Chill-out
食事に寄り添うような味わいのワインつくりを心がけているフジマルのラインナップたちとは少しスタンスの異なり、やや個性の『押しが強い』ワインに仕上がっています。食中酒としてならばスパイスやハーブをきかせたエスニック料理にピッタリあってくれますが、それだけではなく、ゆっくりリラックスした時間にワイン単体で楽しんでもらうのにも最適です。 ぜひ、クヴェヴリ熟成の華やかなケルナーでChill-outしてください。
メンブレンプレス機を使って全房で圧搾後、樹脂の開放タンクで18日間自然発酵。500Lのクヴェヴリで6ヶ月熟成させたのち、亜硫酸塩を20ppm添加してボトリング。液体の移動はなるべく空気を含まないようにタンクに窒素を貯めた状態で優しくゆっくり行いました。ボトリング以外の過程で亜硫酸の添加は行っていません。
原料:ケルナー(北海道産100%)
内容量:750 ml アルコール分:12%
総酸度:6.7 g/L 総亜硫酸:18 ppm 遊離亜硫酸:4.8 ppm
産地:日本、山梨 品種:山梨県山梨市牧丘町隼地区マスカットベーリーA100%
<ワイナリー様コメント>
畑の西側に隼山があり、夕日が遮られ夜温が下がりやすくしっかりと色づいた良質なぶどうが育ちます。 ステンレスタンク発酵 + 樽熟成。フレンチとアメリカンオークの 2 種類の樽で 11 ヶ月熟成させた深い味わい。優雅な余韻がお料理の美味しさをより引き出します。
隼地区・・・笛吹川の扇状地。標高 350M~550M (牧丘の山からの花崗岩を主体とした砂と礫に一部火山灰混じり)
<スタッフティスティングコメント>
MBA の香りがふくよかに立ち上りとても柔らかみのあるアタックで、味わいの余韻は長い。樽からのタンニンが程よく、しっかりめの煮つけや醤油ベースのソースを変えk田ステーキなどにもピッタリ。(マスカットベイリーAはお醤油との相性もとてもいいのです)。 フレッシュな酸を楽しめる今もいいが、穏やかなタンニンがよりなじむ数年後も楽しみたい。
ゆっくりじっくり、成長を見ていきたいワインです!
■ワイナリー紹介
山梨県勝沼地区の日川のほとりに点在するぶどう畑と醸造所。
心地よい風の通り道に位置するぶどう畑は水はけがよく、太陽の光をいっぱい浴びて成長した、香りのよいぶどうが豊かに実ります。 そして勝沼地区だけではなく、同じ山梨県内でも地域によって、それぞれに味わい深いぶどうが出来上がります。
ぶどう畑の環境に合わせて的確なタイミングで摘み取り、この土地の気候風土の恵みをそのままに、畑ごとにワインを醸造し、素直な味わいをお届けしたい。
土地と正面から向き合い、この土地でしかできないぶどうの味そのもののワインを愉しみたい。
シンプルなことを実践することが、実り豊かな土地を未来につなげることになると考えています。