「おやき」
主な伝承地域 北信地域、中信地域(県内全域)
主な使用食材 中力粉、丸なす、味噌
歴史・由来・関連行事
「おやき」は、小麦粉と蕎麦粉を水または湯で溶いて練り、薄くのばした皮にあんや野菜など旬のものを包み焼いたもので、信州を代表する郷土料理。地域によっては「やきもち」とも呼ばれる。上水内郡西山地域が発祥といわれており、その歴史は古く、小川村の縄文遺跡からは雑穀の粉を練って焼いた跡が発見されている。山間部は急峻な地形が多く、寒冷な気候のため米の栽培に適さないところが多い。こうした山間地では小麦や蕎麦が多く栽培され、1日1回はその粉を使った食事をつくって食べたといわれ、米の代わりとして先人の食を支えた。一方、豪雪地帯である栄村は小麦の栽培が適さず、米粉を原料とした「あんぼ」というおやきがつくられている。
昔はどこの家にも囲炉裏があり、西山地域では「ほうろく」とよばれる鉄製の鍋で表面を焼いて囲炉裏の灰の中でおやきを蒸し焼きにして、周りに付いた灰を落として食べていた。このおやきを「灰焼きおやき」といい、以前は主流だった。それが里から町へと伝わり、「蒸す」「焼く」「焼いて蒸す」「蒸して焼く」など、様々な調理法が生まれた。包む具材は、なす、きのこ、かぼちゃ、切干大根などを味噌や醤油で味付けし、それを単体もしくは複数混ぜたものなど様々な種類がある。身近にあるものや季節の具材を入れて楽しんだ。おやきは元々北部に伝わる郷土食だが、観光資源として価値が高まるにつれて県内全域に広まり、今では県全体の郷土料理として親しまれている。
食習の機会や時季
おやきはハレ食でもあり、日常食としても食べられている。具により季節を問わずつくることができ簡単に焼けるので、おやつとしても食べられ、春はよもぎせんべい、にら、なす、りんごせんべいと季節の野菜を使ったおやきがつづく。
北信地域のお盆は、おやきは欠かせない。毎年8月1日を「石の扉(いしのと)」といい、朝から墓掃除をしておやきをつくり、盆に先祖の霊を迎える準備をする。8月14日の朝には仏前におやきを供える。
飲食方法
一般的に知られるおやきは、小麦粉と蕎麦粉を混ぜた生地で、うすく伸ばして野菜などの具材を包む。具はたっぷり入れて生地を少しづつ伸ばしながら包む。生地の中心を厚めにしておくと破れにくい。調理方法は、焼くと水分が減って皮がパリパリの食感になり、蒸かすと水分を含んで皮がやわらかくモチモチとした食感に仕上がる。
生地の材料やおやきの調理方法は、地域・家庭で異なり、中に入れる具材は千差万別である。西山や善光寺では、小麦粉の皮で季節の野菜を包んだおやきがつくられるが、米がよくとれる安曇平では、ご飯に小麦粉を混ぜてつくり、黒砂糖と味噌のあんを入れて「やきもち」と呼んだ。小麦粉が育ちにくい飯山では、しいな米の粉(死米の一種で、受粉障害により子房の段階で死んだものや受粉しても登熟初期で死んだ粒)ととうもろこしの粉を混ぜた皮によもぎを入れてあんを包んだ「ちゃのこ」をつくり、春先に食べた。
保存・継承の取組(伝承者の概要、保存会、SNSの活用、商品化等現代的な取組等について)
今も家庭でつくることもあり、県内全域のいたるところで販売されている。高速道路のサービスエリアや土産物店、地元のコンビニエンスストアでも売られている。
平成21年10月に、おやき事業者20社により「信州おやき協議会」が設立され、信州おやきの文化を守り発展させていくこと、全国的認知度を向上させていくこと、顧客満足のための品質向上を図ることを目的とし、おやきに関する各種イベントや勉強会、おやきつくり教室などをおこなっている。
*https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/oyaki_nagano.html より
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