「すんき漬け」
主な伝承地域 木曽地域
主な使用食材 赤かぶ
歴史・由来・関連行事
山深い木曽地域は古くから独自の食文化が根付いており、そのひとつに赤かぶの葉を使った「すんき漬け」がある。すんき漬けとは赤かぶの葉を塩を一切使わずに「すんき種」を加えて乳酸発酵させた無塩の漬物のことで、木曽地域に古くから伝わる発酵食品で「すんき」ともいう。
まだ流通や交通がなかった時代は、「米は貸しても塩は貸すな」といわれたほど、海から遠く離れ山深い木曽谷では塩は大変貴重品だった。塩を節約するために、生活の知恵から生まれたこのすんき漬けは、独特の酸味があり、一般的な漬物とは異なる味わいを持つ。歴史は定かではないが、芭蕉一門の連句会で「木曽の酸茎(すんき)に春も暮れつつ」と詠んでいることや、約150年前の古文書にもすんき料理が出されたと記されていることから、少なくとも300年以上前にはあったといわれている。原料となる赤かぶは木曽地域で古くから栽培されてきた「木曽かぶ」を用いる。木曽かぶには「開田かぶ」「王滝かぶ」「三岳黒瀬かぶ」「吉野かぶ」「芦島かぶ」「細島かぶ」と地元に根付いた6種類のかぶがある。かぶが持つ自然の乳酸菌は、特に茎と根の付け根の部分に多く含まれているといわれている。また、かぶが持つ乳酸菌の微妙な違いなのか風土の違いか、他所ですんきを漬けても同じようにはならないという。昔は、山に自生する小梨(ズミ)や山葡萄などの実をたたいてつぶし、発酵させたものを「すんき種」として用いた。今では、前の年に漬けたすんき漬けを干しておいたり、冷凍したりものを「すんき種」として用いている。最近の研究では、すんきにはヨーグルトに匹敵するほどの乳酸菌があるといわれ、300種類以上もある乳酸菌の中からすんき漬けに向くものが4種類ほどあることが分かっている。平成15年からすんき乳酸菌の本格的な研究が東京農業大学教授によりおこなわれ、その4種類の乳酸菌を使ったすんき種(スターター)の試作テストが進められている。
食習の機会や時季
すんき漬けは、冬季限定の漬物で秋の終わり頃から冬にかけてつくられる。かぶ菜は寒くなるとおいしくなり、乳酸菌が活動しやすいといわれることから、霜が降りるのを待ってから収穫する。数十年前は、囲炉裏のまわりですんきを仕込み、寒さが厳しい木曽地域では、凍ったすんきを桶から取り出して食べていた。
飲食方法
一般的な漬物は保存性を高めるために沢山の塩を使うが、すんき漬けは60度くらいのお湯で葉の表面をゆでることで殺菌する。さっとゆでた葉は、温かいうちにビニール袋を敷いた容器にすんき種と重ね、45度くらいの温度のゆで汁を加える。乳酸菌は温度が高いと菌が死んでしまうため、温度管理は大切である。温かい場所に1日置くことで酸味が出てくる。できあがったすんき漬けは、そのまま食べたり、温かい蕎麦に入れて食べる。最近は、洋食にすんきを取り入れたり、新しい食べ方が増えている。
保存・継承の取組(伝承者の概要、保存会、SNSの活用、商品化等現代的な取組等について)
今も木曽地域では秋の終わり頃になると、すんきを漬ける。木曽の蕎麦店や飲食店で提供され、道の駅や土産店、スーパーマーケットなどで手に入れることができる。時期になるとすんきづくり体験もおこなわれたり、すんきフェアやすんきまつりなど各種イベントが開催される。
*https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sunki_zuke_nagano.html より
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