「川連漆器」(かわつらしっき)
川連漆器について
川連漆器は、秋田県の南端、湯沢市川連町に受け継がれる伝統工芸品です。今から約八百年前の鎌倉時代(1193)に、この地の城主だった小野寺重道の弟・道矩が、奥羽山脈の豊富な木材と漆を利用して、家臣の内職として武具に漆を塗らせたのが始まりと言われています。
本格的に漆器作りが始まったのは元和(1615)から元禄にかけての頃で、椀師稼業を営んだという記録が残されています。江戸時代中期(1815)になると、他国にも販路が開かれ、以来、藩の保護政策のもとに椀や膳、盆、重箱など幅広い漆器が作られるようになりました。
一つ一つ手づくりで、堅牢で実用的な漆器を作り続けたことで、昭和51年、川連漆器は国の伝統的工芸品に指定されました。今では、全国でも有数の漆器産地として成長を続けています。
製法の特徴
漆器作りは、主に木地作り、下地作り、塗り、加飾と4つの工程から成ります。とくに下地作りは、木地を丈夫にする大切な作業で、一般的に丈夫な漆器には「本堅地」や「渋下地」の下地法が用いられています。本堅地は、生漆に水で練った地の粉という土の粉を混ぜたものを塗り、乾いたら研ぎ、また塗るという作業を繰り返すもの。一方、渋下地は、生漆の代わりに柿渋汁、地の粉の代わりに炭粉を使うもので、本堅地より値段を抑えることができます。
川連漆器(かわつらしっき)の下地法は、渋下地の中でも特にその丈夫さから「堅地仕上げ」といわれる技法。柿渋汁にホウやヤナギなどを焼いた炭粉を混ぜたものを塗り、乾いたら研ぎ、続いて生漆を塗る、という「地塗り」を数回繰り返すもの。水を一切使わないため、木地がゆがみにくく、本堅地に並ぶ丈夫な下地になります。
普段使いするには、丈夫で使い勝手が良く、さらに手ごろな値段であることも大切。「堅地仕上げ」は、川連の作り手たちのそうした漆器作りの姿勢を象徴しています。
地塗りの後は、中塗、上塗を6~7回繰り返して完成となりますが、仕上げには「花塗」と「呂色塗」の2種類の技法が用いられます。花塗は油分を含んだ朱漆か黒漆を塗り、そのまま乾燥して仕上げる方法で、しっとりと美しいツヤが得られます。呂色塗は油分を含まない黒漆を塗り、乾燥後に磨いてツヤを出す方法。川連の呂色塗は、下塗や中塗に生漆から水分を取り除いた素黒目漆を塗るため、研ぎすまされた中にも、どことなくやわらかな雰囲気が漂います。
美しい塗り肌の無地の製品を中心に、蒔絵や沈金を施した華麗な製品、現代感覚のイタリアデザイン漆器など、日常生活に潤いを与える川連漆器の豊かな世界を味わってください。
*https://ldt.co.jp/crafts/guide/guide1.html より
*https://kougeihin.jp/craft/0505/ より
歴史
国の伝統的工芸品、川連漆器の産地である湯沢市は、秋田仏壇の産地でもあり、稲庭うどんの里でもある。
秋になり収穫の時期を迎える頃、この地を治めた小野寺氏の居城した高台から見ると、一面の黄金色の稲穂、これはまるで稲の庭…稲庭の名前の由来である。その地に立つと皆うなずく絶景である。
今からさかのぼること800年、農業主体の川連村は1年の半分は雪に覆われ、何か副収入を得なければ生活できないほど困窮していた。
その折、源頼朝の家臣である小野寺重道公が、平氏討伐に出陣し、大きな手柄をたて、この地を支配することになる。
小野寺氏は稲庭に居城し、その弟である道矩は、川連に住まいを移し、農民に内職として武具に漆を塗ることを教えた。漆は藩の計らいで容易に調達でき、また、何よりも自然に恵まれるなど好条件が重なった。
奥羽山脈の山ふところに位置し、雄大な皆瀬川を利用した、栗駒山系のブナの原木が木流しされた。
漆は、当時の職人が豊富な山林に自ら赴いて漆掻きをするという自給が可能であった。
武具から始まった漆塗りも、やがて江戸時代の後期になり、日用食器としての椀づくりが始まるのである。この頃になると商人も現れ椀師工程絵図も描かれ、いよいよ産業基盤が確固たるものになって行く。
途中、何回も危機に直面し、特に天保の飢鐘、戦後の大不況と大きな危機があり、産地が消滅しかねない状態もあったが、当産地は地道に着実に発展を遂げていった。
昭和31年、稲庭、川連ほか二村が合併して稲川町なり、更に平成17年の市町村合併により湯沢市となった。
川運漆器の主流は椀であり、6割以上を占めているが、今では幅広いアイテムを開発している。
伝統を守りながらも時代に即応したものづくりにチャレンジし、また、関東を中心として徐々に販路を拡大し、全国に川連漆器の良さが浸透している。
特徴
何回も繰り返される「地塗り」と「中塗り」を経て塗り立てと言われる「花塗り」で仕上げ乾燥するのが特徴。丈夫で使い易く廉価なため、普段使いに喜ばれている実用漆器である。
お椀などの原材料は、ブナと栃が主。また、重箱などは朴の木を使う。堅牢な下地、中でも「地炭付け」「柿研ぎ」及び生漆を塗る「地塗り」は、代表的な下地工法である。この堅牢さが川連漆器の特徴の一つである。
二つ目の特徴は、上塗りは塗り立てともいわれる「花塗り」である。これは、ムラなく平滑に漆を塗り、かつ埃もつけないようにするために気を引き締める瞬間でもあり、最も高度な技術を要するところである。
三つ目は、沈金技術である。蒔絵よりも歴史は新しく、明治からと言われている。
ノミのような沈金カンナで彫刻刀のように押し出すのが輪島に代表される一般的な技術であるが、当地では、手前に引いていわば逆動作をする沈金カンナを開発した。これにより浅彫りが可能となり、繊細で立体感のある沈金ができるようになった。
*https://www.tohoku.meti.go.jp/s_cyusyo/densan-ver3/html/item/akita_02.htm より
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