ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

共同通信社 - 4 ( 草創期、200を超える通信社 )

2018-06-30 20:12:54 | 徒然の記

 通信社の歴史を概略知りたいと思いましたが、簡単なものではありませんでした。

 新聞も似たような歴史を持っていますが、通信社は大きな資金が必要なためか、 最初から政党や財閥が関わっています。

 裏金や政略など暗い話が敬遠されたためでしょうか。なぜかこれまで、通信社に関する本を目にしませんでした。

 こうした世界を好むものではありませんが、やめる訳にいきません。調べた資料が煩雑なので、できる限り省略しようと思います。

  「日本では江戸時代に、米相場の動きを手旗信号によって、遠方に伝える手法が、存在したが、」「近代的通信社が生まれたのは、明治時代のことである。」

 通信社の歴史は、こんなところから始まります。

 「板垣退助らが中心となって展開した、自由民権運動を契機として、」「国会設立の機運が高揚し、明治23( 1890 )年に、第1回帝国議会が開かれた。」「この動きに乗って続々と新聞が発刊され、同時に、国政の動向や政論を配信する通信社も、数多く設立された。」

 日本史の授業と同じで退屈しますが、偏見の記事を溢れさせている共同通信社を知ろうと思えば、続けるしかありません。

 「当時は、東京だけで、200を超える通信社が存在したが、草創期の通信社は総じて小規模なものであった。」

 ここからは文章でなく、事実だけを抜き書きします。

    ・明治20年(1877)

         六角政太郎が「東京急報社」を創業。大阪・堂島の米市場の情報を、江戸橋電信局

     に打電し、東京の顧客に伝達。これが、日本における近代的商業通信の嚆矢。

   ・明治37年(1904)

     同社は、「合資会社商業通信社」として再生。

   ・大正8年 (1919)

     株式会社化され、1937年(昭和12年)に「日本商業通信社」に吸収された。

   これが一つの流れで、ここからは別の会社の話です。

   ・明治21年 (1888)

          11月4日、三井物産創業者の益田孝により「時事通信社」(現在の時事通信社とは

     無関係)創立。当時の内務省警保局長、清浦奎吾(のち首相)の肝煎りで設立され

     た御用機関。激しい内紛のため、3年足らずで休業。

   ・明治23年  (1890)

     郵便報知新聞社(のちの報知新聞社)社長、矢野龍渓が「新聞用達会社」を創業。

     郵便報知新聞社と同様に、立憲改進党支持の姿勢。

   ・明治25年  (1892)

     時事通信社と新聞用達会社が合併し、「帝国通信社」(以下「帝通」)誕生。

     初代社長は、新聞用達会社主幹だった竹村良貞が就任。同社の記事は、政府方針に

     反するとして、度重なる発行停止処分を受けた。帝通は官庁の発表記事に強く、新

     聞各社は帝通の記事を欲した。日清・日露戦争を通じ、業務を拡大し、抜きん出た

     存在に成長した。

 当時生まれた通信社としては、他に、

   ・明治23年(1890)、清浦奎吾が警保局の機密費を使い設立した、「東京通信社」、

   ・明治24年(1891)、漆間真学が設立した「日本通信社」、

   ・明治26年(1893)出版界の雄・博文館の大橋左平が設立した「内外通信社」、

   ・明治32年(1899)自由党代議士の星亨が設立した「自由通信社」

 煩雑ですが、通信社が政治家や財閥よって作られる大金を要する会社と理解できました。

 資料ではさらに、政治家とのつながりが語られてます。

 「日本通信社は、明治39年(1906)に、庇護者の伊藤博文が、」「自ら初代統監に就任すると、京城に支局を設置した。」「日本の通信社が、海外に拠点を置いたのは、これが最初である。」

 「内外通信社は、ロイターとの直接契約に成功し、外電を国内に配信した。」「しかし当時は、外電の需要が低く、売り上げは低迷した。」「結果、明治30年(1897)に、博報堂の瀬木博尚に譲渡され、」「昭和30年(1955)に博報堂に吸収された。」

 「自由通信社は、自由党の宣伝機関として機能し、星の死後は、」「西園寺公望がこれを継いだが、関東大震災以後凋落した。」

 ここまでで生き残っている通信社は、時事通信社と、新聞用達会社が合併してできた、「帝国通信社」です。そして出現するのが「電通」です。電通は広告代理店と思っていましたが、通信社の業務も行っていました。

 現在マスコミ界を牛耳るのは、巨大な共同通信社と電通です。知ることは国民の武器でもありますので、次回は電通の誕生について紹介します。

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共同通信社 - 3 ( 通信業界も、弱肉強食の世界 )

2018-06-30 15:57:37 | 徒然の記

 通信社へ好奇心が、予想もしなかった世界へと私を導きます

 無作為に情報を探していますため、どこからの引用なのか忘れていますが、 興味深い叙述を見つけました。

 「国家を代表する、通信社の栄枯盛衰は、往々にして、」「その社が属する、国家のそれと、軌を一にしている。」「即ち、国家の勢力圏の拡大は、通信社の販路の拡大に直結するものであり、」「通信社の配信する記事の増大は、国家の発言力の増大を意味する。」

 国産会社が多い理由は、こう言うところにもあるのかと、納得させられます。

 「国営通信社に、その傾向が顕著であることは、もちろんであるが、」「その他の通信社も、多かれ少なかれ、同様の性格を帯びている。」「フランスのアヴァンスや、日本の同盟通信社は、国家の降伏直後に解散した。」

 「これに対し、アメリカのAPは、第二次大戦後の、国家の隆盛と歩調を合わせて伸長し、」「世界最大の通信社として、躍り出た。」

 前回世界の通信社を調べた時、イギリスにロイター社の名前がないことに疑問を抱きました。私の記憶には、ロイターはイギリス最大の通信社だと刻まれていたからです。日本の同盟通信社もそうですが、ロイターも同じだったのです。

 「国家を代表する、通信社の栄枯盛衰は、往々にして、」「その社が属する、国家のそれと、軌を一にしている。」・・と言うことです。話が横道へそれるとしても、息子たちに伝えるため頑張らなくてなりません。  

 青木周蔵といえば、明治、大正期の外交官であり、政治家です。勲一等を叙勲され、爵位は子爵です。幕末の混乱時に列強に結ばされた不平等条約を、対等のものに改正した功労者の一人として高名な人物です。 

 イギリスのロイターは、日清戦争の末期 ( 1894年 ) に、青木周蔵と五箇条の密約を交わしています。

  1. 青木は、日本政府が公式に発表するニュースを、ロイターだけに提供する。日本の近代化を理解できる出版物と、政治・軍事に関する特別電報とを、ロイターへ送るよう日本政府へ働きかける。
  2. ロイターは、イギリスの政治関係電報を、公表前に青木に知らせる。国益に関わるものは、ロイター社独自に集めた情報も与える。
  3. 日本政府は、毎月50ポンドをロイターに支払う。
  4. ロイターは、日本の財政と商業の必要に応える。
  5. 契約は、明治27(1894)年8月1日から、1年間有効とする。

          明治32 ( 1899 ) 年、ロイターは、日本の国内10紙と契約しています。

 東京日日新聞、日本新聞、萬朝報、東京朝日新聞、毎日新聞、中央新聞、都新聞、国民新聞、中外商業新報、報知新聞、の10紙です。密約の中身を読みますと、ロイター通信社が、英国政府と密接につながっていることが伺われます。 

 通信社と日本政府の密約は世間で公にならないだけで、中身は政府間協定や条約と同じです。

  「通信社はその業務の性格上、膨大な資金力を必要とする。」という説明も、私の予測を裏付けています。しかしその通信社でも国家の消長に左右され、七つの海に翻った「英国旗」が、第二次世界対戦後は威力を失い、アメリカに取って代わられます。

 ロイターは経営不振となり、カナダの通信社に買収され、その後米国の会社に買い取られ、現在のトムソン・ロイターとなっています。この会社の本社が米国でなく、今も、イギリスのロンドンにあるという事情が理解できました。

 「かつて栄華を誇った、同社の一般ニュース部門は、」「1960年代には、不採算部門の烙印を押され、一時は売却すら検討された。」

 ロイターは方向転換し、一般ニュースの提供から経済関連ニュースへと重点を移しました。経済通信部門が隆盛を極め、現在では同社の売り上げの大半を占めるまでに成長し、ロイターの事業規模は、一般ニュース部門ではAPの後塵を拝していますが、社全体ではAPのおよそ10倍に達しているとのことです。

 「今や、経済・金融情報分野の勢力図に、目を向けることなくしては、この業界の全貌を知ることは、できなくなっている。」・・

 金融業界だけが世界を荒し回っているのでなく、通信社業界も、同じ弱肉強食の世界であることが分かりました。この世界の移り変わりの激しさを示す、興味深いデータがありましたので、紹介します。

 明治3 ( 1870 ) 年代の、世界の通信社の支配圏です。

  1. アヴァス:(フランス)

     イタリア、スペイン、スイス、ポルトガル、エジプトの一部、フィリピン、

    ラテン・アメリカ諸国

  2. ヴォルフ:(ドイツ)

     オーストリア、オランダ、北欧、ロシア、バルカン諸国、

  3. ロイター:(イギリス)

      大英帝国、トルコ、エジプトの一部、中国、日本
 

 3大通信社が、世界市場を3分する体制が確立し、アメリカのAP ( Associated Press )は、まだ遅れを取っていました。しかし第二次世界大戦でアメリカが台頭し、世界市場は一変します。

  ドイツのヴォルフも、フランスのアヴァスも社名がなくなり、ロイターは社名が残っていても、今は米国の会社です。情報が少ないため、私たちが知らないだけで、通信社業界は、世界支配をめぐる各国の戦場だったのです。

 ここまで分かったところで、いよいよ次回から、本題の共同通信社へと移りたいと思います。

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共同通信社 - 2 ( 通信社の社名を表示しない、地方紙 )

2018-06-30 08:16:43 | 徒然の記

 本日は世界のどのような国が、どんな通信社を持っているのか、というところから始めます。以下が現在の世界にある、通信社の一覧です。

  [ ア ジ ア ]

   日 本   共同通信社  時事通信社 ラジオプレス  東京ニュース通信社

       JX通信社

   韓 国   聯合ニュース

   中華民国  中央通訊社

   中 国   新華社  中新社

   北朝鮮   朝鮮中央通訊

   ロシア   RIAノーボスチ  インテルファックス通信

   ラオス   ラオス通信社

   インド   PTT通信(PTI)  インド連合通信(UNI)

  [ 南北アメリカ ]

   アメリカ  AP通信   トムソン・ロイター  UPI通信社

   カナダ   カナディアンプレス

   アルゼンチン テラム通信

  [ ヨーロッパ ]

   ドイツ    EPA通信  ドイツ通信社
 
   フランス   フランス通信社 ( AFP通信 )
 
   イタリア   ANSA
 
   ロシア         ロシアの今日  イタルタス通信  インテルファックス通信
 
   ウクライナ  ウクライナ独立通信社
 
   ポーランド  ポーランド通信社
 
   ハンガリー  ハンガリー通信 ( MTI )
 
   アゼルバイジャン  アゼルバイジャン国営通信

  「日本の通信社は、1940 ( 昭和15 )年代に、国策通信社である同盟通信社が、ほぼアジアを制覇し、」「日本国外に満州国通信社、蒙疆通信社を置き、中国、ヨーロッパにも、」「日本の目と耳となる、特派員が情報網を形成していた。」

 共同通信社の前身が。同盟通信社だったことが分かります。

 「同盟は、7大通信社の一角を占め、ロイター、AP通信とも、互角に勝負ができる、大通信社を形成したが、」「第二次世界大戦後、古野伊之助が、同盟を分割した。」

 「政治や社会、国際ニュースを扱い、社団法人の形態を取る共同通信社と、」「経済ニュースと、出版を手掛け、株式会社の形態を取る時事通信社の2社が、誕生した。」

 戦前の同盟通信社は、世界の7大通信社の一角を占めていました。しかも国策会社だったとすれば、普通の会社ではありません。

 「共同通信社は、地方紙などの加盟社から、定期的・継続的な収入を得て、」「経営が、比較的安定している。」

  「日本の通信社は、特に地方紙において、その役割が大きく、」「国内の政治、経済、スポーツ記事、」「そして、世界の通信社からのニュース等を、地方の新聞社、」「放送局等に配信する役割を、担っている。」

 「また、加盟社が取材したニュースを、他の加盟社へ配信したり、」「船舶などへの、ニュース配信業務も行っている。」

 新聞だけでなく地方の放送局や、船舶にも配信しています。

 「欧米の主要紙においては、文責を明確にするため、配信記事には、」「配信した通信社の、名前が付されるのが一般的である。」「これに対し、日本では、沖縄県を除き、」「配信記事であることを示す、通信社名を表記することは、まれである。」

 「共同通信社の定款によれば、共同通信社が配信した記事を、」「加盟新聞社に供給する場合には、『共同通信』の社名をつけないといけない、 と規定がある。」

 「 しかし、記事を提供されている地方紙では、この規定は遵守されていない。」「配信元の社名表記がないため、一般読者からすると、あたかも独自に、取材・制作した記事に見えてしまう。」

 「これは日本独自の慣行であり、通信社側も、黙認していることではあるが、」「社名が本来負っているはずの、文責があいまいとなり、問題が生じたとき、」「責任の所在が、不明確になるという弊害がある。」

 千葉日報の記事に、通信社名が付記されていたり、なかったりする理由が分かりました。何も知らない読者は、社名の無い記事は、購読している新聞社の取材だと勘違いします。一流新聞社と同じ取材力を持っていると思いますが、地方紙はそうした読者の誤解を期待しています。

 零細地方紙の内情を知ると、通信社を取り巻く状況がますます知りたくなります。続きは、次回といたします。

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