『中央公論』と言えば、昔から反日・左翼と呼ばれる、学者や評論家、文化人たちが集まる、月刊誌です。論文を連載した中根氏が、その仲間であるのは間違いありませんし、東大教授という肩書にも引っかかります。
しかし、氏の人柄がそうさせるのか、それとも共同通信社が方針を変えたのか、いつものような反日・左翼のトーンがありません。
例えば氏は、次のように語ります。
「インドと英国を知ってから、日本を見ると、」「日本の特殊性に自然と気づいたわね。」
「日本では組織の成員に、プライベートを含めた全人格的投入を求め、」「タテにつながった個人が、感情的に結びつく、」「日本的な集団がある。」
これまでの反日・左翼学者は、こういう言い方をしません。インドは素晴らしい、英国は優れている、それに比べると、日本はダメです。遅れています。考え方が狭いと批判し、否定する所から始めます。
「日本の特殊性に、自然と気づいたわね。」、と言われると、素直に受け止めます。日本がダメで、インドや英国が数段優れていると、氏はそのような比較論を述べていません。そうなりますと、インドや英国にはまた、日本と違った特殊性がありますねと、対話する気持ちになります。
「日本では組織の成員に、プライベートを含めた全人格的投入を求め、」という氏の分析についても、武家社会だった昔はそうかも知れませんが、今はそんな思考が薄れていますと、穏やかに話せます。
共同通信社の今までのスタイルですと、反日・左翼学者の意見に乗り、一緒になって日本の悪口を書いていました。
今回の記事は、「両論併記」までいかなくとも、読者を不快にしたり、無闇に煽動したりしないので、好感が持てます。「なんだ、やればできるではないか。」と、共同通信社に言いたくなりました。
「ヨコの連帯意識が育たず、職種別の労働組合ができにくい。」、という氏の意見にも、確かにそうですとうなづけます。私たちはまず、自分の所属している組織や集団を、大事にします。簡単に言えば、自分の家庭、自分の会社、自分の母校、自分の郷里と、だんだん大きくなり、最後は自分の国になります。だからと言って、他人の家庭、他人の会社、他人の母校に無理解、無関心というのではありません。
それでも氏の言う通り、ヨコのつながりとしての、職種別労働組合が育っていません。専門職より、ゼネラリストを重用すると言う日本人の特性から、専門職が育ちにくい、風土のせいかも知れません。
例えば、運転手という職種は、A社にもB社にもC社にもありますが、彼らは会社の枠を超え、運転手という職種で強力な組合を作りません。
あくまでも彼らは、A社の運転手でありB社の運転手であり、C社の運転手だと、一人ひとりが思っています。分かりやすいように、運転手を例に挙げましたが、他の職種でも似たようなものでしょう。会社が従業員に、プライベートを含めた全人格的投入を求めているから、そうなっているのでなく、それこそ氏の言うように、「自然と」そうなっている訳です。
これを、封鎖的で、逃げ場の無い負の側面と取るのか、居心地の良い社会と受け止めるかは、個人それぞれです。ましてこの一事で、日本をインドや英国と比較し、優劣をつけられたら、たまったものでありません。氏は、そのような意見を展開していませんが、これまで共同通信社が掲載した反日・左翼学者は、大抵その類 ( たぐい ) でした。
「タテ社会」を軍国主義に結びつけ、個人を押さえつけた軍部が、無謀な戦争をし、国を誤らせたと・・これがいつものパターンです。私が「中根千枝さん」の記事を、飽きもせずブログにしている理由が、ここにあります。
一足飛びに、「両論併記」までいかなくとも、「なんだ、やればできるではないか。」と、共同通信社に言いたくなっています。記事の最後の文章も、突然変異とか思われるほど、穏やかです。
「社会構造は、簡単に変わらない。」「それでも楽観的だ。」
こう言って、千枝さんの言葉で、記事を締めくくっています。
「日本にも、柔軟な考え方の人が増えています。」「国際的な接触の機会が増えれば、少しずつ良くなっていくでしょう。」
中根氏は、頑迷固陋な保守たちを頭におき、喋っているのでしょうが、言葉だけなら、反日・左翼の教条主義者にも当てはまります。右も左も、現在の日本人は、ハッキリ言ってどっちもどっちです。
私は氏の言葉の向こうに、先日読んだ、佐藤真知子氏の『新・海外定住時代』に描かれた、「精神移民」を思い浮かべています。彼らは、貧しさのため移住した、昔の「経済移民」でなく、経済大国となった日本が生み出した、新しい日本人です。前回のブログから、私の言葉を転記します。
「つまり『精神移民』は、変化する日本国民であり、」「オーストラリアだけでなく、世界各国にいるのです。」「彼らは、世界を眺めるだけでなく、世界の人々と会話し、見聞を広めています。」
「井の中の蛙でなく、臆せず自己主張することの重要性を、体で覚えています。」「日本を批判し、蔑視する反日『精神移民』もいますが、多くの彼らは、」「異国から、自分の国を温かい目で見ています。」
彼らのほとんどは、やがて日本へ戻ってくるのですから、私は愛国の彼らと、新しい日本が作れると期待しています。「日本にも、柔軟な考え方の人が増えています。」「国際的な接触の機会が増えれば、少しずつ良くなっていくでしょう。」・・氏の言葉は、私の言葉でもあります。
今後も共同通信社が、このような記事を日本全国に届けてくれたらと願いつつ、ブログを終わります。