ここまでの調査・研究を進めながら、なぜ環境省と経済産業省が後ろ向きになったのか。
青山氏の意見が根拠のある「エネルギー論」だと確認できましたので、今回からは青字の「疑問」を解いていきたいと思います。
「青山さんが議員になれば、経済産業省が変わる。自由民主党が変わる」
こう言って議員なることを強引に安倍首相から勧められたと、青山氏が自分の動画でよく語ります。自慢話と聞き流していましたが、安倍氏は党内に青山氏を引き込み、「メタンハイドレート」の開発を強力に進めたかったのではないでしょうか。
「安倍の強権政治を許すな。」「安倍一強」と、在任中はマスコミに叩かれ野党に攻撃されていましたが、前回述べたように事実は案外無力だったのかも知れません。
一方で「メタンハイドレート」の実用化に対する、強力な反対意見もありました。明治大学の松本良教授と東京財団研究所・主任研究員・平沼光氏の見解です。回り道になりますが、二人の人物の意見を紹介します。
〈 明治大学・松本良教授の意見 〉・・「研究・知財機構ガスハイドレート研究所」所長
・資源としては有用なものではありますが、実際に使えるようになるまでは、まだ数十年はかかるでしょう。
・もともと私の専門は、地質学と堆積学です。海底にたまった堆積物や、隆起して地表に上がった地層などを分析し、地球の歴史を解明するという研究をしていました。
・その中で、海底で奇妙な現象を見つけたんです。その原因を突き詰めたことから、海底下にガスハイドレートが存在する可能性に気付いたんです。
・ガスハイドレートとは、メタン、エタン、二酸化炭素などのガスと、水が作る氷状の固体結晶。メタンを主成分としているために、日本では「メタンハイドレート」と呼ばれることが多い。
・1立方メートルのメタンハイドレートが分解すると、160立方メートルのメタンガスが発生する。そのガスを回収できれば、精製する必要のないエネルギー資源になるわけだ。
・しかし、問題は存在する場所にある。
・太平洋側、南海トラフ(四国南方の海底にある深い溝)に、砂層型(さそうがた)と呼ばれるメタンハイドレートが存在することが分かっている。
・それがあるのは、水深約1000mの海底面の、さらに約300m下にある砂層。深海だけに、採掘どころか探索にもかなりの困難がつきまとっているのだ。
・東日本大震災以降原発が停止されたため、国内の天然ガス使用量は2倍くらいになっています。メタンハイドレートは天然ガスですから、それを日本で採れればと、期待できるかもしれない。
・でも現実的には、天然ガスの役割の一部分を、メタンハイドレートが果たすというくらいでしょう。
・メタンハイドレートさえあれば、日本のエネルギーは大丈夫だというのは、幻想ですね。
・存在している資源の全てが、回収できるわけじゃない。これを輸出できてなんていうのは、現実を知らない人だけです。
・そう言って、一般の人を惑わせてはいけないでしょう。
・資源については、間違ったことが平気で流されて時にはそれが、政策にまで影響してしまうということがあるので、関係者には、科学的事実を正しく理解し、共有してほしいと思います。
平成29年のインタビュー記事ですが、当時はまだ深海底の資源開発の実用化について、技術面の困難さが大きく、松本教授の意見には説得力がありました。
安価な資源が無尽蔵に存在すると言っても、取り出すための費用が巨額になるのなら、外国から買う方が安くなるからです。
今では無人の海底探査機が開発され、回収にも具体的な方法が考案されつつあると青山氏が反論しています。初期投資がかかることは青山氏も認めていますが、実用化が遅れている原因は、回収実験に予算を投じない経済産業省の消極性にあると自分の動画で説明しています。
どちらの意見が正しいのか「ねこ庭」は判断できませんので、次の意見を紹介します。
〈 東京財団政策研究所・主任研究員・平沼光氏の意見 〉
意見を紹介する前に、東京財団政策研究所を簡単に説明します。
・氏が所属する「東京財団政策研究所」は、非営利・独立の民間シンクタンクとして、外交・安全保障、経済・社会保障、環境・社会分野の政策提言や、普及活動を国内外で実施している。
・急速にグローバル化する世界において、人類の直面する地球的諸課題を解決し、知的貢献のリーダーシップを取ることを目指し、ボートレース業界の総意により、日本初の世界レベルの独立的シンクタンクを目指し、平成11年に国土交通省により認可・設立された。
・平成30年に、「 東京財団政策研究所 」に名称変更した。
つまり日本財団は、「日本船舶振興会」が名称変更した組織です。
同会は海洋開発市場で必要とされる技術力の向上や、専門知識を持った海洋開発技術者の育成に取り組んでおり、「東京財団政策研究所」の設立はこの方針に沿ったものです。
これで「日本のエネルギー問題」には、国交省とボートレース協会も参加していることが分かりました。
平沼光氏の意見はずっと新しく、令和3年に中央公論 3月号に掲載されたものですが、スペースが無くなりましたので次回にいたします。