1. 『日清戦争』 工学院大学教授 松下芳雄
2. 『日露戦争』 東京大学教授 下村冨士夫
3. 『第一次世界大戦』 早稲田大学教授 洞富雄
4. 『満州事変』 武蔵大学教授 島田俊彦
5. 『中国との戦い』 評論家 今井武夫
6. 『太平洋戦争(上)』 早稲田大学助教授 大畑篤四郎
7. 『太平洋戦争(下) 』 早稲田大学助教授 大畑篤四郎
予定していた本を、本日読み終えました。左翼系の学者とマスコミが言う「忘れてはならない戦争」とは、上記の戦争のどれを指しているのでしょうか。
大きく分けると、二つの考え方があるようです。
1. 保守系学者
・幕末の下関戦争、薩英戦争を含む、上記 1. 以降、7. 番目までの戦争を言う
・ひっくるめて「大東亜百年戦争」
・単に「大東亜戦争」と言う場合は、昭和16年から昭和20年にかけ、日本と連合国が戦った戦争
・連合国側は「太平洋戦争」、日本は「大東亜戦争」と言った
2. 左翼系学者
・左翼系学者 A は、上記 1. 以降、7. 番目までの戦争をひっくるめた「戦争」を言う
・左翼系学者 B は、東京裁判の対象となった「太平洋戦争」を言う
私の知る限りでは、左翼系学者 Aは反日でなく、日本を大切にする人物が多く、反日となるのは左翼系学者 Bです。左翼系学者は、A、Bに拘らず、弱い者に愛を注ぐ博愛主義者が多く、もともと悪人ではありません。
貧しくて弱い立場にいる人間を、酷使する権力者(経営者等)を許さない点では、保守も左翼もありません。私と彼らが共通するのは、金儲けだけを考え、人間を無視する権力者(経営者等)への怒りです。かって自民党の金権腐敗政治を嫌悪し、国民の多くが民主党に投票したのは、ここに共通点がありました。
保守と左翼の違いが、どこから生じるかといえば、次の2点でしょう。
1. 保守は、八百万( やおよろず )の神が存在する「神道」の流れを汲む、土着思想を信じる
2. 左翼は、マルクス主義と言う「一神教」を、科学的社会主義として信じる
簡単言えばこう言う話ですから、左翼系学者は、弱い者に愛を注ぐ人道主義者が多く、学生時代の私や息子たちが、彼らの意見に惹かされても不思議はありません。
大切なことは、二つの思想の「行き着く先」がどこなのかです。極論に走れば、いずれの思想も国民を不幸にします。
1. の極論が、異論を許さない「神州不滅の大日本帝国論」
2. の極論が、異論を許さない「科学的社会主義マルクス論」
「イギリス、オランダ、フランスなどの植民地として、圧政に苦しんでいた南方諸民族の間には、」「兼ねてから民族自立を求める風潮が強く、特にロシア革命後は、」「共産主義的思想を拠り所とした、民族解放運動が根強く続けられていた。」
解説を読めば分かる通り、大畑氏は左翼系学者で、「共産主義的思想を拠り所とした、民族解放運動」を評価しています。強国に抵抗する手段を持たず、支配された弱い彼らの独立への共感は、共産主義的思想を拠り所にしなければ、私も同じです。かって伊藤博文は、満州について次のように述べています。
「満州は、決して我が国の属地ではない。」「属地でもない場所に、わが主権の行わるる道理はないし、拓殖務省のようなものを新設して、事務をとらしむる必要もない。」「満州の行政責任は、よろしくこれを清国に負担せしめねばならぬ。」
民族独立の重要性を認め、満州国の創立に賛成しないのは、左翼系学者だけでないと知っておくことも大事です。
左翼系学者・東大教授加藤陽子氏が、「太平洋戦争」について次のように解説しています。
「人間の常識を超えて、学問から導かれる判断をも超えて、戦争は起こされた。」「日本は、世界を敵としてしまった。」
「当時のアメリカと日本の国力の差は、国民総生産では12倍、鋼材は17倍、」「自動車保有台数は160倍、石油は721倍あった。」「これだけの差があれば、普通は戦争など考えない。」
「当時の指導者たちは、絶対的な差を克服するのが「大和魂」だとした。」「国民をまとめるには、〈 危機を扇動する方が良い 〉と判断した。」
国運を賭した大戦争と言われた、日清・日露戦争時の数字を紹介しながら、氏の意見の妥当性を考えてみましょう。青字が日本で、黒字が清国、ロシアの数字です。
日清戦争 兵力 24万人 63万人 戦艦 6万トン 8.5万トン
日露戦争 兵力 109万人 208万人 戦艦 26万トン 51万トン
日清戦争当時、眠れる獅子と称された清国のGDPは、世界一と言われ、日本はその5分の1でした。ロシアのGDPは1063億ドルで、日本はその10分の1の、370億ドルでした。
これらの数字を比較し、氏は日本の指導者たちの無謀さを語り、戦争責任に言及します。しかし私は別の観点から、大東亜戦争時の指導者の無謀さを説明します。次回は、それについてご報告いたします。