ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『太平洋戦争 - 下 』 - 7 ( 戦争指導者の無謀さ批判について )

2021-12-14 17:16:48 | 徒然の記

   1.  『日清戦争』   工学院大学教授 松下芳雄

   2.  『日露戦争』   東京大学教授 下村冨士夫

   3.  『第一次世界大戦』 早稲田大学教授 洞富雄

   4.  『満州事変』   武蔵大学教授 島田俊彦

   5.  『中国との戦い』  評論家 今井武夫

   6.  『太平洋戦争(上)』 早稲田大学助教授 大畑篤四郎

   7.   『太平洋戦争(下) 』 早稲田大学助教授 大畑篤四郎

 予定していた本を、本日読み終えました。左翼系の学者とマスコミが言う「忘れてはならない戦争」とは、上記の戦争のどれを指しているのでしょうか。

 大きく分けると、二つの考え方があるようです。

 1.  保守系学者

   ・幕末の下関戦争、薩英戦争を含む、上記 1. 以降、7. 番目までの戦争を言う

   ・ひっくるめて「大東亜百年戦争」

   ・単に「大東亜戦争」と言う場合は、昭和16年から昭和20年にかけ、日本と連合国が戦った戦争

   ・連合国側は「太平洋戦争」、日本は「大東亜戦争」と言った

 2.  左翼系学者

   ・左翼系学者 A は、上記 1. 以降、7. 番目までの戦争をひっくるめた「戦争」を言う

   ・左翼系学者 B は、東京裁判の対象となった「太平洋戦争」を言う

 私の知る限りでは、左翼系学者 Aは反日でなく、日本を大切にする人物が多く、反日となるのは左翼系学者 Bです。左翼系学者は、A、Bに拘らず、弱い者に愛を注ぐ博愛主義者が多く、もともと悪人ではありません。

 貧しくて弱い立場にいる人間を、酷使する権力者(経営者等)を許さない点では、保守も左翼もありません。私と彼らが共通するのは、金儲けだけを考え、人間を無視する権力者(経営者等)への怒りです。かって自民党の金権腐敗政治を嫌悪し、国民の多くが民主党に投票したのは、ここに共通点がありました。

 保守と左翼の違いが、どこから生じるかといえば、次の2点でしょう。 

   1. 保守は、八百万( やおよろず )の神が存在する「神道」の流れを汲む、土着思想を信じる

     2. 左翼は、マルクス主義と言う「一神教」を、科学的社会主義として信じる

 簡単言えばこう言う話ですから、左翼系学者は、弱い者に愛を注ぐ人道主義者が多く、学生時代の私や息子たちが、彼らの意見に惹かされても不思議はありません。

 大切なことは、二つの思想の「行き着く先」がどこなのかです。極論に走れば、いずれの思想も国民を不幸にします。

  1. の極論が、異論を許さない「神州不滅の大日本帝国論」 

  2. の極論が、異論を許さない「科学的社会主義マルクス論」

 「イギリス、オランダ、フランスなどの植民地として、圧政に苦しんでいた南方諸民族の間には、」「兼ねてから民族自立を求める風潮が強く、特にロシア革命後は、」「共産主義的思想を拠り所とした、民族解放運動が根強く続けられていた。」

 解説を読めば分かる通り、大畑氏は左翼系学者で、「共産主義的思想を拠り所とした、民族解放運動」を評価しています。強国に抵抗する手段を持たず、支配された弱い彼らの独立への共感は、共産主義的思想を拠り所にしなければ、私も同じです。かって伊藤博文は、満州について次のように述べています。

 「満州は、決して我が国の属地ではない。」「属地でもない場所に、わが主権の行わるる道理はないし、拓殖務省のようなものを新設して、事務をとらしむる必要もない。」「満州の行政責任は、よろしくこれを清国に負担せしめねばならぬ。」

 民族独立の重要性を認め、満州国の創立に賛成しないのは、左翼系学者だけでないと知っておくことも大事です。

 左翼系学者・東大教授加藤陽子氏が、「太平洋戦争」について次のように解説しています。

 「人間の常識を超えて、学問から導かれる判断をも超えて、戦争は起こされた。」「日本は、世界を敵としてしまった。」

 「当時のアメリカと日本の国力の差は、国民総生産では12倍、鋼材は17倍、」「自動車保有台数は160倍、石油は721倍あった。」「これだけの差があれば、普通は戦争など考えない。」

 「当時の指導者たちは、絶対的な差を克服するのが「大和魂」だとした。」「国民をまとめるには、〈 危機を扇動する方が良い 〉と判断した。」

 国運を賭した大戦争と言われた、日清・日露戦争時の数字を紹介しながら、氏の意見の妥当性を考えてみましょう。青字が日本で、黒字が清国、ロシアの数字です。

 日清戦争  兵力 24万人    63万人   戦艦  6万トン   8.5万トン

 日露戦争  兵力 109万人   208万人   戦艦  26万トン   51万トン

 日清戦争当時、眠れる獅子と称された清国のGDPは、世界一と言われ、日本はその5分の1でした。ロシアのGDPは1063億ドルで、日本はその10分の1の、370億ドルでした。

  これらの数字を比較し、氏は日本の指導者たちの無謀さを語り、戦争責任に言及します。しかし私は別の観点から、大東亜戦争時の指導者の無謀さを説明します。次回は、それについてご報告いたします。

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