ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『太平洋戦争 - 下 』 - 10 ( 大畑氏の 「東京裁判論」 )

2021-12-16 18:51:13 | 徒然の記

  今回は、氏の「東京裁判論」です。私は「復讐裁判」だと考えていますが、氏は「文明による裁判」と述べています。ファシズムの日本が、文明国によって裁かれたと、そういう意味なのでしょうか。

 「ポツダム宣言には、俘虜を虐待する者を含む、」「いっさいの戦争犯罪人に対しては、厳重な処罰を加えるべしと、ある。」「すでにドイツでは、昭和20年11月20日、」「ニュールンベルグ国際軍事裁判所が、開廷されていた。」

 「戦争裁判のうち、最も重要なのはA級戦犯の裁判で、」「極東軍事裁判所条例によれば、平和に対する罪(A)、通例の戦争犯罪(B)、人道に対する罪(C)に関し、」「個人責任を裁くこととしていた。」

 「東京裁判は、昭和21年5月3日に開かれ、この日起訴されて被告席に並んだ者は、」「いずれも日本を動かしてきた人物である。」「中でも発狂した大川周明は、水色のパジャマを着て、」「落ち着かずに座っていた。」

 この辺りは、多くの本が出ていますから、知っている人が多いと思いますが、氏の著書に沿って転記します。

 「原告はアメリカ、イギリス、ソ連、中国、フランスなど、11ヶ国であった。」

 キーナン主席検事の起訴状朗読の後、日本側弁護人の清瀬一郎氏による異議が出されたが、全て却下されます。続いて6月24日に行われたキーナン氏の、冒頭陳述が紹介されています。

 「被告らは、文明に対して宣戦した。」「民主主義とその基礎を破壊しようとして、侵略戦争を計画し、」「準備し、開始した。」「被告らは多くの人々を殺し、征服し、奴隷化してきた。」

 このような理由で日本が裁かれるのなら、イギリス、オランダ、フランスも同罪です。武力に勝る彼らが、無抵抗なアジアの国民を一方的に殺戮し、奴隷化した事実はどうなるのでしょうか。もう一度、先日のデータを確かめて見ましょう。

 〈 イギリスの植民地と統治期間 〉

   ビルマ ( 124年間  )   マレーシア ( 123年間  )  インド ( 99年間  ) 

 〈 オランダの植民地と統治期間 〉

   インドネシア ( 300 ~ 350年間  )  

 〈 フランスの植民地と統治期間 〉

   ラオス ( 80年間  )   カンボジア ( 60年間  )  ベトナム ( 79年間  ) 

 「今行われようとしているのは、通常の裁判ではなく、」「全文明を破滅から救うための、文明の断固たる闘争の一部である。」「被告らを裁くのは、文明である。」

 キーナン氏がこのような演説をしていたとは、知りませんでしたが、現在氏については、次のような情報があります。

 「キーナンは、警察業務を統括する司法省刑事部局長に就任し、ギャングや誘拐犯等の検挙、取り締まりを指揮し、司法長官補にまで昇進した。」

 「第二次大戦後に、それまでの功績を買われ、トルーマン大統領から、」「日本の戦争犯罪者捜査の、法律顧問団団長に任命された。」

 「キーナンは司法省での経験を活かし、日本軍閥に対して、」「〈 ギャング退治 〉の意気込みを以って臨み、満州事変前後から敗戦までの日本の動きを、」「〈 犯罪的軍閥 〉による、侵略戦争の推進と考えた。」

 いくら左系の学者と言っても、ここまで自分の国がおとしめられて、黙っていられるものでしょうか。氏が本を書いた当時は、まだ、キーナン氏に関する情報が公開されていなかったのかもしれません。

 「この裁判で、国民の知らない多くの事実が明るみに出された。」「開戦に至るまでの事情、経過や、占領地での残虐行為が、」「これほどまとまった形で、国民に知らされたことはなかった。」

 裁判資料に基づいて、氏の著作が執筆されているのだと思いますが、「文明による裁判」という言葉は、どこから生まれているのでしょう。占領地の残虐行為とは、おそらく「南京事件」を指しているのでしょうが、今では捏造事件という意見が大勢を占めています。

 「この裁判では、多くの被告の責任逃れの発言が目立った。」「ドイツの裁判では、被告は、自分がやった、」「自分が指示したと、自己の行動に確信を持っているように、」「胸を張って答えた。」

 「これに対して東京裁判では、被告や弁護側の主張の辻褄を合わせていくと、」「最終責任が、どこかへ行ってしまうか、」「わからない例が多かった。」「しいて言えば、天皇の責任ではないということであった。」

 独裁者のいたドイツと日本を、一緒にして語るのは間違いだと、まだ氏は気づいていません。陸海軍の対立をあれほど説明していながら、キーナン検事の法理論の破綻に触れません。

 「キーナン検事の法理論」とは、

 「28人の被告の、全面的共同謀議により、」「侵略戦争が計画され、準備され、実施された」、という理論です。総理大臣が短期間で何人も変われば、責任の所在も不明になって当然です。ヒトラーという一人の独裁者が、戦争の開始から終了までいた国と、日本の違いを、氏はなぜ読者に説明しないのでしょう。

 「裁判では、連合国側の不法行為や、戦争責任の問題は取り上げられず、」「証拠の採用や、さらには判決の内容にも問題が多く、」「文明の名を借りた報復裁判、勝者の裁判という批判も高い。」

 「しかしそのために、国民を戦争と破壊に追いやった、」「指導者の責任追及を忘れ去ったり、」「戦争法規違反や、占領地での不法行為、」「残虐行為に、頬かむりすることがあってはならない。」

 これが、氏の「東京裁判論」のまとめです。キーナン検事の冒頭陳述と双璧をなす意見、と私には思えます。やはり氏は、駆除すべき「反日左翼学者」です。あまり自分の意見を述べますと、GOO事務局から「不適切表現」の指摘をされるので、ここで終わりましょう。( あやかさんへのご返事は、諸般の事情により、今回のブログで替えさせて頂きたく。ご理解ください。 )

 左系学者について、私が説明しなくとも、「ねこ庭」を訪問される方々には伝わると思います。長いシリーズも本日で終わり、明日からは別の本を読みます。

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『太平洋戦争 - 下 』 - 9 ( 大畑氏の「太平洋戦争論」 )

2021-12-16 08:36:13 | 徒然の記

 前回は、加藤教授の「戦争時の指導者の無謀さ批判」を紹介しました。本日は、大畑氏の「太平洋戦争論」を紹介します。

 「この戦争では、自由主義 ( 資本主義 ) 陣営と社会主義国のソ連とが手を握り、」「ファシズム陣営に対抗し、共同して戦った。」「それは国家的利害にもよるが、やはりファシズムが、」「人類にとって、忌まわしいものだったからである。」

 「ファシズム」と言う言葉を、氏がどのような意味で使っているのか。最初に浮かぶ疑問です。三省堂の大辞林には、次のように書かれています。

  1. 「第一次大戦後に現れた、極端な全体主義的、排外的政治理念、またその政治体制」

  2. 「自由主義を否定し、一党独裁による徹底した専制主義、国粋主義をとり、」「指導者に対する絶対的服従と、反対者に対する過酷な弾圧政策」」

  3.「対外的には反共を掲げ、侵略政策を取ることを特徴とする」「イタリアのファシスト党に始まる。」

 3. 番目の説明がなければ、習近平氏の中国のことか、あるいは、金正恩氏の北朝鮮かと、そんなふうに受け取る人がいるのではないでしょうか。

 「ファシズム」と言う用語が、世界で一人歩きし、多くの人が相手を批判する時に使う便利な言葉になっています。ネットで調べますと、次のような説明が並んでいます。

 1.「ファシズム」という用語は、単なる全体主義や軍国主義の意味で使われたり、特に社会主義の立場からの、政治的なレッテル貼りにも多く使われた。

 2. 第二次世界大戦中になると、連合国側が、ファシズム・ファシストを厳密な意味ではなく、枢軸国とその国民に対する一、般的な悪口や蔑称として使用するようになった

 3. 政治学の論文では、通常は権威主義的な傾向を意味するが、左翼や右翼両方の信奉者が、敵対者を中傷するための軽蔑的な悪口としても使っている。

 息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々には、物好きで疑問を持っているのでないことが、分かってもらえたのではないでしょうか。「大辞林」ではファシストの例として、イタリアを上げていますが、多くの場合はヒトラーのドイツです。

 そのヒトラーが、昭和2年の演説で、ナチスは「社会主義者」だと語っています。演説の一部を紹介します。

 「我々は社会主義者である。」「我々は、その不公正な賃金や、人間を責任感や能力でなく、」「富と財産により不適切に評価し、経済的な弱者を搾取している、今日の資本主義経済体制を、敵とする。」

 「そして我々は、この体制をいかなる場合でも、完全に打倒する事を決定する。」

 ヒトラーは、ドイツのナチスが「国家社会主義」であると主張し、当然ですが「ファシズム」とは言っていません。

 このように掴みどころのない言葉ですから、読者である若者たちのためには、定義をすべきではなかったのかと思います。

 「人類にとって忌まわしいファシズム」と簡単に言い、戦前の日本を含めているのだと思いますが、これでは私の疑問が解けないままです。

 日本にとって大東亜戦争の大義は、西欧列強とソ連の侵略から日本を守るための、「自衛戦争」でした。日韓併合、満州国の独立と進むにつれ、中国と韓国にはこれが、「日本による侵略」となります。歴史を知らない学生も読むのですから、いつから日本が「ファシズム」の国となったのか、どうしてそうなったのかを説明すれば良いのに、と思います。

 氏の「太平洋戦争論」には、続きがあります。

 「戦争中手を握っていた、この二つの勢力は、」「戦後、激しく対立するようになり、」「社会主義陣営は、一層強化されるようになった、」「アメリカは反ファシズムよりも、反共を国策の基本とし、」「今や、反共ならどんな政権でも良いと、言われるほど、」「ファッショ的な右翼政権でも、支持と援助を与えるようになった。」

 ここからは、「人類にとって忌まわしいファシズム」を支援する、アメリカについての説明です。

 「そう言う政権は、多く後進国・低開発国に見られるが、」「それらの地域では、同時に民族解放闘争が進展している。」「まだ国内の建設は不十分であるが、反帝国主義、反植民地主義、民族独立主義を叫ぶ、」「アジア・アフリカの勢力が、国際政治に大きな発言権を持つようになった。」

 氏は左系の学者ですから、アメリカに対峙する勢力を評価するのは当然です。アメリカは、「人類にとって忌まわしいファシズム」を支援する国なのです。

 「その中にあってアメリカは、極めて保守的である。」「日本もまた、そうしたアメリカの陣営に組み込まれている。」「これが現代の日本を取り巻く、国際的な環境である。」「この現実をしっかりと見つめ、世界の中での、」「これからの日本の進路を、見据えなければならない。」

 氏はこのように言いますが、私の疑問はそのままです。「日本は本当に、ファシズムの国だったのだろうか。」

 三省堂の大辞林の説明をもう一度、読みましょう。

「自由主義を否定し、一党独裁による徹底した専制主義、国粋主義をとり、」「指導者に対する絶対的服従と、反対者に対する過酷な弾圧政策」」

 この説明が正しいとするのなら、日本は「ファシズム」の国ではありません。「指導者に対する絶対的服従」、「反対者に対する過酷な弾圧政策」」をとった人物は、日本の歴史にいません。それをしているのは、習近平氏の中国であり、金正恩氏の北朝鮮であるような気がします。

 氏の説明が十分でないため、私ばかりでなく、氏の著書を読む読者も疑問を抱くのではないでしょうか。原因は、曖昧な「ファシズム」と言う言葉を、定義せずに使ったところにもあります。

 次回は、もう少し、氏の意見に耳を傾けたいと思います。

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