田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔闘学園/吸血鬼浜辺の少女外伝 麻屋与志夫

2008-09-07 06:05:19 | Weblog
 ひき返すなら。
 いまだ。       
 妖気は三津夫にだけに感じられる。  
 三津夫をおそった。
 動悸が高鳴る。
 警備員を警戒するなどという次元のものではない。
 とんでもないものが、屋上にはおれたちをまちうけている。
 三津夫の背を寒気が走った。
 おぞましいものに見詰められている。
 おののきが体を震わせている。
 おぞましいものに出会う予感が体をゆさぶっている。
 やめるんだ。
 やめたほうがいい。
 やめろ。
 昇るのはいますぐやめろ。

 ひきかえせ‼
 
 邪悪な波動が屋上から迫ってくる。    
 害意のシャワーだ。

 三津夫はびしょぬれだ。

 恐怖にガクガ震えた。 
 あきらかに。
 なにか。
 悪意を。
 もったものが。
 悪意の塊が。
 まちうけている。       
 先に行く二人は。
 感じないのか。
 わからないのか。

 鉄骨の階段が飴のようにずるっとのびた。
 踏みしめるスニカーの下で軟泥のようにぬかるみ。
 ずるっずるっと下にのびていく。
 いつになっても前をいく武と番場に追いつけない。

 三津夫は固まっていた。
 先に進めないでいた‼

 屋上への最後の段がせまった。
 右足をのばした。
 左足をふみだす。
 手摺もつきた。
 武のペンシルライトが蛍火のように光っている。
 三津夫の心拍が高鳴る。

 上りつめて見下ろす。
 その高さのためか。
 地上までの薄闇が。
 はるかな距離に見える。
 最後の段をのぼった三津夫がつぶやく。
「なんだ。これは……」
 声には。
 おどろき。
 想像をこえた邪悪なものが――。
 そこには存在していた。

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