田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔闘学園/浜辺の少女外伝 麻屋与志夫

2008-09-13 05:58:08 | Weblog
累々とそびえる黒い袋。
雨の音だけがしていた。     
聴覚だけが、麻屋を現実につなぎとめておく。                   
獣のすすり泣きのような声が聞こえてきた。
……邪悪な気配をあたりにふりまいている。
人型の影は背伸びをしていた。
ビーと音波のようなささやき声が。
麻屋の耳にひびいてきた。
(なんだ日本に帰っていたのか。おまえにはおれの形が見えるのか。なら……話ははやい。ここで見たことは、とくにおれのことは忘れるんだ。おれは傭兵Aとでも覚えておいてくれ)                
あまり損傷のない肉体が怖かった。    
死んでいたはずだ。
それが、こうして死体袋を内側から鉤爪で切り裂いて出てきた。

死体袋は黒い子宮。
それを内側から切り裂き再生した。
吸血鬼???

おれはどうかしている。
悪い夢を見ているんだ。
こんなことがあるわけがない。      

父が鹿沼土の窪みにのみこまれていく。
悲しい目撃の体験が。
思い浮かんだ。
はじまったのだ。
またあの超常現象が。

逃げていく人型の影を。
じっと見詰めていた。
恐怖で足がすくむ。
身動きできなかった。
悪夢のようなクリーチャだ。
害意をあたりにふりまく。
体が臭い。
口が臭う。
汚水のような臭いの流れがあとにできる。
こちらを威嚇して、シュシュと唸り声をたてていた。
声をだしながら移動していた。
Aは4メエトルもある金属ネットヘンスをらくらく飛び越えた。
麻屋は逃げ出した。

       応援ありがとう
    にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ