田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔闘学園/吸血鬼浜辺の少女外伝 麻屋与志夫

2008-09-16 16:20:18 | Weblog
それこそ犬死だ。
生きぬくのだ。
いま拘束は全部といてやる」
 
ケイコが犠牲となって死ねば災いは起こらない。
われわれは、地竜をあやつることができる。
地震を起こすとができる。    
那須岳をふたたび噴火させることもできる。
黄金の九尾の狐。
玉藻の前のご加護のもとに。
われら千年の時空をこえて。
よみがえりしもの。
犬飼村のおまえらの先祖が。
われらに弓ひいた罰は。
おまえの体と血で。
あがなってもらう。

そうおどかされた。

戦闘服をきた「妖狐」の集団に。

そうおどかされた。

それで、どうしていいかわからないで家出したというのだ。    
三津夫に相談にいった。         
会えずに帰るとき、誘拐されて……。   
妖狐のヤツラだ。
吸血鬼だ。
それで、この御殿山にくる道をたずねたのだ。
ここは吸血鬼の基地だ。
あれからずっと、この辺りに住み着いていたのだ。
そう、三津夫は理解した。
「ケイコ。間にあってよかった」
麻屋はケイコを抱き起こした。
生贄台から下ろした。
わかった。
もう泣くな。             
「先生、犬死になんで、ジョークとばしてる時かよ」
三津夫が夢中でケイコの頬を差すっている。
血をうしなった青白い顔に赤みが差してきた。
「二荒せんぱい。
死ぬまえに会えてよかった。
せんぱい……。
わたし…。
せんぱいのこと。
……好きです。
スキデス……」
あたりかまわずケイコが泣き出した。
「ケイコもういい。
泣くな。
輸血してもらえば。
すぐに元気になるからな。
死ぬなどと考えるな。
三津夫とわたしをサポートしてくれ」
 
おまえは、犬飼の娘。

九尾の狐をかりたてた犬飼い族の末裔なのだ。
これきしのことで泣くな。 






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魔闘学園/吸血鬼浜辺の少女外伝 麻屋与志夫

2008-09-16 07:37:04 | Weblog
 だが、番場にはまだ異界の気配は感じられない。
「空気が濁っていない。だれかが出入りしている証拠だ」
 じめじめした空気。
 だがたしかに。
 空気は淀んでいない。 

 抜け穴はほどなくつきた。
 御殿山の裾の今宮神社のあたりだ。
「封印を解き。
 この穴にもぐりこむことのできる人間が。
 鹿沼にはいないと思われている。
 なめられたものだ。
 それがさいわいした。
 わたしは、結界をはり。
 長いこと鹿沼の若者のために塾をやってきた。
 こんなちかくに悪意を噴き出す場所があったとはな」
「先生。
 故郷鹿沼のためなら。
 ぼくは先生の教えにしたがい闘います」
 三津夫と番場。
 ふたりが声をそろえて麻屋を支える。
 
 やや広くなった行き止まりに大谷石の台があった。
 生贄台? 
 石室とも見えた。
 
「ケイコさん」
 三津夫がかけよった。
 人型の窪みにケイコが綱で固定されていた。
「だいじょうぶ。息はしている。しっかりろ」
 三津夫が夢中で縛めをとく。
 
 綱は9本あった。
 綱からは血がながれていた。
 綱の先にはそれぞれ9個の小さな壺がある。
「先生……麻屋先生。わたし、わたし」
 ケイコが泣いている。
 弱りきっている。
 このまま発見がおくれれば失血死していたろう。
「どんなことがあっても……。
 どんな理由があっても……。
 ケイコが犬飼の人たちのために生贄となって。
 人柱となって死ぬなんてことは許されない。




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