田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔闘学園/吸血鬼浜辺への少女 麻屋与志夫

2008-09-10 03:31:04 | Weblog
 武は腰に手をまわした。
 拳銃は所持していなかった。
 三津夫が特殊警棒をふるう。
 3段に伸びる。
 鬼の頭部に叩き込む。
「どうしたんですか。なにをそんなに、かっかっとしているの」
 鬼が軽く後ろにとんだ。
 警棒をさける。
「なにものなんだ」
「おや、おれたちに話しかけられるのですね」
 奇妙に優しい声が戻って来る。
「なにものなのだ」 
「だから、あなたがおもっているように血を常食としている鬼ですよ」
 解放された番場が三津夫の背後ににげこむ。
「びびっちゃって、ごめん」
「あいては人間じゃない。異界のものだ。鬼だ、恥にはならない」
 ざわっざわっ鬼が動いた。
 とりかれこまれた。
 囲炉裏の周囲にいた鬼どもが3人を取り囲む。
 一触即発。

「はい、カット」

 ちょび髭の監督の声。
 なに、なんなんだこれは。
 ライトがつく。
 撮影現場にまぎれこんでしまったらしい。
 郷土の歴史を記録映画にまとめているのだという。
 番場の認識が正しかった。わけがない。         
(そんな、バカな)
 武が三津夫の腕をひいている。
(だまされないぞ。なにが映画のセットだ。撮影だ。そんなことは、聞いていないゾ)
「失礼しました」
 武があやまっている。
 三津夫はそっとふりかえった。
 街がすっぽりと黒い霧におおわれている。
 巨大な人型の影がさっと黒いコートをひろげたようだ。
 そして。
 目前にいるのはこれまた黒いコートの男たち。
 吸血鬼だ。
 比喩ではない。
 人影は実在した。
 月光を背中からあびている。
 無限にひろがる黒いコートの影は。
 屋上にできた街をおおってしまった。
 吸血鬼の立っているのは、
 鹿沼の西北に広がる前日光高原のあたりだ。
 三津夫が叫ぼうとする。

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