動悸が高まる。
三津夫には幻聴が聞こえている。
おれの恐怖感が作り出している。
おれの脳が作り出している幻の声。
おれだけにしか聞きとることのできない声なのか。
「番場、あまり離れるな」
声をはりあげたが遅かった。
番場の悲鳴が聞こえた。
民家の中だ。
「男の血は吸えないな」
「女の、わかい女の子の血でないと口に会わん」
「男の血はまずいからな」
そんな幻聴の渦のなかで、番場が忽然ときえた。
「どうした、番場。おれたちをからかうきか」
からかっているわけではない。
そう感じている不安な声で武が叫んでいる。
声にならない。
声としては聞こえてこない。
恐怖、おそれおののく波動が番場のきえたあたりからながれでている。
ふるびた民家の中で、悲鳴がおきた。
番場だ。
武と三津夫がとびこむ。
囲炉裏がきってある。
巨大な鍋のなかで湯がにえたぎっている。
「おや、向こうから獲物がやってきたぞ」
「たべてもらいたいのかな」
囲炉裏をかこんで、ごくあたりまえの人型がうかびあがった。
こんどは武にも聞こえたらしい。
見える。
「なんだ、きさまらこんなところに住みついて」
ホームレスと思っている。
そう思っているほうがしあわせかもしれない。
「こいつらは……」
三津夫がなにかいおうとした。
おくの部屋で番場が「ここだ、武さん。たすけてくれ」と叫んでいる。
襖を開けた。
番場が鬼に首をしめられている。
応援ありがとう

三津夫には幻聴が聞こえている。
おれの恐怖感が作り出している。
おれの脳が作り出している幻の声。
おれだけにしか聞きとることのできない声なのか。
「番場、あまり離れるな」
声をはりあげたが遅かった。
番場の悲鳴が聞こえた。
民家の中だ。
「男の血は吸えないな」
「女の、わかい女の子の血でないと口に会わん」
「男の血はまずいからな」
そんな幻聴の渦のなかで、番場が忽然ときえた。
「どうした、番場。おれたちをからかうきか」
からかっているわけではない。
そう感じている不安な声で武が叫んでいる。
声にならない。
声としては聞こえてこない。
恐怖、おそれおののく波動が番場のきえたあたりからながれでている。
ふるびた民家の中で、悲鳴がおきた。
番場だ。
武と三津夫がとびこむ。
囲炉裏がきってある。
巨大な鍋のなかで湯がにえたぎっている。
「おや、向こうから獲物がやってきたぞ」
「たべてもらいたいのかな」
囲炉裏をかこんで、ごくあたりまえの人型がうかびあがった。
こんどは武にも聞こえたらしい。
見える。
「なんだ、きさまらこんなところに住みついて」
ホームレスと思っている。
そう思っているほうがしあわせかもしれない。
「こいつらは……」
三津夫がなにかいおうとした。
おくの部屋で番場が「ここだ、武さん。たすけてくれ」と叫んでいる。
襖を開けた。
番場が鬼に首をしめられている。
応援ありがとう
