日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~
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「社会企業家」という言葉が少しずつ広まりつつある。
これは政治、官僚、公的機関とは別にアイデアをもって、社会に変革をもたらそうとする人達のことを言う。
NHKの「未来への提言」(先日も再放送があったが、この番組は必見!)で、ビル・ドレイトン氏もその概念について説明している。
ビル・ドレイトン氏はこの「社会企業家」という考え方を立ち上げ、1980年にアショカという組織を作り現在に至る。
とともに、真にそれを実践している人々を選考してアショカ・フェローとして認定するとともにネットワーク化し、このムーブメントを拡大している。

発売ほやほや!(8/25第一版)のこの本は、この動きを深堀りしてわかりやすく語っている。
NHKの「未来への提言」よりもさらに突っ込んだ議論を展開しており、びりびり響く1冊と言わせて頂こう。
(アショカ、番組と直接の関係はないよう)
原題は、Getting to Maybe: How the World Is Changed
作者は、フランシス・ウェストリー、ブレンダ・ツィンマーマン , マイケル・クイン・パットン 、 エリック ヤング(序文)の4人。


第1章~3章はまず、具体的な「社会企業家」たちの活動とそのきっかけをわかりやすい例で紹介していく。
それはブラジルのHIV/AIDS感染予防だったり、アトランタの牧師が始めた活動が街を立て直した例、そして「社会企業家」の代表例といってさしつかえないグラミン銀行(ノーベル賞受賞)のケースなど。

社会を変えるのは一握りの偉大な人々のリーダーシップによると普通考えてしまうが、実はそうではない。
世の中の変化や新しい時代の流れは、意外なところから生まれる。
それは普通の人々の中から立ち上がり、ソーシャルイノベーションから始まる。
社会のシステムを構成するさまざまな要素間の矛盾を把握した中から、新たなアイデアに気づいた人々が「社会企業家」になり、社会を変革していくことがよく理解できる。

個人的に最もはまったのが第4章「協力な他者」。
この変革の行動の中で、最も大きい「敵」について語る。
それは組織の体制だったり、誤解だったり、いろいろだがどのように個々の社会起業家が対処したか。

例えば、カナダのメアリーゴードン(アショカ・フェロー)の創ったプログラム 「共感の根」Roots of Empathy。
他者の中に自分を認めるという能力(共感の根)を失ってしまうことで、個々の行動はしだいに硬直化したものになってしまう。
青春期の学生のこの共感力をどう再生するか。
実に有効性が納得できる目鱗のその方法論、そしてどう説得力を発揮していったかについては、ぜひこの本をご一読いただきたい。

5章では、気づいた人々のその新たなアイデアが動きだし、その変化がティッピングポイント(ある臨界点)に近づくと、社会的なフローになって動き出す事を、6章ではその行動をとった結果での失敗、7章では成功をまとめている。
(最後の8章はまとめ)


インターネットで情報が容易に飛び交う時代になって、個人が社会に影響を及ぼそうとした時の壁が少しずつ薄くなってきていることを否定する人はいないだろう。
こうした21世紀ならではの動きをリアルに感じられる良著としてお勧めしたい。

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