まずキックオフの第1章 「フェイスブックという国家」からして面白い。
イギリス キャメロン首相に面談したザッカーバーグ。
ザック「みんなはいいアイデアをもっているし、行動力もあって、それを生かしたいと思っているということです。
フェイスブックを使えば、多くの国民が自分のアイデアを人に知らせる簡単で安価な方法をもつことになる」
キャメロン「すばらしい」
そこで「フェイスブックという国家」という発想になる。
ところが!
次の展開は本のタイトルのようにその理想とは全く別の展開に。
ネットやソーシャル・ネットワークが加担し実際に発生した事件、犯罪を紹介していく。
作者は法律家のため、判例を多く紹介しており、抽象的になることなく非常にわかりやすい。
(基本的人権(第4章)、言論の自由(第6章)、死に追る者に対する議論(第7章)etc...)
特に未成年での事件が多いところが、あやういことの多い世代とテクノロジーがマッチングした感があり、納得性が高い。
サイバーいじめ、性的趣向を公開されてしまう者、意図的に若者を自殺に追い込むネット上の人物etc...
ちょうど日本でも、大学生が自殺教授メールを7回送った学生の件がマスコミで公開されており、実にタイムリー?!
この事件・犯罪紹介パートだけで200ページ近くを割いており、重みがある。
これらの問題を通しリアルにあぶり出されるのが、ソーシャル・ネットワーク情報が裁判で採用されつつあるプライバシー問題のせめぎ合い。
電話の盗聴には激しく制限が設けられているわけだが、どうもソーシャル・ネットワークにはそういうガードがないようなのだ...
後半は、このソーシャル・ネットワークのプライバシー問題に踏み込んでいく。
自分の検索した結果が元データとなり、その後接触したサイトで先回りされているらしいことは、薄々誰もが感じていること。
<クッキーやウェブ・ビーコンやディープ・バスケット・インスペクション他ユーザーのデータをこっそりと収集されている。
<それも警告やユーザーの同意無しで。
<あなたがウェブサイトを訪れるたびに、最低1個の追跡メカニズムがインストールされている
<(ディクショナリー・ドット・コムのように数百個インストールされるウェブサイトもある)
<そうしたメカニズムはあなたの行動を監視するだけでなく、あなたの個人情報を入手し、蓄積し、
<そのデータを利用したり販売したりする会社に送信しているのである
<フェイスブックは世界中のユーザーに顔認識ソフトを発表したあと、許可を得ずに黙って全ユーザーをその計画に登録した(中略)
<生体データを削除させるためには、探すのが非常に難しいウェブページ上のリンク先を通じてフェイスブックに連絡しなければならない。
この「フェイスブックのプライバシー方針悪化の歴史」を一発でわかりやすく表現しているのが264ページ。
カリフォルニア州サンフランシスコにある非営利の公共団体、電子フロンティア財団のウェブからの引用。
ここでは「フェイスブックのプライバシー方針」を、2005年から2014年 4月までを一気に読ませる!
ここでは最初と最後だけ記述しておこう。
2005年
あなたがフェイスブックに投稿したいかなる個人情報も、あなたのプライバシー設定で指定されたグループのユーザーに閲覧されることはありません。
2014年(最新)
ウェブサイトやアプリケーションに接続すると、あなたに関する「一般的な情報」がアクセスされることになります。
「一般的な情報」という用語には、あなたや友人の名前、写真、性別、ユーザーID、コネクション、および「全員に公開」のプライバシー設定で共有される情報が含まれます。
フェイスブックに投稿する一定のタイプの情報のデフォルト設定は「全員に公開」です。つながるためには相手が必要なので、あなたのプライバシー設定では、あなたの
プロフィール・ページからコネクションを閲覧できる人を制限することができません。
もしコネクションが公に閲覧可能であることが不安な場合は、そのコネクションを除去することを考慮する必要があります。
文章量だけをみても飛躍的に多くなっていること、表現がいかに微妙になっていること、がおわかりいだだけると思う。
ソーシャル・ネットワークはユーザーの個人情報をその収入源にしているので、加速度的にそうなっているのだ!
本の最後に、著者が「こうあるべき」だと考えて仮に作った「ソーシャル・ネットワーク憲法」が載っている。
それが発するメッセージは明確。
結論:刺激的な読書になったと満足した1冊になった。
お勧め!(自分を防衛するためにも...)
注:本のカバーは日本語版では「黄」だが、英語版を調べてみたら「黒」でこちらのデザインの方が迫力があったので写真はそちら。
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