タイトルは、著者の 下山 進 氏が慶應 藤沢で2年以上行っている講座のタイトルから。
このため、この本のために書き下ろされた内容ではない。
つまり、タイトルのテーマに正面からガッツリ挑んでいるわけではない。
とはいえ、読み応えはタップリ。
読売、日経、yahoo! JAPAN を中心とした、2000年代~ のメディアの攻防を描く。
その攻防とは「報道取材の価値・本質」を問い続けるもの。
ニュースを巧みにコモディティ化させたいネット側、そうはさせじと対抗しようとする新聞側。
訴訟や連合でネット側に立ち向かおうとする新聞側。
「イノベーターのジレンマ」との闘い、となる。
その分水嶺は2005年に訪れていた?
2005年:アレックス・ワイトマンが提唱したセマンティックスという概念を 村井 純が翻訳本で披露。
2008年:iPhone誕生(→画面の小さいガラケーの縮小)
そして独自の道をいく日経。
先行してデジタル化に成功した NYタイムズ に学ぶ。
それは 13章、17章 に詳しい。
2008年:クロヴィッツ日経来社。
実はNYタイムズ社内も「イノベーターのジレンマ」との苦闘があったことがわかる。
日経はその後も「イノベーターのジレンマ」と対峙し続け、
2015年:フィナンシャルタイムズ買収
一方、
2013年:ワシントンポストはべゾスに飲み込まれてしまう…
そして勝者だったはずの yahoo! JAPAN にさえ「イノベーターのジレンマ」が襲う!
スマホが降臨し世の中化したことで、もはや トップページ の時代でなくなっていた…
「ヤフトピ砲」がもはや砲でない時代、がきたのだ!
という具合で、2005年 ~ 現在に至るまでのメディアの攻防を克明に取材した一冊に仕上がっている。
結論:メディア関係人必読の、2005年 ~ 現在に至るまでのメディアの攻防史。