お腹には、十分におにぎりと即席味噌ラーメンが入っています。さて、登りますか。
大平山へ登るには幾つかのコースが考えられますが、無積雪期に登ったことがありません。大平山の頂上から伸びる尾根は、蛸の足のように四方八方に幾筋もあります。私には全く見当をつけることができません。40年前に登ったの時は積雪期でしかも春初めの堅雪(かたゆき)の時期でしたので、見える場所すべてが「登山道」でした。国土地理院の地図を見ても、インターネットのgooなどの地図でも、畑沢から大平山へ登る道は見つけることができませんでした。唯一、細野からの道が途中まで示されています。
それでも、大平山の西の斜面には、何年か前に樹木を伐採したときの道らしきものが見えます。山肌の樹木は皆伐され、さらに熊の爪で強く横に引き裂かれたような筋が何本もあります。何ともこれも痛々しい光景ですが、私は単純に、「少なくとも、道らしいところは歩けるはず。しかも頂上近くまであるではないか」と判断してしまいました。実は、そこにも誤算があったのですが、後で苦労することになりました。確かに、道らしいのは「道」でした。樹木を伐採する時、さらに伐採した樹木を運搬する時のための道のようでした。この辺りの樹木を見ると、大体が株立ちをしていましたので、昔から薪や炭焼き用に伐採されていたことが分かります。それでも、昔は橇(そり)を主体にした人力だけで運搬していましたので、山肌を傷つけることがありませんでした。
しかし、今は重機で比較的、簡単に「道」を作るようになってしまいました。その「道」を私が歩いているのですから、胸が痛みます。「道」はキャタピラーで通行する極めてラフな作り方です。傷口が疼いているようです。