詩人PIKKIのひとこと日記&詩

すっかりブログを放任中だった。
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削除された大スクープ&↓物語の後半部分をアップ

2010年03月22日 | 日記
◆検察に圧力をかけたのは、どうやら、小泉元首相やその一番の部下だった飯島元秘書官らしいという記事「亡国のイージスは大慌て!?飯○某さん自ら陰謀だった事を告白!?」はー『ここ』

ー「隠し部屋を査察して」エリック・マコーマックよりー
「第三章」
この地区には、六人の隠し部屋(地下牢)の住人と、十二人の管理人と、ひとりの査察官が住んでいる。行政当局がだれを隠し部屋の住人にしてだれを査察官にするのか、わたしのような人間にはほとんど理解できない。

 不思議な城壁と監視塔のある首都にはじめてやってきたとき、わたしは命じられるままに、住所と名前を警察に登録した。生まれてからずっと暮らしてきた、北の海のほとりの辺鄙な漁村の名前も登録した。折り目のついた書類から情報を書き写しながら、警官は疑わしそうにわたしをみつめた。

その夜遅く、黒い外套をまとったふたりの刑事が、わたしの泊まっていた安宿の扉を音もなく押し開けて、きわめて慎重にわたしを拘束した。窓を黒く塗りつぶしたリムジンで首都の監獄にもどる途中、ふたりは書類偽造の罪でわたしを告発した。そのような名前の村は存在しないというのである。わたしは笑った。とても小さな村だから、地図には載っていないかもしれないが、何世紀も前から存在してきたし、三百人の村人がいて、そのひとりひとりがわたしのことを知っていると答えた。

ふたりは反論しなかった。わたしは都市の監獄に一晩監禁された。煉瓦の壁で囲まれた小さな独房で、ここの隠し部屋とはまったくちがっていた。やかましい蝉の声に心を慰められながら、わたしは寝棚に横たわった。真夜中に、その蝉の声がぴたっとやんだので、ひどく不安になった。

翌朝、不安に疲れはてたわたしは、看守にひきだされて尋問室につれていかれた。そこには監獄の司令官がすわっていた。こぎれいな身なりの太った男で、引退した青衛兵の将校だった。その顔には、わたしに対する同情のかけらもなかった。わたしはくたびれた木の手すりの前に直立不動させられ、司令官が手短にこういった。
「われわれは北部にあるすべての機関を動員しておまえの陳述を調査した。おまえが主張するような村はどこにもないと彼らは断言した。われわれのファイルにはおまえの名前は載っていない。ひきつづき拘留して、数日後に法廷に出頭させることになるだろう」
司令官はふいに立ちあがって尋問室を出ていった。

 独房にもどると、わたしを助けるために指名された弁護人が待っていた。左頬に茶色のほくろのある小柄な男で、くたびれたような声をしていた。わたしは自分の村についての説明をもういちどくりかえした。出発した朝のことは鮮明に憶えていた。あのときでも、なんとなくこれが見納めのような気がしたものだ。わたしは丸石を敷きつめた通りの左右に並んだ花崗岩の建物について説明した。郵便局、ビジネスホテル、雑貨店、尖塔のある教会、引き潮のときに陽光にきらめく波止場、マッチ棒のように乾いて直立した杭。凪いだ海に飛びこんでいく鋏のゆな尾の海鳥たち。深みにはまって必死に泳いでいる犬のように、漁場へと船出していく数艘の漁船(そのうちの一艘はわたしの父が船長をつとめていた)。太古の化石のように、油にまみれた砂から顔をのぞかせている船の残骸。

 わたしにかわって証言してもらうために、わたしは百人の村人の名前をすらすらとあげてみせた。弁護人は納得したらしく、なんとかしましょうといってくれた。左頬のほくろが、まるで独立した生き物のようにひくひくと動いていた。

二日後、早朝に叩き起こされて、顔を洗ってひげを剃れと命じられ、ふたたび司令官の前につれていかれた。彼はこの前よりもこざっぱりとして、いかめしそうだった。弁護人の主張により、行政当局の役人がわたしの村があるという地域を訪れたと、司令官はいった(その弁護人は、わたしの視線を避けるようにしながら、部屋の隅に立っていた。ほくろがひくひくと痙攣していた)。村など影も形もなかったが、海岸の近くに、通りの痕跡や黒焦げになった柱や煉瓦やモルタルの破片といった、ついこのあいだまで村だったかもしれない廃墟があった。

 もっと恐ろしいことに、近くの牧草地で、ブルドーザーで盛りあげられたばかりの巨大な小山がみつかった。なにか想像を絶するものが埋められているのかもしれない。

 司令官はぐっと声をひそめた。
 海岸の松林のなかに、たったひとつ、無傷の建物が残っていた。警察の報告によれば、建物は無人だったが、刈りこまれたイボタノキの垣根と満開の花が咲き乱れる裏庭の、本来なら平坦なはずの芝生に、なにかを埋めたような痕跡がみつかった。近くにころがっていた柄の長いシャベルを使って、慎重に掘りすすめていくと、なにか固いものにぶつかった。はじめは大きな茶色の革鞄のようだったが、土をとりのぞいて穴からひっぱりあげてみると、なんともおぞましいことに、それは骨も内臓も抜きとられた若い娘のなめし皮だった。どこも傷んでおらず、手触りはパンクしたタイヤのチューブのようだった。中身は傷ひとつ残さずに取りのぞかれていた。
 顔のあたりの泥をこすり落としてみると、びっしりと刺青がほどこされているのがわかった。警察のひとりが胴体の部分を洗ってみると、頭からつまさきまで、細かな文字が整然と刺青されており、まるで湿った地下室に放置されていた古新聞のようだった。
 警察は娘の死体をくるくると巻とって、専門家に鑑定させるために、スーツケースにおさめて首都まで運んできた。
 わたしを嫌悪しているかのように、司令官の瞳がぎらついた。
「したがって、調査が完了するまで、おまえはこの監獄に無期限拘留される。以上だ」

一年前、きらめく夏の日に、わたしは武装した青衛兵のオートバイ部隊に護送された軍用ジープで、この入植地につれてこられた。到着すると、この地区の査察官に指名され、ただちに任務につくよう命じられた。わたしはこの査察官の建物に送りこまれ、前任者の最後の報告書と隠し部屋の住人のファイルをたわされた。

 暗い時代である。わたしはよく眠れない。埋葬されていた娘のことが脳裏から離れないのだ。あれからなにがわかったのか、どうして行政当局は教えてくれないのだろう? あの男は不平をもらしていたなどと、管理人たちに密告されるのを恐れて、わたしは体面をつくろうのに汲々としている。いかなる形であれ、彼らと親密になるのも避けている(ここではたやすいことだが)。どんな犠牲をはらっても、あのむせび泣きに加わりたいという衝動をぐっとこらえている。聞こえるかい? よく聞いてごらん。慣れないうちはわかりにくいかもしれないが、そうだ、あの声だ。聞こえるだろう。低い太鼓のような遠い潮騒にまじって、たえまなくフィヨルドを漂いつづけ、ついには北風のはてしないうめきに収斂していく、悲鳴のようにかすかな悲嘆の歌が。