9月14日(金)夜、三宅坂の社会文化会館で行われたフォーラム平和・人権・環境の「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!全国集会」に参加した(主催者発表800人)。
今年3月30日公表された高校歴史教科書の検定結果で、文部科学省は5社、7冊に対し「沖縄戦の実態について誤解する恐れのある表現」として修正を指示し「日本軍による強制・誘導等」の文言を削除・修正させた。
これが戦後レジームからの脱却を唱え「教育基本法」「国民投票法(改憲手続法)」「教育三法」を次々に強行採決し、自爆した安倍首相および歴史を偽造しようとする勢力の強い意向であったことは状況から明らかである。
これに対し、沖縄県では5月14日の豊見城市を皮切りに6月28日までに41の全市町村議会検定意見撤回の意見書が採択された。県議会では同一会期内に2回の採択まで行った。
この日16時30分、フォーラム平和・人権・環境は全国から集まった「高校歴史教科書検定での沖縄戦『集団自決』に関する記載内容への修正指示撤回を求める署名」52万7217筆を文部科学省に提出した。
今月29日宜野湾海浜公園での「教科書検定意見撤回を求める民民大会」を開催するが、95年の少女暴行に抗議する5万人規模の集会を上回る規模の大集会を予定している。
この日の集会発言をいくつか紹介する。
●腰手ぬぐいで登場した川内博史・衆議院議員(民主党)
本日文部科学省に52万筆の署名を提出したが、役人は安倍首相が辞任し「時代が変わった」ことをわかっていない。
2006年11月13日に開催された審議会の検定意見書は、じつは文科省の教科書調査官が審議会におろした調査意見書と同じものであったことが明らかになった。つまり沖縄問題の専門家もいない審議会でろくに審議もせず原案のまま答申したもの、つまり文科省の独り芝居だったわけだ。
自衛隊法には「我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」「国際平和のための取組への寄与」などの文言はあるが、「国民を守るため」とはどこにも書いていない。
今後も力を合わせて「日本軍の関与」の記述復活を求めたい。
●沖縄出身の照屋寛徳・社会民主党副党首
わたしは1945年7月サイパン島米軍捕虜収容所で生まれた。沖縄の同世代には墓の中で生まれた人が大勢いる。日本軍に追われてやむをえず墓の中で生まれたのだ。沖縄では、軍人より民間人の犠牲のほうがはるかに大きかった。
戦争が始まろうとするとき、まっさきに犠牲になるのは「真実」である。
伊吹文科大臣は今年4月11日の衆議院文部科学委員会で「教科書の内容は教科用図書検定審議会の答申に基づき行われるもので、総理も文部科学大臣も一言も容喙できない」と赤嶺委員の質問に答弁した。しかしこれはウソである。
教科用図書検定規則13条4項に「文部科学大臣は、検定を経た図書について、第1項及び第2項に規定する記載があると認めるときは、発行者に対し、その訂正の申請を勧告することができる。」とある。
注 1項は「誤った事実の記載又は客観的事情の変更に伴い明白に誤りとなった事実の記載ほか」2項は「学習を進める上に支障となる記載、更新を行うことが適切な事実の記載ほか」を指す。
9月13日の代表質問で、この件を問う予定だった。ところが安倍首相が突然政権を投げ出したため質問できなくなってしまった。
●福岡県教職員組合出身の神本美恵子・参議院議員(民主党)
今年5月か6月に文科省・布村審議官に「検定基準が変わったのか」と面談したときにも伊吹大臣の答弁と同じように「役所は教科書用検定調査審議会にすべて任せてある」と答えていた。
「狭義の強制性はない」として中学教科書の慰安婦の記述を削除させたときとまったく同じ図式である。
82年11月の近隣諸国条項と同じように、「沖縄条項」を教科用図書検定基準に盛り込むようにさせたい。
●松田寛・沖縄高教組委員長
本日、衆参両院、各会派を回り、5月から開始した署名52万7217筆を文部科学省に提出した。
今回の検定で「軍の関与」という主語がなくなったため、「米軍による集団自決」とか「住民同士の殺し合い」とも読める教科書になった。沖縄の実相を否定するものだ。文科省は修正理由のひとつとして大江・岩波裁判を上げているが、一審の判決はまだ出ておらず「未確定」な事象なので、検定基準に自ら逸脱するものである。
F15が朝飛び立つ現地沖縄は、辺野古の基地建設、高江のヘリパッド建設で緊迫している。沖縄タイムスや琉球新報など地元マスコミは連日教科書問題で特集を組んでいる。9月18日には労組連絡会を立ち上げ、9月29日の宜野湾海浜公園での「教科書検定意見撤回を求める県民大会」を、95年の少女暴行県民大会を上回る大会で開催する目標である。
●高嶋伸欣・琉球大学教授
検定結果が世論の力で覆されたことが過去2回ある。保革伯仲していた1980年大平内閣は巻き返しのため初の衆参同時選挙を実施し絶対多数を得た。その結果タカ派の圧力が強くなった。教科書検定は必ず政治的介入を招く。
1981年の現代社会の検定で四大公害訴訟の記述から「チッソ」という社名が削除された。いまさら社名を隠すのはおかしいという世論がまきおこり9月に文部省は撤回した。
1982年日本軍による沖縄の住民虐殺について「沖縄県史は信用できない」として削除させた。しかし沖縄県議会の全会一致決議などの抗議で翌年の検定で撤回し、記述が復活した。
今回も9月29日の宜野湾での県民大会を95年の少女暴行県民大会の5万人規模を上回る大会にし、撤回に持ち込みたい。9月7日には仲村守和・県教育長が県立学校長研修会で大会への学校長出席を呼びかけた。また沖縄市、豊見城市、読谷村などで議会を中心に実行委員会づくりが進んでいる。離島では八重山地区、宮古島などでの集会が決まっている。
この問題を沖縄だけの問題にせず、日本全国の人に連帯していっしょに闘ってほしい。
「社会科教育9月号」(明治図書出版)で北海道の中学教員が「自国民を守るはずの軍隊が自国民に自決を命令したという、皇軍の名誉を褒貶した虚構が、やっと今回の検定で教科書から消えることになった。(略)悲惨な状況に追い込んだのは、アメリカ軍による国際法違反のジェノサイド、すなわち沖縄県民への大量虐殺作戦にほかならない(略)戦時であるからこその、壮絶な「愛国心」の発露が見いだせるのである。この発露を教材として授業を組み立てるのだ。(略)現在の硬直したイデオロギーで断罪する愚を、社会科教師はおかしてはならない」と「集団自決こそ壮絶な愛国心の発露」とする愛国心教育を呼びかけている。
この教科書が来年配布されれば、こんな愛国心教育が行われることになりかねない。
●教科書検定について寺川徹・出版労連書記次長
沖縄戦の記述についてはここ20年ほど検定意見が付かなかった。2005年検定も同様である。しかし2006年検定で5社7点に意見が付いた。
新しい学説が発表されたわけでもない。強いて軍の関与を否定する学説を挙げると、林博史「沖縄戦と民衆」(大月書店2001年12月)に「ある島で・・・」と1行出てくる。しかしこの本全体では軍の関与がなければありえない、と書かれている。
文科省は記者レクで「大阪の大江・岩波裁判」を理由のひとつにあげた。しかしこの民事訴訟の争点になっている「隊長命令」と書いた教科書は1点もない。
文科省は、南京虐殺の人数など、両論ある場合には「両論を併記せよ」という意見を付けてきたが沖縄戦については軍の関与を認めない。また大きな反対運動が起こることが予測されるときには従来は検定意見を避けてきた。軍の関与を削除すれば沖縄で大きな運動が起こることは明らかだった。こうした点で今回は異常な検定である。
検定済み教科書は8月に各高校に見本本として配布されている。この段階で誤記や新事実が発見されれば訂正申請することになっている。大きな運動を盛り上げ訂正申請に持ち込みたい。リミットは11月である。
このあと伊佐冴子・沖縄県教組女性部長による「集会アピール」朗読と採択、山城博治・沖縄平和運動センター事務局長の「団結がんばろう」で集会を終えた。
また上記発言した議員以外に、福島みずほ、辻元清美、山内徳信、日森文尋、保坂展人の社民党議員が来賓として登場した。
今年3月30日公表された高校歴史教科書の検定結果で、文部科学省は5社、7冊に対し「沖縄戦の実態について誤解する恐れのある表現」として修正を指示し「日本軍による強制・誘導等」の文言を削除・修正させた。
これが戦後レジームからの脱却を唱え「教育基本法」「国民投票法(改憲手続法)」「教育三法」を次々に強行採決し、自爆した安倍首相および歴史を偽造しようとする勢力の強い意向であったことは状況から明らかである。
これに対し、沖縄県では5月14日の豊見城市を皮切りに6月28日までに41の全市町村議会検定意見撤回の意見書が採択された。県議会では同一会期内に2回の採択まで行った。
この日16時30分、フォーラム平和・人権・環境は全国から集まった「高校歴史教科書検定での沖縄戦『集団自決』に関する記載内容への修正指示撤回を求める署名」52万7217筆を文部科学省に提出した。
今月29日宜野湾海浜公園での「教科書検定意見撤回を求める民民大会」を開催するが、95年の少女暴行に抗議する5万人規模の集会を上回る規模の大集会を予定している。
この日の集会発言をいくつか紹介する。
●腰手ぬぐいで登場した川内博史・衆議院議員(民主党)
本日文部科学省に52万筆の署名を提出したが、役人は安倍首相が辞任し「時代が変わった」ことをわかっていない。
2006年11月13日に開催された審議会の検定意見書は、じつは文科省の教科書調査官が審議会におろした調査意見書と同じものであったことが明らかになった。つまり沖縄問題の専門家もいない審議会でろくに審議もせず原案のまま答申したもの、つまり文科省の独り芝居だったわけだ。
自衛隊法には「我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」「国際平和のための取組への寄与」などの文言はあるが、「国民を守るため」とはどこにも書いていない。
今後も力を合わせて「日本軍の関与」の記述復活を求めたい。
●沖縄出身の照屋寛徳・社会民主党副党首
わたしは1945年7月サイパン島米軍捕虜収容所で生まれた。沖縄の同世代には墓の中で生まれた人が大勢いる。日本軍に追われてやむをえず墓の中で生まれたのだ。沖縄では、軍人より民間人の犠牲のほうがはるかに大きかった。
戦争が始まろうとするとき、まっさきに犠牲になるのは「真実」である。
伊吹文科大臣は今年4月11日の衆議院文部科学委員会で「教科書の内容は教科用図書検定審議会の答申に基づき行われるもので、総理も文部科学大臣も一言も容喙できない」と赤嶺委員の質問に答弁した。しかしこれはウソである。
教科用図書検定規則13条4項に「文部科学大臣は、検定を経た図書について、第1項及び第2項に規定する記載があると認めるときは、発行者に対し、その訂正の申請を勧告することができる。」とある。
注 1項は「誤った事実の記載又は客観的事情の変更に伴い明白に誤りとなった事実の記載ほか」2項は「学習を進める上に支障となる記載、更新を行うことが適切な事実の記載ほか」を指す。
9月13日の代表質問で、この件を問う予定だった。ところが安倍首相が突然政権を投げ出したため質問できなくなってしまった。
●福岡県教職員組合出身の神本美恵子・参議院議員(民主党)
今年5月か6月に文科省・布村審議官に「検定基準が変わったのか」と面談したときにも伊吹大臣の答弁と同じように「役所は教科書用検定調査審議会にすべて任せてある」と答えていた。
「狭義の強制性はない」として中学教科書の慰安婦の記述を削除させたときとまったく同じ図式である。
82年11月の近隣諸国条項と同じように、「沖縄条項」を教科用図書検定基準に盛り込むようにさせたい。
●松田寛・沖縄高教組委員長
本日、衆参両院、各会派を回り、5月から開始した署名52万7217筆を文部科学省に提出した。
今回の検定で「軍の関与」という主語がなくなったため、「米軍による集団自決」とか「住民同士の殺し合い」とも読める教科書になった。沖縄の実相を否定するものだ。文科省は修正理由のひとつとして大江・岩波裁判を上げているが、一審の判決はまだ出ておらず「未確定」な事象なので、検定基準に自ら逸脱するものである。
F15が朝飛び立つ現地沖縄は、辺野古の基地建設、高江のヘリパッド建設で緊迫している。沖縄タイムスや琉球新報など地元マスコミは連日教科書問題で特集を組んでいる。9月18日には労組連絡会を立ち上げ、9月29日の宜野湾海浜公園での「教科書検定意見撤回を求める県民大会」を、95年の少女暴行県民大会を上回る大会で開催する目標である。
●高嶋伸欣・琉球大学教授
検定結果が世論の力で覆されたことが過去2回ある。保革伯仲していた1980年大平内閣は巻き返しのため初の衆参同時選挙を実施し絶対多数を得た。その結果タカ派の圧力が強くなった。教科書検定は必ず政治的介入を招く。
1981年の現代社会の検定で四大公害訴訟の記述から「チッソ」という社名が削除された。いまさら社名を隠すのはおかしいという世論がまきおこり9月に文部省は撤回した。
1982年日本軍による沖縄の住民虐殺について「沖縄県史は信用できない」として削除させた。しかし沖縄県議会の全会一致決議などの抗議で翌年の検定で撤回し、記述が復活した。
今回も9月29日の宜野湾での県民大会を95年の少女暴行県民大会の5万人規模を上回る大会にし、撤回に持ち込みたい。9月7日には仲村守和・県教育長が県立学校長研修会で大会への学校長出席を呼びかけた。また沖縄市、豊見城市、読谷村などで議会を中心に実行委員会づくりが進んでいる。離島では八重山地区、宮古島などでの集会が決まっている。
この問題を沖縄だけの問題にせず、日本全国の人に連帯していっしょに闘ってほしい。
「社会科教育9月号」(明治図書出版)で北海道の中学教員が「自国民を守るはずの軍隊が自国民に自決を命令したという、皇軍の名誉を褒貶した虚構が、やっと今回の検定で教科書から消えることになった。(略)悲惨な状況に追い込んだのは、アメリカ軍による国際法違反のジェノサイド、すなわち沖縄県民への大量虐殺作戦にほかならない(略)戦時であるからこその、壮絶な「愛国心」の発露が見いだせるのである。この発露を教材として授業を組み立てるのだ。(略)現在の硬直したイデオロギーで断罪する愚を、社会科教師はおかしてはならない」と「集団自決こそ壮絶な愛国心の発露」とする愛国心教育を呼びかけている。
この教科書が来年配布されれば、こんな愛国心教育が行われることになりかねない。
●教科書検定について寺川徹・出版労連書記次長
沖縄戦の記述についてはここ20年ほど検定意見が付かなかった。2005年検定も同様である。しかし2006年検定で5社7点に意見が付いた。
新しい学説が発表されたわけでもない。強いて軍の関与を否定する学説を挙げると、林博史「沖縄戦と民衆」(大月書店2001年12月)に「ある島で・・・」と1行出てくる。しかしこの本全体では軍の関与がなければありえない、と書かれている。
文科省は記者レクで「大阪の大江・岩波裁判」を理由のひとつにあげた。しかしこの民事訴訟の争点になっている「隊長命令」と書いた教科書は1点もない。
文科省は、南京虐殺の人数など、両論ある場合には「両論を併記せよ」という意見を付けてきたが沖縄戦については軍の関与を認めない。また大きな反対運動が起こることが予測されるときには従来は検定意見を避けてきた。軍の関与を削除すれば沖縄で大きな運動が起こることは明らかだった。こうした点で今回は異常な検定である。
検定済み教科書は8月に各高校に見本本として配布されている。この段階で誤記や新事実が発見されれば訂正申請することになっている。大きな運動を盛り上げ訂正申請に持ち込みたい。リミットは11月である。
このあと伊佐冴子・沖縄県教組女性部長による「集会アピール」朗読と採択、山城博治・沖縄平和運動センター事務局長の「団結がんばろう」で集会を終えた。
また上記発言した議員以外に、福島みずほ、辻元清美、山内徳信、日森文尋、保坂展人の社民党議員が来賓として登場した。