◎リンカーンの二度の臨死と業績
(2018-02-17)
臨死体験のほとんどは、ハズレ体験と思われるが,まれに精神変容の機会となるケースがある。
アメリカ大統領リンカーンは5歳の時に雨で増水した小川で溺れたが、年上の友達が岸に引っ張り上げて、一生懸命背中を叩いてくれたので、水を吐いてのたうちまわって意識を取り戻した。
リンカーンは、これ以後知識を渇望し、あらゆる本を手当たり次第に読むようになったという。
その5年後、リンカーンは荷馬車に乗っていて、馬に急げと命令した時に頭を蹴られ、一晩中生死の境をさまよった。後年自らその時のことについて振り返って、その時自分は馬に蹴られて死んでいたとコメントした。
(出所:臨死体験未来の記憶 精神世界への新たなる光 フィリス・アトウォーター/[著] 原書房P288-289)
リンカーンの最大の業績は奴隷解放宣言。それからわずか150年でアメリカには黒人大統領が誕生するまでになった。
移民の心理として一旗揚げたいというのは、移民国家アメリカでは抜きがたいものであり、そのポジティブな理想がアメリカン・ドリームである。
逆にそれを基盤にネガティブな制度も起こるが、それが黒人奴隷制度。
一旗揚げるというのは社会的に他に優越したいということであり、社会的弱者の権益を制限して、ある種族や階級階層が制度的にメリットを享受する例は枚挙に暇がない。インドのカースト制度、現代中国の都市と農村住民の厳しい戸籍移転制限や少数民族圧迫、日本の江戸時代の士農工商などなど。
こうした広汎な既得権益を逆転させるのは、一つの革命であるが、一人の風変わりな人間が独力で成し遂げるのは容易ではない。
それは、チベット密教の開祖パドマサンバヴァがチベット土着の宗教勢力を駆逐したり、空海が密教を天皇家に入れたり、役行者が、日本のスピリチュアル・シーンに修験道を開いたりした事績と似ている。
米国大統領といえども、こうした大事業を成し遂げるには、神仏の主導がないとできるものではないが、リンカーンは2度の臨死体験で、そのサポートを得ていたのだろうと思われる。
人は臨死体験によって大悟することは稀だが、大悟できる人間は、ある程度準備ができていないとそういうことは起きない。
その準備こそが日々の冥想である。
リンカーンの冥想習慣の有無はわからないが、二度の臨死体験をきっかけに彼が大善行である奴隷解放に進んだことは事実であり、そのモウメンタムを与えてくれたのが臨死体験であったろうことは想像できる。
臨死からの生還は困難であり、生還しても肉体的に問題をかかえることが多い。それらをひっくるめて生還し、無私なる大業を成し遂げたところに、リンカーンが一人の人間としても偉大とされる理由がある。