◎ジェイド・タブレット-外典-03-01
不思議なことに宗教界での大立者には、科挙不合格組、不登校組が多い。まず呂洞賓、王重陽、そして空海も私度僧なので科挙不合格組みたいなものだ。そして高校で不登校だったダンテス・ダイジ。
1.呂洞賓
呂洞賓は、唐代の人で山西省蒲坂県永楽鎮出身。大周天の大家。
呂洞賓が科挙の試験を受けに旅に出た時、超有名仙人である鍾離権に仙人にならないかと誘われた。呂洞賓はとんでもないと断った。二人は一緒にビジネス・ホテルに投宿したのだが、呂洞賓は夢を見た。
彼はやがて科挙に及第して、裕福な家庭の娘と結婚し、たくさんの子供をもうけた。子供も出世した。ついには一国の丞相となり栄達を極めた。しかしその後、罪を得て、家財没収、家族離散の憂き目に逢って、食べるものもない孤老となる。ここで高粱が煮えたという声で目を覚まし、これが一場の夢であったことに気がつく。
鍋の黄粱(こうりゃん)が煮え切らぬうちに、夢から覚めた呂洞賓に、鍾離権は「先の夢に、浮き沈みと栄辱のすべてが示されたであろう。50 年は一瞬であり、昇ったり下ったり、栄華を極めたり恥辱を受けたり、いろいろのことがあっても、世人の一生はまるで一つの夢に過ぎない」と語った。この話を聞いた呂洞賓は、鍾離権について救世の術を求め修行することを決心し、弟子入りする。
受験直前というのは、一種異常な心理状態ではあるが、機根があって準備ができている状態の人物には、パノラマ現象みたいな一生を圧縮した夢をみるほどに成熟しているからこそ、希代の勧誘があるのだろう。鍾離権は漢代の大将軍(将軍の中のトップ、軍のナンバーワン)であって、アストラル体での登場と見るべきではある。