8月に剪定したナスに秋茄子が実っています。
つやつやとした紫色のナスがとても美味しそうです。
ところで、秋茄子と言えば、「秋茄子(あきなすび)嫁に食わすな」という諺があります。
この意味についてはいろいろな説があるので、きょうは一般によく言われている三つの説を取り上げました。
「その1:嫁いびり説」
一般的に言われている説は「嫁いびり説」です。
「秋に旬を迎え、おいしくなる茄子を嫁なんかに食べさせるのはもったいない」という、姑の意地悪な気持ちを表しているとする説です。
嫁をいびる慣用句には、後世になって様々な派生形が生まれており、「秋鯖、嫁に食わすな」や「秋(かます)は嫁に食わすな」「五月蕨(ごがつわらび)は嫁に食わすな」などが知られています。
「その2:嫁いたわり説」
嫁をいびり説の反対で、嫁をいたわる為に食べさせないとする「嫁いたわり説」があります。
「秋茄子は嫁に食わすな」には、意地悪ではなく、嫁の体を気遣う意味合いがあるという説です。
茄子には体を冷やす働きがあるので、涼しくなってきた秋に茄子を食べると、出産を控えたお嫁さんの体が冷えてしまうので、やさしい姑さんがお嫁さんを心配しているのだというものです。
また、秋茄子は種が少ないので、子宝に恵まれないとう縁起の悪さを気にしているのだという解釈もあります。
「その3:嫁(夜目)はネズミ説」
更に、嫁は「夜目(よめ=ねずみ)」とする「ネズミ説」があります。
この説では元々、
「秋なすび 早酒(わささ)の粕(かす)に つきまぜて 棚におくとも 嫁に食わすな」(鎌倉時代後期の私撰和歌集『夫木和歌抄(ふぼくわかしょう)』
という和歌に基づいているという説です。
この和歌の中の「早酒」とは新酒を指し、「嫁」は「嫁が君(きみ)」の略で、ネズミをいう忌詞(いみことば)です。
そこで、この和歌を直訳すると、「新酒の酒粕に漬けてある秋茄子を、美味しくなるのを待って棚に置いておくのは良いが、ネズミ(夜目)にたべられないよう注意しなさい」となります。
つまり、「美味しくなった秋茄子はネズミに食わすな」ということです。
「この諺の由来」
「その3」の説が後世、「嫁(夜目)」を姑に対する嫁とした解釈に変わり、そして、「秋の茄子はおいしいものだから、憎い嫁には食べさせるな」という嫁と姑の争いが背景にあるような意味となってしまったというものです。
一方で、秋ナスの粕漬けを嫁に与えようとしない本当の理由は、粕漬けに含まれるアルコールが、妊婦の場合は体内から、授乳中には母乳から、子供の脳に影響を与えることを経験的に知っていたから、嫁をいたわる意味で「食わすな」となったのが「いたわり説」のようです。
鎌倉時代の医学レベルでは、アルコールが胎児や乳児の脳に影響を与えることが客観的に立証されてはいないことから、少なくとも経験則的に、酒は乳幼児の発育に悪影響が出ることを理解していたのではないかということです。
いずれにしても美味しい秋茄子は家族で仲良く食べて頂きたいものです。