山粧う
10月も下旬になって、山が粧ってきました。
紅葉前線が南下し始めたのです。
先日、栃木県の中禅寺湖周辺の山々で紅葉が始まったとのニュースが報じられていました。
一昨日のニュースだったので、土日の連休で観光客が訪れていたのでしょう。
日光のいろは坂には、早朝からたくさんの車が通行している様子が映し出されていました。
「山粧う(やまよそおう)」
紅葉によって山が美しく飾られたような秋の山を形容して「山粧う」と言い、俳句で秋の季語となっています。
俳句では春・夏・秋・冬の各季節に山を形容する季語がありますのでご紹介します。
「山を形容する季語」
・春は「山笑う」です。
木の芽や木の花に包まれる春の山を、朗らかに笑う人の姿になぞらえて『山笑う』といいます。
春の山の草木が一斉に若芽を吹いて、明るい感じになる様子を言っています。
・夏は「山滴る(やましたたる)」です。
夏になると、山の樹木は勢いを増して、青々と緑深く繁ります
草木の葉で覆われて緑が滴るように見える夏の山を形容する言葉です。
・秋は「山粧う」です。
紅葉で美しく飾ったような秋の山を形容する言葉です。
秋の山が紅葉に彩られた美しさを、美しい衣を身にまとっているようだと例えています。
参考までに、紅葉が始まるのは、気温8度以下が目安のようです。
・冬は「山眠る」です。
静まり返る冬の山を形容する言葉です。
落葉しつくした木々に覆われ、冬日のなかにふっくらとうずくまったような山の姿を、眠ると擬人化して言っています。
「出典」
上記、いずれもの出典も、中国北宋の画家、郭熙(かくき)の「郭熙画譜」からで、四季の山それぞれの特徴として次のように記されています。
・春山淡冶(たんや)にして笑うが如く、
・夏山蒼翠(なつやまそうすい)として滴るが如く、
・秋山明浄(めいじょう)にして粧ふが如く、
・冬山惨淡(さんたん)として眠るが如し、
なお、『淡冶(たんや)』とは、ほのかに艶があることです。
私は俳句を詠まないので、このような季語があったとは知りませんでした。
日本の四季の美しい山の移ろいを的確に表現した素晴らしい語ですね。