今日は文化庁の「国語に関する世論調査」からご紹介します。
昨年度の「国語に関する世論調査」で「姑息」の意味を尋ねる項目がありました。
調査結果では、多くの方が本来の意味を誤解していることが判明したのです。
「世論調査結果」
この調査で「姑息な手段」と例示して、本来の意味を尋ねていました。
質問:「姑息」の言葉は、どちらの意味だと思うか ?
この質問に対して、調査結果は下記のとおりでした。
令和3年度 平成22年度
(ア)「一時しのぎ」という意味・・・・・・・ 17.4% ・・・ 15.0 %
(イ)「ひきょうな」という意味・・・・・・・ 73.9 % ・・・70.9%
(ア)と(イ)の両方・・・・・・・・・・・・・5.9% ・・・ 2.9%
(ア),(イ)とは全く別の意味・・・・・・・・1.7 % ・・・ 2.1 %
無回答・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.1%
分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9.2%
(ア)が本来の意味です。
全ての年代で、辞書等で本来の意味とされてきたものとは異なる(イ)「ひきょうな」を選択した人の割合が、本来の意味とされてきた(ア)「一時しのぎ」を上回っていました。
中でも、40 代以下では(ア)を選択した人の割合と(イ)を選択した人との割合に 60 ポイント以上の差がありました。
「姑息の意味」
「姑息」を広辞苑で調べると、一時の間に合わせ。その場逃れ。(「姑」はしばらくの意)。
と説明しています。
辞書が示すように、姑息とは、《「姑」はしばらく、「息」は休むの意から》一時の間に合わせにすること。また、そのさま。一時のがれ。その場しのぎ。という意味になります。
「姑息の由来」
「姑息」は「礼記(らいき)」の故事にある、孔子の門人,曽子の言葉に由来します。
病床にあった曽子は,自分の寝台に,身分と合わない上等なスノコを敷いていました。
お付きの童子にそのことを指摘された曽子は,息子の曽元にスノコを取り替えるよう命じます。
曽元は,父の病状の重いことを考慮し,明朝,具合が良くなったらにしましょうと答えます。
それに対し,曽子は,お前の愛は童子に及ばないと,次のように言いました。
「君子の人を愛するや徳を以ってす。細人の人を愛するや姑息を以ってす。」
(君子たる者は大義を損なわないように人を愛するが,度量の狭い者はその場をしのぐだけのやり方で人を愛するのだ。)
その場にいた者たちは,曽子を抱え上げてスノコを取り替えますが,彼は間もなく亡くなってしまいました。
曽子は,一時しのぎの配慮に従って生き長らえるよりは,正しいことをして死ぬ方がよいと考えたのだ、という事です。
この故事が「姑息」の由来と言われています。
皆さまは姑息の本来の意味をご存知だったと思いますが、7割以上の人が意味を間違えていたという結果でした。
姑息とは、一時の間に合わせ。その場逃れ。という意味です。
間違わないように気を付けたいですね。